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Movie Review 2000・9月29日(THU.)

パトリオット

 ドイツ出身のローランド・エメリッヒ監督は、近年、いっかんしてムキムキの「政治映画」でヒットをとばしている。

 たとえば『ユニヴァーサル・ソルジャー』は、危険すぎる任務につかせるため、よみがえらされた海兵隊員が、やがて「人間性」を取り戻していく設定だ。これは社会から疎外されたアメリカ海兵隊退役兵を応援する映画なのだ。

『インデペンデンス・デイ』は、ビル・プルマン扮するアメリカ大統領が大活躍する。ベトナム戦争の戦闘機パイロットだった共和党の次期大統領候補ジョージ・W・ブッシュをおしあげ、従軍経験がないクリントンをおとしめるあからさまな政治宣伝映画である。

 ニューヨークで大暴れする『GODZILLA』が象徴するのは、「日本企業」なのだ。アメリカでビルや映画会社を買収した身の程知らずの日本企業を、政府、軍、民間が一致協力して撃退する物語だ。

 そんなエメリッヒ監督の新作は、そのものずばり「パトリオット」=「愛国者」! これが期待せずにおられようか?

 たとえば副島隆彦著『アメリカの大嘘』に、「全米ライフル協会の真意」という話が書かれている。チャールトン・ヘストンも参加している全米ライフル協会は、ライフル銃を家庭に備え持つ権利を主張し続けているのだが、これはアメリカ憲法が、

「もし政府が圧政を行うときには、国民は、銃を持ってこれとたたかう権利がある」

 と、人民の「革命権」を規定していることに根拠を持つ。この『パトリオット』は、いざというときに民兵を組織して、圧政者とたたかう農民の原型を描き、全米ライフル協会の宣伝映画になっている。

 アメリカ独立戦争が舞台である。サウス・カロライナの農民、メル・ギブソンは、州議会でただひとり反戦を主張、しかし、息子がイギリス軍に殺されてブチ切れ、ならず者の民兵を組織してゲリラ部隊を組織、独立戦争を勝利へとみちびいていく。

 主人公は過去の戦闘で残虐行為をおこなったことを悔いているが、いざ戦闘になると悪魔的な残虐性をムキ出しにする。『許されざる者』そのマンマやんけ! 『許されざる者』は共和党支持者として知られるクリント・イーストウッドがクリントン大統領を徹底的に批判した映画だそうだ。「共和党」映画の系譜が見えてくる。

 固いことは抜きにしても、戦闘シーンがいい。森をかけぬけるシーンは『羅生門』、もうもうと黒煙をあげて燃える農家や、一直線に隊列を成して対峙する軍隊は、『乱』。エメリッヒは黒澤フリークと見た。主人公の息子が、イギリス将校の宿敵とスローモーションで対決するアクションはカッコいいぞ! 他にも、ドカーンと大砲の弾が飛んでくるカットとか、のけぞることウケアイだ。

 さすがに傷だらけのメル・ギブソンがアメリカ国旗を持って突撃するシーンはシラケることはなはだしいが、エメリッヒ監督作では最高の出来。しかも劇場はガラガラなのでオススメだ!

BABA Original: 2000-Sep-29;

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