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Movie Review 1999・9月19日(SUN.)

TOKYO EYES

 吉川ひなのはこれまで『瀬戸内ムーンライトセレナーデ』『デボラがライバル』など、どうでもいいような役ばかりで気の毒であったが、今回は魅力炸裂。すごいぜ。驚くべき事実はこの映画が 50 歳くらいのフランス人監督によって撮られたということだ。…というか、よく考えれば外国人によってしか作りえなかった映画であるのだが。

 日本人監督が日本を舞台にした映画を撮るなら、普段の見慣れた風景をそのまま撮ることはせず、なんとなく「映画的な」場所を探してしまうところだが、見るものすべてにエキゾチックを感じてしまったこのフランス人監督は、電車、路地裏、商店街、朝の清掃車などなどの日本人が見過ごしがちな風景を撮ることによって日本人が撮る以上に日本的な映画ができあがったというわけだ。外国の方々が撮った日本を舞台にした映画、ってえと日本人からすれば必ずや奇妙な描写が見受けられ、そういうズレが最高におもしろいのだが、この映画の場合は日本人監督が撮った映画、と言われても何の違和感も憶えないものだ。日本の文化が正確にフランスに伝わりだしているのかな? とも考えたりもして。

 聞くところによるとこのジャン=ピエール・リモザン監督の前作「天使の接吻」は『汚れた血』のパチモン、ということで(ボクは未見)この映画でも、例えば「目にゴミが入っちゃった〜、舌でなめて取って〜」とかの寓意的なエピソードの数々――勿体つけているが何がいいたいのかよくわからない――がなんとなくフランス映画特有の頭の痛さをかもし出しそうになるが、東京を舞台に日本人が演じると実にステキな映画になるから不思議だ。

 吉川ひなのが、「お前、素ぅやんけ」と突っ込みたくなるほど素で、実に素晴らしい。こういう俳優の素の表情をさらけだす、というのはフランス映画のある種の傾向だと思うのだが、武田真治、ビートたけし、杉本哲太、池内博之、モロ師岡などなどの俳優さんも普段とはちょっと違うぞ、という感じで実に新鮮だ。今度京都メトロにやってくる田中フミヤもちょっとだけ出てます。

 ユーロスペース配給。ユーロスペースのパンフはいつも内容充実、デザインも良いのだが、今回も中原昌也(肩書きが「映画評論家」になっているけどいいのか?)、リリー・フランキー、この映画のロケセットに部屋を提供した常磐響と執筆陣も的を得た感じで良い。シネマライズ、ガーデンシネマは見習うこと。

BABA Original: 1999-Sep-19;

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