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Movie Review 7月29日(SUN.)

処刑人

「新世紀バイオレンスの最高傑作!!」…ということで。アイルランド出身・精肉工場で働く兄弟がひょんなことから正義に目覚め、ボストンに巣くう悪人どもをバンバン殺しまくる、というお話し。

 いわば、ブロンソン『狼よさらば』、イーストウッド『ダーティ・ハリー』などの、アメリカ伝統私刑モノの系譜に連なる作品です。『ダーティ・ハリー』の場合は、犯人の非道ぶりを徹底的に描き出し、そんなヤツが無罪になってしまう法に対しハリー・キャラハンが「犯人にも人権があるやと? 被害者の人権はどないなるっちゅうねん!!」と怒り心頭に発し、刑事という身分を捨てても犯人に制裁を加える姿に呆然と感動しないヤツは、とっとと快楽殺人者の餌食になってみてください、という感じなのですが、この『処刑人』の兄弟の場合は、悪人が本当に殺されてしかるべきか否か充分検証せず、それどころか伝聞情報だけから判断して処刑を行っていくのは如何なものか? なんか貧乏人のうっぷん晴らしで人殺しに精を出しているかのようでして、それではチョトまずいと思ったかどうなのか、宗教的信念に基づいている風に描かれていますが、それならそれは狂信者ではないですか。いいのですかそれで?

 エンドタイトルで、処刑人兄弟をあなたは支持しますか? なんちゅう街頭インタビューが流されますが、支持するヤツはボンクラっぽくていけません。支持しないヤツも馬鹿っぽいんですが。

 そんな話はどうでもよくて、処刑人兄弟を演じる兄弟が、バチグンにクール! …と言いたいところですが、カッコつけ過ぎの若気の至り感満点にて脱力気味です。いや、そんなこともどうでもよく、兄弟を追いかける FBI 捜査官、ウィレム・デフォーがモノ凄いことになっております。デフォーと言えば『ストリート・オブ・ファイアー』でカッコ付けてる割には弱かった悪役を演じ、次いで『プラトーン』では天使のような善玉を演じて人気沸騰、しかしその後、頭の弱い作品にばかり出演し続け、どうしたことかと思っていたら、ついにブチ切れました。なんせ監督は新人ですから、キャリアのあるデフォーに歯止めがかけられなかったのは致し方ないとしても、狂っております。アホです。『GONIN 2』の大竹しのぶ、『いつかギラギラする日』の荻野目慶子を彷彿とさせます。そういえば顔つきもクラウス・キンスキーに似てるしナー、「怪優」が誕生した瞬間を目の当たりにして私は呆然と感動したのでした。

 演出は、スタイリッシュを気取るモノの、イマイチオリジナリティに乏しく、今後がんばっていただきたい「腐ったハリウッドに牙を剥くサウス・ボストンの狂犬!」ことトロイ・ダフィ。デフォーのブチ切れ演技を見逃すな! …ってみなみ会館での上映は終わっちゃいましたが、オススメ。

BABA Original: 2001-Jul-29;

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