京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

HOME > diary > 01 > 0408
 Diary 2001・4月8日(SUN.)

あの頃
ペニー・レインと

 浜大津アーカスシネマにキャメロン・クロウ監督『あの頃ペニー・レインと』を観に行く。浜大津に行ったのは初めてだったのだけれど、京津線に乗って終点の浜大津駅で降りると、こりゃ田舎に来てしまった、と感慨を覚えた。巨大な噴水のようなものを遥か横目に睨みながら、アーカスというアミューズメントビルまで歩いて行き、エレベータで 4 階へ。ボーリング場の隣に設えられた映画館には、小さいながらも 5 個のスクリーンがあり、それぞれ違う映画を上映していた。観客は私を入れて 6 人。寒々しい雰囲気の中で、上映は始まった。

 15 歳でローリングストーン誌のライターになったキャメロン・クロウが、その自らの体験に基づいて、1973 年を舞台に架空のロックバンドとファンと音楽ライターについて撮った映画。なかなかよく出来ている。音楽のセンスも悪くないし、ぺニー・レイン役のケイト・ハドソンは凄くかわいい。印象に残るシーンもある。これは万人が楽しめる映画ではないだろうか。なんでこんな片田舎で、細々とやっているのか? まあ、大阪ではやっているようだが。

 実は「万人が楽しめる映画」と「万人に受ける映画」は違う。だから別にこの映画が売れていなくても、ちっとも不思議ではない。ただ私がこの映画を「万人が楽しめる映画」だと感じたという事は、この映画は非常によく出来ているけれども、どこか生温い、と感じたという事だ。では、どこが生温く感じたのだろう?

 いろいろと考えてみたのだけれど、ちょっと今は答えが出ない。それでも思い付いた事を 2 、3 述べてみる。

 まずこの映画の舞台となる 1973 年というのは、私に言わせれば、ロックがどんどんダメになっていく時期だということ。その事は映画の中でもレスター・バングスの言葉として少し述べられているけれども、映画はそのことを描いていない。もちろん、キャメロン・クロウはレスター・バングスと交代するような形で、まさにこの凋落期のロックシーンにライターとしてデビューした訳だし、自ずとロックに対する捉えかたが違うのだろう。が、ニューウェーブ世代の私としては、この時期のロックは、個々としてはいいバンドはいくらでもいたし、いいアルバムも何枚もあるけれども、ロックシーン全体としては大きな問題を抱えた衰退期、という見方を捨てられない。大規模なツアー、群れるグルーピー、セックス & ドラッグ & ロックンロールという乱痴気騒ぎ、などというのは、私にとってロックのダメな側面だ。そのようなものはパンクが殺したはずなのに、時間がたてばなかった事にして、澄まして同じ愚行を繰り返している。私のもっとも嫌悪するロック像につながる何ものかが、この映画には温存されている、と直感した。

 それとこれも個人的なことだが、私はこの映画に出てくる架空のロックバンド「スティルウォーター」のモデルとなったオールマン・ブラザーズ・バンドに対してあまり興味がない。そもそもサザンロックに対してそれほど食指が動いたことがない。CCR、ザ・バンド、レーナード・スキナード、レオン・ラッセル…。一通り聴いたけれど、結局それほど惹かれるものはなかった。

 あとこういったバンド、ミュージシャン達は、ルーツ指向・ファミリー指向が強く、一種の疑似ファミリーを形成していたはずだが、その事があまり描かれていないのも気になる。それはもしかしたら、キャメロン・クロウの実際にみた彼等は私が勝手に妄想しているのとは違って、それほど疑似ファミリー的ではなかったのかもしれないが、この「疑似ファミリー」というテーマは、最近のハリウッド映画においては結構重要なはずだ。「家族の再生」がここ 10 年ほどずうっとアメリカにおいては緊急の課題としていわれているのだが、それに対して、その家族の崩壊が始まった 70 年代を舞台に、新しい家族の形=疑似ファミリーの可能性を探る映画が何本か撮られるようになってきて久しい。『ブギーナイツ』や『54』など。この映画も当然そこに連なるものと、私は観る前から勝手に妄想していたのだけれど、実際は、映画の最初に壊れかけたキャメロン・クロウの家族が最後に目出度く復活する、というストーリー。これって、反動的じゃあないか?

 なんだかケチをつけまくったみたいだけれど、そんなつもりはなくて、映画は楽しめた。ただ、そこはかとなく腑に落ちなくて、ちょっと色々と考えてみたまで。最後に、映画は観ていないけれど、私の感想をきいたトモコの意見をのせておこう。

「私達のように、若い時にロックに全面的にいれあげた事のある人間にとって、ロックを題材にした映画が、そうそう腑に落ちる訳ないわよ。」

 それは、そうかもしれません。

小川顕太郎 Original:2001-Apr-9;