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Movie Review 2000・12月12日(TUE.)

バーティカル・リミット

 K2 登山中の事故でクレバスに閉じこめられた 3 人を、6 人が救いに行く。それだけの話。出演は『バットマン & ロビン』でモッコリさせてたクリス・オドネル、『エンド・オブ・デイズ』で悪魔に手込めにされかけたロビン・タニーと、ろくでもない出演者だったりするし、ビル・パクストン、スコット・グレンは通好みではあるが地味。ハッキリいって売りが弱いと思うが、これが良い出来。

 なんといっても山岳での撮影が素晴らしいのだ。生命の危険を冒すことなく K2 の偉容を拝めるのは気持ちの良いもの。で、山の上がどんなものか? ベースキャンプで登山家達はどのような生活をしているのか? などが垣間見れるのもおもしろいぞ。

 さらに、「垂直極限」=人間が活動できる高度限界を超えたところでの、登山家たちの倫理観が気色良かったりする。例えば一本のザイルに 3 人が宙づりになってしまい、2 人ならなんとか持ちこたえられるという場合、迷わず 3 人目を切り落とすのだ、とか。映画っちゅうと、何かと「愛」だの「友情」だの「ヒューマニズム」だのが持ち出されるが、そういうものが通用しない、スーパークールな世界だ。

 3 人を救助するために 6 人が生命の危険を冒すのは、お山の倫理からいうと間違いなのだ、ということもキッチリ描かれているし、それでもなぜ、彼らが救助に向かうかという動機も「愛」だの「友情」だの「ヒューマニズム」とは無縁なのがいいぞ。兄貴クリス・オドネルが妹ロビン・タニーを救おうとするのは、肉親の愛情もあるけれども、トラウマ克服のためだったりするのもなかなか良くできた脚本だと思う。愛・友情・ヒューマニズムはどうでもよくて、重要なのは、トラウマ克服、金、復讐、男気…という素敵な世界。

 遭難者が閉じこめられているクレバスは雪崩で埋まっており、それをニトロで爆破しちゃうぞ! ってことで、ただでさえ危険な山登りにニトロを背負って登っちゃうのはヤリ過ぎ! と思わぬでもないが、つまり作者は名作『恐怖の報酬』に敬意を払っているのだった。そう、この映画のクールネスは『恐怖の報酬』と似ているぞ。アメリカ映画なのでラストは甘いんですけど。

 山岳ロケは素晴らしいが、SFX を使ってのスリル・シーンは光線の具合が CG 臭くてちょっとどうかとは思う。ヘリコプターから岩棚に飛び降りるシーンとか、ドンくさすぎて爆笑ものだし。とはいえ、眼をみはるシーンも多々あり。気色いいです。

 ハラハラドキドキの緩急もしっかりついているし、近年の山岳アクション映画としては出色の出来。…って『クリフハンガー』としか比べてないんですけど。強力にオススメ。

BABA Original: 2000-Dec-12;

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