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9月22日
「米国中枢同時テロ事件で考えたこと(全 3 回)その 1」

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From Readers 2001・9月22日〜

From readers2月11日(SAT.)

「米国中枢同時
 テロ事件で考えたこと
 (全 3 回)その 1」
 (9 月 14 日現在)

ソバ さんのお便り

 今日は、みなさんへのお詫びと、見苦しいですが自分がなぜそのように考えたかという理由も含めて、書こうと思います。とりとめのない文章ですが、もしよろしかったら読んでみてください。


〈お詫び〉
 先ずみなさんに、先週末、安直な思考による無責任な私見を、掲示板に書き込んでしまったことを、深く深くお詫びします。心から反省しております。その後、様々な情報を自分なりに調べ考え直しましたが、「アメリカが今回のテロ事件を事前に知っていて故意に見過ごした説」の真偽は別として、自分は、この説にはもはや賛同しません。ここで撤回致します。不快な思いをされた方もあったかも知れません、本当に申し訳ありませんでした。


 はじめに、今回のテロ事件の犠牲となったアメリカ市民と各国市民の方々に、深く哀悼の意を表します。

店主の日記 9 月 12 日」で、今回の米中枢同時テロの原因が 3 項目挙げられています。が、2. と 3. は原因の説明としては、必ずしも並立しないようにも思われました。

 というのは、2. が、「全くの自作自演」であるとすれば、3. に相対して成立しますが、もし真珠湾の時と同様に、加害者側の謀略を知っていて故意に見逃したという場合なら、2. についても、テロが起こった背景や政治的要因自体は「ブローバック」であると云えるからです。もっと云えば、1. の場合でも、突き詰めればそれは「ブローバック」である、と云えるかも知れません。

 今回の事件の要因が「ブローバック」(自業自得、因果応報)であることは明白だと考えますので、私も店主さんの意見に賛同します。つまり、アメリカ帝国の諸国に対する圧政のツケが、アメリカ本土に巡ってきたというものです。理由は、店主さんが書かれている通りです。

 とはいえ、最主要容疑者とされているビンラディン氏をはじめ、アメリカ自身がこれまでにもある一人を勝手にかつぎあげて軍事技術訓練を施し紛争国の対抗勢力として育て上げてきたという事実や、アメリカ経済が第三諸国への武器売却等の軍需産業に支えられていること、そして太平洋戦争突入〜原爆投下、また戦後のベトナム戦争、アフガン紛争、湾岸戦争等の史実に留まらない、諸国への事あるごとの内政干渉・政治 / 軍事介入を鑑みると、アメリカはその発端が思想的なものであれ経済面の問題であれ、すべての軍事紛争の「呼び水」となっている所があり、よって本を質せば究極的に何もかもが「自作自演」、現在の世界情勢はすべてアメリカ帝国の独り相撲の結果、と云えなくもないかも知れません。

 2. の場合で問題とされるのは、今回のテロが 3. にあるように「ブローバック」の必然的な結果であるとしても、その策謀についてアメリカが果たして事前に知っていたのか否か? ということなんだと思います。

 つまり、第二次大戦時、アメリカ国家が真珠湾〜原爆投下に至る情報操作/気運の煽動などを操り司ったものと同様の、国家的な作為があったかどうかということです。(国家レベル)また、それとは別に、以前に店主さんもソダーバーグ監督の映画「トラフィック」と題した日記で述べておられましたように、国家レベルからさらに一線を画す、国家の最高統治者である大統領― JFK ―暗殺を例とする、国家に非ずして国家をも超えた力を有つ「非 - 超国家的」なコントロール中枢の存在も、長年アメリカの裏の裏、「黒い闇」として想念されています。(超国家レベル)

 もし、アメリカが「国家レベル」で今回の策謀を事前に察知していたとしても、それを「ブローバック」の故だと認識しているとは思えない。…一方で、「超国家レベル」の力にとっては、「云わずもがな」「むべなるかな」なのでしょうか…。

 これは、私の虚妄に過ぎないのかも知れませんが、今回のテロ事件は別としても、アメリカがアメリカ自身をも超えた何か超国家的な「力」を内包していると考えています。そしてその何か「力」はアメリカの内部のみならず世界に顕在しており、この世界の在り方に長期的/間接的に働きかけ作用を及ぼし、動かしていると思っています。

(この点については、ここまでで閉じます。)

 ここで、私が最初今回のテロ事件について、「アメリカは〈国家レベル〉で、これを知っていて故意に見過ごしたのでは?」と考えた理由を以下に挙げます。

  1. 容疑者/ビンラディン氏首謀者特定及び FBI によるフロリダ家宅捜索への動き及び戦争準備体制に入るのが早すぎる。
    1. .1 東アフリカ米大使館爆破テロ事件を経て、数年来アメリカがビンラディン氏抹殺の機会を窺っていたこと。
  2. スパイ活動を含む世界に張り巡らされたアメリカのハイテク諜報網;「アメリカの情報によると、元々は日本か韓国の米軍基地が狙われる予定だったらしい、」と、事件勃発当日、福田官房長官が発言→ならば自国が襲撃される情報も未然にキャッチできないはずがない。
  3. いくら国内線とはいえ、セキュリティ・チェックの厳しいアメリカで、4 フライト分も隠し持ったナイフに気づかない(よってハイジャックをゆるしてしまう)という事態はあり得るのか。→反論;ビン・ラディン氏の一味に空港スタッフとして勤務している者がいた、あるいはセキュリティ・チェックがフリーとなるような VIP の乗客がおり、それがラディン氏の仲間だった。
  4. ブッシュ大統領やパウエル国務長官をはじめ政府要人がワシントン不在時に自爆テロが発生した。
  5. 人の多い昼時を狙わず、始業前の朝に実行された。
  6. ペンタゴンは老朽化のため内部は工事中であり、中枢機関はすでに別に移管されていると思われる。
  7. 政治/宗教テロリストにとっての自己表明とも云える「犯行声明」がまだ出されていない。
  8. このテロをきっかけにアメリカが軍事報復してくるのはわかっているから、こんな事件を起こして自分で自分の首を絞めることになるのはテロリストの方である。
  9. 今回のテロとその報復措置によって、昨今の、アメリカ一国主義(地球温暖化をめぐる京都議定書離脱、包括的核実験禁止条約(CTBT)からの事実上の離脱表明、ミサイル防衛構想等における強硬姿勢)に対する各国からの厳しい批判をリセットし、これを正当化することが可能である。
  10. 主戦論を唱える極右イスラエル=シャロン首相とのパレスチナ自治区壊滅のため仕組んだ策略である可能性。(イスラエル兵はパレスチナ人を殺しまくっとるわけです。女子供かまわず。)
  11. 短期決戦なら不況のアメリカが戦時特需を見込める。
  12. 例えば、ピッツバーグで墜落した飛行機は、米軍に撃墜されたのであり、これは大きな国益を護るためには致し方の無かった犠牲だったのかも知れないが、その飛行機のマスコミ取材がまだ許されていないこと。よって、米国による証拠ねつ造の可能性があること。
  13. これまでのアメリカの政治/軍事謀略(真珠湾等)や交戦履歴(原爆や枯れ葉剤使用による市民をも含む無差別大量殺戮等)や歴史事実を参照しない、報復推進論。

 等々。


 しかし、冒頭で書きましたように、今は考えを改めました。今回のテロ事件について、事前にアメリカの国家レベルの操作が本当にあったのかどうかはわかりません。また、こんなことは少なくとも「たった今」は、問題ではありません。アメリカが知っていたかどうかは関係ない、ただ間違いなく、アメリカの国内線飛行機のうち二機が WTC ビルに激突し、ビルは倒壊し、ペンタゴンにも一機衝突し、また一機は米軍機に撃墜され、併せて多数の死者が出、アメリカ政府はイスラム原理主義者のテロと断定し、武力報復の戦争準備体制に入った、という事実がここにある。

 誤解を恐れず云いますが、今アメリカに必要なのは、報復などではなく「自己反省」だと思います。

 同時に今世界は、アメリカという一国主義国家の破綻のみならず、「民主主義」という社会システム自体が、観念レベルを超えて、いよいよ現実的に終焉に向かおうとするそのほんの発端に、立ち会わせているのだと思います。

 これは憂うべきことではありません。いよいよ名実共に、「近代」が終わる。何かが終わる、ということは、次に新しい何かが生まれる、ということです。(次回は「やっぱりぜったい戦争反対!」を書きます。)

ソバ

参照
間もなく復刊する「批評空間」の WEB サイトから、柄谷行人による WebCritique
参考

自爆テロについて、戦争抵抗者同盟(WRL)USA 支部声明

 この文章は、自宅から送信します。WRL の事務所からは、メール送信ができない状態ですが、この声明を作成していた時私も事務所にいましたので、原稿を持ち帰り、自宅からすぐに送信しましょう、ということになりました。

David McReynolds

(サイト管理人注:以下は「War Resisters League Statement on 9-11-01 Attacks」の訳文のようです。)

 現在、マンハッタン島のすべての橋、トンネル、地下鉄は閉鎖され、まるで包囲戦の最中のようだ。そして、何万人もの人々が、ロウアー・マンハッタンから北へと、徒歩でゆっくりと避難している。ここ WRL 事務所で、我々がもっとも心配しているのは、世界貿易センターの崩壊で犠牲になった、数百人、あるいは数千人のニューヨーク市民のことである。よく晴れて、空は青いというのに、地上では、ビルの崩壊跡からまきあがる煙が、雲のようにたちこめている。そして、そこでは、最後のビル崩壊のときに活動していた、多数の消防士・警察官らを含め、多くの死者が出ている。

 もちろん、ワシントンでも、我々の友人や同僚は、ジェット機につっこまれたペンタゴンの一角に居合わせた、多くの一般市民について、同じような心配をしていることだろう。そして、私たちは、自爆、墜落した旅客機に乗り合わせ、悲運に見舞われた、罪のない乗客のことも心配している。

 今回の攻撃が、誰の手によるものかは、現時点では、分っていない。アラファト議長は、爆撃を非難している。ただ、私たちとしては、もっと情報が入るまで、憶測で犯人探しをすることは、控えたい。

 しかし、現時点でも、明らかなことがある。ブッシュ政権が、ミサイル防衛に何千億ドルもかけようとしているのは、税金泥棒だということが、明らかになった。たとえミサイルを配備したところで、ずっと低レベルの攻撃手段によるテロ攻撃を容易に許してしまうことに、かわりはないのだ。

 私たちは、連邦議会とブッシュ大統領に、強く訴える。今回の攻撃に対し、アメリカ政府が今後どのような対応、政策をとるとしても、わが国は、決して一般市民を標的にしない、そして、一般市民を標的にする国の政策は受け入れない、というものでなければならない。わが国がこのような政策をとるということは、イラクへの制裁を終えることを意味する。我々は、イラク制裁によって、すでに数十万人のイラク市民の命を奪ってきた。また、このような政策をとるということは、パレスチナ人によるテロリズムを非難すると同時に、イスラエルによるパレスチナ指導者暗殺政策、パレスチナ人弾圧、ヨルダン西岸・ガザ地区の継続的占領に対する非難をも意味する。

 アメリカの軍国主義は、数百万人の人命を奪ってきた。それは、インドシナ戦争に始まり、中米、コロンビアにおける暗殺者集団への資金提供、イラクに対する制裁、空爆などによるものである。

 また、アメリカは、世界一の通常兵器の供給国でもあり、アメリカが供給した兵器がインドネシアからアフリカに至るまで、世界中でテロリズムを煽動しているようなものである。アメリカが当初、アフガニスタンの武力抵抗を支援したことが、タリバンの勝利につながり、今日のオサマ・ビン・ラデン氏を生み出したのだ。

 もちろん、アメリカと同様の過ちを犯した国は、ほかにもある。私たちは、これまで、ロシアのチェチェン侵攻を非難し、中東戦争・バルカン半島では、両当事者の暴力を非難してきた。しかし、わがアメリカ合衆国は、自らの行動の責任を負わなければならない。今まで、我々は、自国内で安全を享受してきた。しかし、涼しく澄み切った空の下で目覚め、我が国最大の都市が攻撃されていることを知ったとき、我々は、暴力の世界に住みながら安全に過ごすことのできる者などいない、ということに気付かされる。

 軍国主義は、終りにしよう。これまでの数十年間、我が国の特徴であった、軍国主義を。軍縮、国際協調、社会正義によって、安全が得られる世界を求めよう。これまでのように、戦争を拡大し、報復合戦を繰返すのではなく。

 たとえ、今日の悲劇が、我国自身が他国の一般市民に対して加えた打撃を思い起させるものだとしても、私たちは、今日受けたような、何千人もの市民に対する攻撃を率直に非難する。

 私たちは、この国に住む、多くの中東系の人々が、現在感じているであろう恐怖に、気付いている。そして、彼らのことを考え、報復に走らないよう、考えてもらいたい。世界はひとつだ。

 我々は、恐怖に震えながら生きるのだろうか、それとも、紛争に代わる平和の路と、資源の公平な分配求める未来にむかって進むのだろうか。

 失われた多くの命に哀悼をささげながら、我々の心は、復讐ではなく、和解を求めている。なお、この文章は悲劇的な事件の直後に書かれたものであり、戦争抵抗者同盟の公式声明ではない。

戦争抵抗者同盟アメリカ支部事務所
スタッフ、役員一同
2001 年 9 月 11 日

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