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Movie Review 12月25日(WED.)

シャドウ・オブ・
 バンパイア

 F・W ムルナウ監督による怪奇映画の古典『吸血鬼ノスフェラトゥ』 (1921 年ドイツ作品。私は未見) 。 鬼気迫る吸血鬼を演じたマックス・シュレックは、モノホンの吸血鬼だった! ぎゃー。

 奇想天外な発想で『ノスフェラトゥ』製作の舞台裏を虚実取り混ぜ描く、喜劇なんだかホラーなんだかよくわからない奇妙な味わいの作品です。

 本物の吸血鬼をキャスティングし、真実の映像を撮らんとすムルナウ監督(ジョン・マルコヴィッチ)のキチガイぶりは『セシル・B  ザ・シネマウォーズ』 1920 年代ドイツ版ですな。犠牲者が出てもお構いなし、淡々と冷酷にカメラを回し続けます。昔も今も、モラルは映画製作にとって邪魔者以外の何物でもなし。

 なぜかムルナウを始めスタッフ一同白衣姿なのは史実に基づいているそうです。ムルナウにとって映画とは「芸術」ではなく「科学(Science)」だったのですね。ここでのムルナウの態度は「芸術至上主義」とはちょっと違う。映画は 1920 年代には芸術未満の存在、映画製作とは最先端技術の実験場だったのです。そういう当時の撮影現場の雰囲気も見どころです。

 ムルナウは「映像に取られた物だけが存在する」とつぶやきながら撮影を続けます。吸血鬼が血を吸う映像は本当の映像ですが、映画として観られるとニセモノになってしまう。それでいて『ノスフェラトゥ』は 1920 年代のドイツを象徴する映像となっとるわけで、奇妙なねじれが生じております。この『シャドウ・オブ・バンパイア』は、虚構と現実、歴史と映像の関係性を考察する格好の材料を提供するに違いありません。適当。

 そんなことはどうでもいいのです。ノスフェラトゥ=マックス・シュレックを演じるウィレム・デフォー面白過ぎ! 『処刑人』でついに怪優路線へと颯爽と乗り出したわけですが、ここでも最高です。真剣なのかふざけているのか全然わかりません。「もう我慢できん!」とついつい血を吸わずにおれない風情がバチグンのおかしさです。

 奇しくもヴェルナー・ヘルツォークによるリメイク『ノスフェラトゥ』でクラウス・キンスキーが演じた吸血鬼をデフォーが演じているわけで、怪優キンスキーの衣鉢を継ぐのはやはりデフォーか? と、私は呆然とその運命のいたずらに畏怖したのでした。…って何を書いてるのかよくわかりませんね。

 淡々とクールな語り口にて、爆笑巨編にも成り得た題材が面白いんだか面白くないんだか、マジボケなのか天然なのかよくわかんなくなってますが、デフォー入魂の珍プレーを見逃すな! ってことで京都朝日シネマでの上映はとっくに終わってしまいましたがオススメです。ヴィデオででも見てくださいな。

BABA Original: 2001-Dec-25;

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