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 Diary 2004・7月29日(THU.)

千夜一夜物語

 DVD で『千夜一夜物語(1969 年・虫プロ)を観る。これは手塚治虫総指揮のもと、日本ヘラルドの 10 周年を記念して、虫プロが総力を結集して世に問ふた「世界初の大人のための長編娯楽アニメーション」である。単なるアニメーションとは違ふぞ、といふ心意気を示すため、「アニメラマ」と名乗つてゐた。内容は、世界四大奇書のひとつと言はれる『千夜一夜物語』の中でシェラザードによつて語られる数々の話を元に、自由に(?)創り上げたもの。あまり本家の『千夜一夜物語』とは関係なく、いささか冗長である。当時は斬新であつたであらう数々の映像表現も、今の目から観ると、懐かしいノスタルジアに包まれてゐる。が、それでも当時の熱気は不思議と刻印されてゐて、なかなかに楽しむことができた。特に、音楽である。全体の音楽を手掛けた富田勲、ではなく、主題歌等を手掛けたヘルプフル・ソウルが、個人的には素晴らしかつたのだ。

 ヘルプフル・ソウルは、神戸出身のブルースロックグループである。アルバムとしては『ソウルの追求』といふ日本ブルースロック史に残る名盤を一枚残してゐるのみだが、シングル盤として発売されたこの『千夜一夜物語』の主題歌、『アルディンのテーマ』が、以前から GS ファンの間では人気が高く、私も GS 熱中時代に愛聴したものである。歌つてゐるのはベースのチェーで、後にチャーリー・コーセーとして『ルパン三世』の第一シリーズの主題歌を歌ふことになるので、その声に聞き覚えのある人も多いと思ふ。

 とにかく、この一曲のおかげで、この映画はグンと引き締まつたと思ふ。ササン朝ペルシア時代のバクダッドの香り、ではなく、60 年代東京の香りが強烈にするやうになつたのだ。リチャード・バートン版の『千夜一夜物語』、といふのはつまり、原作の持つ猥雑性・エロス・毒をきちんと盛り込んだ『千夜一夜物語』が日本に紹介されたのが 60 年代後半。当時の 60 年代革命の渦中にある騒然とした世情の中で、バートン版『千夜一夜物語』は読まれ、持てはやされた訳だから、その空気を映画に畳み込むことは、大切なことなのだ。故に、『アルディンのテーマ』が果たした役割は大きい、と私は思ふ訳です。

 その後、チカーノラッパーたちのプロモーションビデオを観る。ウットリするくらゐカッコイイ。やはり、今はこれですよ、コレ。

小川顕太郎 Original: 2004-Jul-31;
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