京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > Reviews > 00 > 0223
Movie Review 2000・2月23日(WED.)

ストーリー・オブ・ラブ

 最近読んだ『生きのびるためのデザイン』って本の中に、

「自動車を三、四年に一度買い換えるという現象は、あらゆるものを使い捨ての品物とみるという考え、あらゆる消費財を、またたいていの人間的価値までも使い捨てのできるものとみる考えを生み出すようになってくる」(※)

 …と、近年、離婚率が高くなっているのは、夫婦関係ですら「使い捨て」のクリネックスみたいなものと捉えられているからだよん、という論考があり、はあ、なるほど、近頃日本も離婚って増えてるよね、家族同士の殺し合いが多いってのも、その辺がちょっとは関係しているのかな? そういや、携帯電話ってのもほとんど使い捨て感覚? みたいな。

 ここ 20 年くらい、アメリカ映画が取り上げてる家庭ってのは、『クレーマー・クレーマー』みたく、たいてい崩壊していて、仲良し夫婦が出てくるのはマレなんだけど、出てきても腹立つだけかも知れないけれど、この映画は離婚寸前の夫婦の心情を描き、現代の「夫婦関係を使い捨てと捉える風潮」に異議を唱える。ロブ・ライナー監督は以前、『恋人たちの予感』(1989 年)で、ほいほいパートナーを換えてれば、そのうちソウルメイトが現れるでしょう、って話を描いていたので、約 10 年で反省したと見える。

 さて。旦那を演じるのはブルース・ウィリス。ボクはある瞬間から―― B ・ウィリスが自分自身を演じるようになったときから―― B ・ウィリスが出ていればなんでも楽しく見ることができるようになった(『アルマゲドン』ですら)

 嫁さんを演じるのはミシェル・ファイファー。これまたキャット・ウーマン以降、彼女が出ていればどんな映画でもオッケー。ミッシェルは、近作『ディープ・エンド・オブ・オーシャン』、『素晴らしき日』など、どうも「家族の再生」をテーマにした映画を選んで出演しているように見受けられ、今回もその路線。好き者にはこたえられませんな。

『スタンド・バイ・ミー』『ミザリー』『プリンセス・ブライド・ストーリー』など過去には傑作を連発していたけれども、センスがどうにも痛くなって来た感があるロブ・ライナー(自身もブルースの友人役で出演)が、全編夫婦が罵りあったりイチャイチャしたり、を酸っぱいギャグを連発しながら描き、おまけに泣かせどころにエリック・クラプトンのバラードが流れる、ってことで、ボクがブルースとミッシェル好きだから許せるが、そうでなかったらタダでは置かんぞ、って感じなのだが、夫婦の回想をスパスパスパッ、ファック・ミー、ファック・ユー、ドドドと見せるあたりから、もう、ダメ、ラストは、だばだば涙を流していたのでした。ブルース最高! 長髪(若い頃、という設定)、カッコ良過ぎ! ミッシェル最高! 泣かせてくれるぜ! ということで、少々のヌルさと痛さをガマンすれば感動の嵐。あんまり話題になってないと思うけど、オススメ。

※引用:『生きのびるためのデザイン』ヴィクター・パパネック著、阿部公正訳、晶文社

BABA Original: 2000-Feb-23;

レビュー目次

Amazon.co.jp アソシエイト