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Movie Review 1999・9月02日(THU.)

エリザベス

 監督はインド人のシェカール・カプールという人で『女盗賊プーラン』『Mr. インディア』を撮った人。おやおや。ボクはたまたまこの 2 本のインド映画を見ているが(ホントにたまたま。インド映画はあんまり見ていないのだ)、アナーキーなフィルモグラフィだな。同じ監督が撮った映画とは思えない。「職人監督」ってヤツか? ま、世界でいちばん映画を量産している国の監督ならば、たかだかイギリス映画を撮るくらい朝飯前なんだとは思うが、ともかくグルーヴ感のある演出で退屈させない、と書きたいところだが、前半は退屈で、後半はジェダイマスター風の暗殺者が出てきたところでおもしろくなりそうだったんだが、なんかあっさりどうこうしてしまって不満。

 そもそもこちらにイギリス王朝史の知識がないので、人物関係を把握するのに忙しく、映画に没入しにくい。こういう史実ものは事前に歴史のアウトラインを頭に入れておきたいところだが、公開して間もないというのにパンフレットが売り切れていて(なんでや!)それもかなわず。

 エリザベス女王が即位、政敵をなぎ倒し、自らの権力を確実なものにするためにかつての側近たちも殺しまくる、という『ゴッドファーザー PART II』あたりをホウフツとさせるお話。おもしろそうでしょ? フランシス・コッポラ調であります、が、「ともかくグイグイ話を進めちゃうので、みんなついてきておくれよ!」というあわただしい演出は『ドラキュラ』『ゴッドファーザー PART 3』などのつまんない方のコッポラ風。普段、インドで 3 時間くらいある映画ばっかり撮っているからイマイチ 2 時間の映画の感どころがわからなかったのかしらん? とか思ってみたり。戦場のシーンは黒澤明の影響がありありと見られる。

 出演者は豪華でファニー・アルダンとか『ドーベルマン』のヴァンサン・カッセルがチョイ役で出ており、なんか嬉しい。『シャイン』のジェフリー・ラッシュがエリザベス女王の懐刀の謀略家をやっていて、これはかなり良い。主演の女の人はあまり馴染みがなく、名前を調べてもすぐに忘れちゃうので調べないが『エリザベス女王』な感じがいい。スピーチの練習をするシーンはグッときました。ここだけでも見る価値ありか。

 ともかくエリザベス女王の話をマフィア映画風に演出する、というのはアッパレであります。日本でいえば大正天皇の即位から崩御までを『仁義なき戦い』風に撮る、という感じですね。違うか。誰かこういうのを撮らないだろうか?

BABA Original: 1999-Sep-02;

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