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Movie Review 1999・10月30日(SAT.)

ドリームメーカー

 エイベックスの専務取締役の松浦勝人とかいう人の半自伝的映画だそうです。で、あるから妙に生活臭かったり、主人公がホントにフニャチンな感じだったりで、ただのアイドル映画ではない。

 ダ・パンプ、というボクの全然知らない人気ボーカルユニットに属しているらしいイッサくん演じる主人公は、とにかくダメなヤツ。バンド活動をやっていたが、中途半端。バイクにスピーカーをつけまくってズンドコいわしながら道を走っていたと思ったら、突如として走り屋の一団に拉致され、「あんたのテープで走ると最高なんだよ」などとワケのわからん評価を受け、走り屋に加盟。バイクってのはそもそもうるさい乗り物なのに、それでも聞こえる音楽とは、いかなる大騒音なのか、右翼の街宣車の比ではないと思うがいかがなものか。イッサくん、根がフニャチンなものだからパトカーが現れたら一目散に逃げ出してしまって走り屋を追放され、中途半端。

 このイッサくんの両親は、梅宮辰夫と富司純子という強烈な夫婦。イッサくんがバイクの部品を盗もうとして警察のお世話になったときには「おいおい、梅宮辰夫にブチ殺されるぞ」と要らぬ心配したりして。富士純子に拳固でぶたれるだけで済んでホッとしました。ここがこの作品中もっとも身の毛もよだつサスペンスフルな場面か。

 イッサくんは、フラリと立ち寄ったレンタルレコード屋(なつかしいですね)、そこの品揃えに異常に感激、しかもスピードの上原多香子たらいうカワイコちゃんがいたものだから、頼み込んでバイトさせてもらうことに。品揃えが凄いらしいが、小生、音楽に詳しくない故よくわからぬ。「ヒューイ・ルイスの 1 枚目」、「ストーンズの、有名な写真家(ロバート・フランク)がジャケットの写真を撮ったヤツ」、「クラフトワークのドイツ版」「ピート・シェリーの『テレフォン・オペレータ』」とかスゴイんでしょうか?

 ちなみに上原多香子ちゃんのおじさんで、レンタルレコード屋の経営者を演じているのは、関西では「引っ越しは引っ越しのサカイ」で有名な徳井優さんです。最近がんばってます。

 イッサくんは音楽知識を生かして活躍、店も繁盛。しかし近所に大手レンタルレコード店が進出し、打撃をうける。大手レンタルレコード店の社長は柳葉敏郎。『踊る大走査線』など「いつも便意をガマンしている顔」が定評のあるギバちゃんだが、今回もナイスな演技が炸裂してます。

 起死回生のワンナイト・パーティを企画。平行してイッサくんと多香子ちゃんの恋物語が展開する…と思うでしょ? どうもお互い一目惚れだったらしく、一足飛びにに二人きりで沖縄旅行、海辺でフニャフニャ踊ったりする。最近の若者はそんなもんなんか? もっとプロセスを重んじるべきではないか? このように、現代の若者の「軽さ」をフニャフニャダンスをさせることによって表現している映画だったのだ。

 外見は小さいのに、実は地下が広大だったレンタル・レコード店で開催されたディスコ・パーティは、街頭に客が溢れ出すほどの大盛況だ。こらこら、外で騒いぢゃいかんぞ。お前らが周辺住民にかけている迷惑が、クラブ弾圧の口実になっているんだぜ、と独りごちた。なんかパーティの準備の段階では苦労してたみたいだが、意外とスンナリ成功しちゃう。たいしたものだ。

 ところがタカコちゃんは、いつの間にか心臓の持病を持っていたらしく、パーティの準備でコキ使われ、倒れて入院。入院してもベッドでカンバッジ作りだ。なんで誰も止めないのだ? 最近の病院ってのは患者の容態を心配しないところまで腐りきっているのか。現代の病院のムチャクチャさを告発した映画でもあったのだ。

 パーティを成功させ、「オレには DJ の才能があるんぢゃないの?」と気づくイッサくんだが、タカコちゃんという便利な彼女が死んでしまってサメザメと泣く。イッサくんは次のカットでは音楽プロモーターとしてベンツのオープンカーを乗り回し、巨大コンサートを大成功させている。ヤレヤレ。

 目眩がするほど素敵なお話の監督は、菅原浩志。『That's カンニング』、『ときめきメモリアル』の人。徐々にではあるが、よくなってきてます。前途は暗いと思うが。『マグニチュード』という作品もあるらしいが、これは未見。残念!

 さて、われわれ庶民はこの映画から一体いかなる教訓を引き出すべきだろうか。「成功への道には死体が埋まっているんだぜ」ということか? とはいいつつ、ダ・パンプのイッサくんはフニャチン野郎を好演。なかなか良いです(これは本心)。がんばってガンガン映画に出てもらいたい。

BABA Original: 1999-Jan-30;

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