未来探偵ユキエの
台湾調査 File 09:
ホテルの朝食を済ませてから、ホテルを散策してみることにしました。私達が興味を持ったのはカフェのケーキです。ちょうどパティシエがケーキを運んで来ました。街中で見た黄緑や紫色をしたケーキではなく割と普通のケーキです。三つ注文。席で待っていると運ばれて来ました。では、頂きます。
シャリ…ん? …シャリ…これは…どうやら凍っている様です。どおりで人の事をあまりじろじろ見ない台湾の人達、しかもホテルの人達が私達の食べている様子を見守っているはずです。
昼の十二時半に HIS のお迎えが来てチェックアウトし空港に向かいます。空港で時間が余って、私達はどの人が日本人か当てるゲームをしたり、台湾旅行に来ての感想などを話して時間をつぶします。
「台湾は暖かいしお茶は美味だし人も感じが良かった。疲れたが面白かった」というのが二人の感想でした。そして「また来たい」という意見でまとまったのですが、「飲茶を食べにまた来たい」というのが本心の様な気がします。飲茶それも小籠包を食べられなかったことが余りにも悔しくショックで、「小籠包」は二人の間でいつしか決して口にしてはいけない禁句となっていたのです。
十五時二〇分になり、私達は飛行機に乗り込みました。ハンサムな客室乗務員が現れました。訓練が行き届いているのでしょう、物腰も話し方も素敵です。彼が私達を親切に席へ案内し、手荷物を頭上の棚に片付けてくれます。そして台湾帰りの客への決まり文句なのでしょう、素敵な笑顔で私達の旅行の感想を訊ねます。
- ハンサム
- 「台湾はいかがでしたか?」
- 二人
- 「はい! とても」
- ハンサム
- 「そうですか。それは良かったです。小籠包は食べられましたか?」
- 二人
- 「…。…いえ」
- ハンサム
- 「あぁぁ…………残念です。また是非食べに来て下さいね」
- 二人
- 「…はい…」
あぁと深い溜息をつく一瞬、彼の笑顔が凍りつき酷く顔が歪むのを私達は見逃しませんでした。
こうして私達の台湾調査は終了しました。調査できなかった数々…残念です。
でもまた来ます。いつか…さようなら台湾。礼儀正しい人達の国、台湾。美味しいお茶のある台湾。小籠包がとても美味しいと言われる台湾。
さようなら。
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