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Movie Review 2000・11月30日(WED.)

ことの終わり

『クライング・ゲーム』などのニール・ジョーダンの新作。『第三の男』の原作で知られる…って、ソレしか知りませんが、グレアム・グリーンの小説『情事の終わり』の再映画化。

 物語はグレアム・グリーンの投影らしきレイフ・ファインズが「これは、憎悪の日記である…」とタイプを打つシーンから始まる。果たして誰に対する憎悪でしょうか? って謎で物語がひっぱられていく。舞台は第二次大戦前後のイギリス。レイフ・ファインズは自作の小説が映画化されたりしてまあまあ売れっ子の作家。隣家に住んでる高級官僚の妻、ジュリアン・ムーアといい仲になる。逢瀬を重ね、大戦が激化。とある出来事の後、J ・ムーアがつれなくなって、大戦終了後再会して、おや、J ・ムーアは他の誰かと「浮気」って感じ? …とクラシックな不倫物語。

 ではあるが、さすがはニール・ジョーダン、てかなんというか、日記執筆中の R ・ファインズの独白を軸に、現在・近過去・過去の時制を行き来し、かつ作家、不倫相手の人妻、さらに浮気調査の探偵、ってな具合に視点を変えて物語られ、ややこしい話なのだが、ストーリーを見失わされることもなく、語り口が気色よろしかった。

 人妻は、とある宗教的体験によって宗教にめざめる。人妻と作家の仲が一見冷えたきっかけでもあるのだが、「無神論者がいかに宗教にのめりこむか」との考察にもなっており興味深い。ニール・ジョーダンは『俺達は天使じゃない』でも犯罪者が遭遇する宗教的体験を描いており、根は信心深いのかもしれない。今回も、「無神論者にも宗教が必要なときがある」と主張しているようだ。

『クライング・ゲーム』、『モナ・リザ』のように「あー、おもろかった!」ってほどに話にのめり込ませるものではないが、衣装・美術など大戦前後のイギリス風俗の再現ぶりがいいし、ブライトンもちょっと出てきたりするのもいい感じ。不倫調査をする探偵に扮しているのは『バックビート』『僕たちの時間』でジョン・レノンをソックリに演じ、その後『大地と自由』でもええとこ見せたイアン・ハートが自分の息子を助手として使うちょっと侘びしい探偵を好演。音楽は、不倫映画の音楽なら世界一のマイケル・ナイマン。相変わらずのナイマン節。飽きませんか?

 配給会社からの妙なお願いとして、

「クライング・ゲーム」と同様、本作にも新たなる謎〈“第三の男”とは誰なのか?〉が用意されております。ご高覧後もこれからご覧になる方々のためにその秘密をご共有頂けますようお願い申し上げます。

 …って何をおっしゃっているのかよくわからないけれど、こういうのに惑わされて妙な期待を抱かなければオススメ。朝日シネマで上映中。

BABA Original: 2000-Nov-30;

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