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Movie Review 2000・11月21日(TUE.)

リプレイスメント

 …とは、「代理・取替品・交代要員」の意味なり。アメリカのプロ・フットボール・チーム、「ワシントン・センチティネルズ」はあと 3 勝あげればプレイオフ出場、というのに選手たちは年俸アップを求めてストライキに突入、こりゃ困ったってんで代わりの選手が集められる。ここでは「リプレイスメント」とは「スト破り」のコトなのであった。

 全権委任された監督、ジーン・ハックマンが集めたメンバーはどうしようもないボンクラ揃い。すぐに拳銃をぶっ放す元ギャングの黒人ブラザーズ、フットボールは素人でキック力のみ買われた元サッカー選手、元相撲レスラー、などなど。彼らを統率するクォーターバックがキアヌ・リーブス。キアヌは学生時代は名クォーターバックとして名を馳せたが、ビッグ・ゲームで大敗を喫し「プレッシャーに弱いヤツ」のレッテルを貼られちゃって落ちぶれて船上生活、船底のフジツボ取りなんちゅう仕事をしていたところにお呼びがかかる。後はお約束通りの展開、抱腹絶倒プレーで勝利をあげたり、スト中の正選手と対立したり、チアリーダーのお姉ちゃんとラブロマったり。

 雰囲気は、フットボール版『メジャー・リーグ』というか『がんばれベアーズ』で、負け犬どもが人生最大のチャンスをモノにしようと頑張るわけだ。定石通りの展開っちゃあミもフタもないのだけど、集められたメンバーの設定がなかなか笑かす。日本人の元相撲取りってのが、名前は「フミコ」(なんでや?)、周りからは「脂肪の塊」と呼ばれたりして大方の日本人はイヤーな気分になること請け合いだ。また、元サッカー選手は『ノッティング・ヒルの恋人』のスパイクことリス・エヴァンスが演じており、達者なところを見せる。

 アホアホかつ新鮮味なし、なんだけど実は感動してしまった。監督は、なつかしや『プリティ・イン・ピンク』など青春映画を得意としたハワード・ドイッチで、昔とった杵柄、ルーザー気分の描写がうまい。代理選手たちは、正選手がストを解除すればアッという間にお払い箱になるのだけれど、ただ一瞬の栄光のために全力を尽くす。たとえ栄光をつかんだとしても、「スト破り」という汚名をかぶらざるを得ない。この栄光は、他者の評価が目的なのではなく、純粋に選手本人のためだけのものなのだ。ただ一瞬のルーザー脱却をめざすボンクラ軍団のド根性ぶりが泣ける!

 また、代理選手たちは正選手と衝突して監獄にブチこまれるのだが、そこで初めて落ちこぼれ同士の友情・連帯・チームワークが芽生えるシーンとか、妙に青春映画っぽくていいぞ。キアヌも、何事に対しても臆病になってチムポも立たないナイーブなクォーターバックを好演。

「スト破り」で集められた選手は、ネイティブ・アメリカン混血キアヌをはじめ、黒人、東洋人、ろうあ者などアメリカのマイノリティたちだ。ストをする正選手・白人は悪役として描かれる。ストライキというのは労働者の権利なのだが、その行使の仕方を誤るとマイノリティに職を奪われちゃうよ、ストもほどほどに、って資本家のメッセージかしらん。

 イオンシネマ久御山で上映中。ボクが見に行ったとき観客は 4 人。キアヌ好きは必見。オススメ。

BABA Original: 2000-Nov-21;

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