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Movie Review 1999・10月15日(FRI.)

バーシティ・ブルース

 映画監督や脚本家ってのは高校時代はたいてい映画ばっかり見ていたボンクラで、フットボールの花形選手やチアリーダーからは忌み嫌われ、いぢめられた経験を持っている(ホンマか?)。そういう過去を持つ人々が復讐の気持ちをこめて映画をつくるものだから、映画に登場するスポーツ選手ってのはたいてい脳たりんに描かれることが多い。ところがこの映画の場合はフットボールの花形選手の側から、「ボクらもただの筋肉バカではなくて、いろいろ悩みもあるんだよ」ということが描かれていて、映画史的には意味を持つ(かも?)

 そもそもこの映画、MTV プロダクション制作の第一作らしい。MTV 好きな若者ってのはやっぱり体育会系なわけで(いい加減なこと書いてます)、全編にそういう人たちが好きそうなロッケンロールが散りばめられ、アメリカでは大ヒット。でも初日の京極東宝、最終回の観客は約 4 名。まあ、日本の体育会系の人ってあんまり映画館で映画を見ないからね(めちゃくちゃ適当なこと書いてます)

 そういうどうでもいい話はおいといて、いったい「バーシティ」って何? という意味不明の題名で公開されているが、80 年代だったら「愛と青春のラストゲーム」というような邦題で公開されるのがふさわしいハイスクールのフットボール選手たちの物語が展開される。ちなみに「varsity」ってのを辞書で引くと「大学の〜」という意味でした。つまり「バーシティ・ブルース」=「大学哀歌」…カッコ良過ぎ! アレ? 舞台は高校ぢゃないか。なぜ「大学の」? 知っている人は教えてください。

 冒頭の「テキサスではフットボールは法だ」とのナレーションが端的に示すように、スポーツが地域のコミュニティをいかに支配しているかを描いた映画でもある。トム・ハンクスに酷似した主人公は、万年補欠。試合中に隠れてカート・ヴォネガットを読んでいる、というエピソードが示すように、ただのバカではない。20 何回かの州優勝に輝く名コーチはチームの勝利のためには選手がボロボロになっても構わない、おまけに黒人プレイヤーには決してタッチダウンさせない、という鬼畜なヤツ。演じるのは一時期まったく顔を見かけなかったのに、『ヒート』あたりからやたら引っ張りだこのジョン・ヴォイトだ。

 主人公は、いつも「お前のオヤジも役立たずだった」とか言われていぢめられるんだけど、スタープレイヤーが怪我で欠場、代わりに試合に出場して大活躍をしてしまう。したらば、コンビニでは頼みもしないのに「ビールはおごりだぜ」とか言われてオマケしてもらったり、イケイケの姉ちゃんに迫られたり、と一夜にして世の中が一変。ただのボンクラだったら舞い上がってしまうところだが、主人公はちょいとお脳があったもんだから、鬼コーチと対決、そして…、というお話。

 てな具合でバリバリしょうもなさそうなんだけど、フットボールの試合のシーンや、全体にチームカラーの青を基調にした撮影が素晴らしいし、テンポも良いし、ジョン・ヴォイトの鬼コーチっぷりも良い。スポーツが世界の中心であることへの批判もなくはないので、ま、退屈はしないからヒマだったら見てください。

BABA Original: 1999-Jan-15;

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