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Movie Review 1999・10月10日(SUN.)

アルナーチャラム
 踊るスーパースター

『ムトゥ 踊るマハラジャ』よりもずっとおもしろく見た。単にボクがインド映画の見方を了解したからという気もするが、インド映画に付き物の無意味(とボクは思う)な歌と踊りが少なかったので、という気もする。例えば『ラジュー出世する』という映画では、主人公が田舎から都会に旅立つ、というシーンで「だーれそれが都会に行くぞ〜」という内容だけで延々 10 分くらいひっぱられても困るのである。あなた、それはインド映画を見る資格なしよ、とおっしゃられる向きもあろうが、あんまりにも脳天気ではなかろうか?こちとら貧乏ヒマなしなんだからね。

 この映画も約 3 時間の上映時間で、やっぱり歌って踊るシーンがあるが、「おれの名前はアルナーチャラム〜、信心深いんだぜ〜」と訴えるだけの無内容な歌と踊りでも退屈しない、というか人件費がいかに安い国とはいえとんでもない人数によって繰り広げられる群舞は、スーパースター、ラジニカーントの腰の動きとあいまって感動的だ。

 今回は本来の上映形式である休憩入りなのも良い。前半は大映ドラマ風のどんでん返しの連続で、後半は 1 ヶ月で 10 億ルピー(どれくらいの価値なのかピンと来ませんが)を浪費しまくる、という 2 本分の内容だ。全編、ラジニカーントの魅力爆発。悪を憎み、信心深く、友だち思いで喧嘩も強い、というのがラジニカーントのキャラクターの特質で、やっぱり映画はこうでなきゃ! こういう映画が堂々と作られ、大ヒットを記録する国というのはうらやましい、と思う。国民の間で何が善で何が悪か? というコンセンサスが広く取られていないとなかなか勧善懲悪映画は難しいわけで、隣の人が何を考えていようがどうでもいい日本ではこういう映画はなかなか作れないと思う。

 とにもかくにも、一にも二にもラジニカーント。それに尽きる。『ムトゥ 踊るマハラジャ』を見て、「女の人はメチャ美人なのはいいとして、あんなオッサンが主人公なのは納得いかない」などという人は見なくてよろしい。

 ちなみに宣材のデザイン担当は PAT Detective らしい。いつもなら、箱入りで 1000 円のパンフなんて詐欺ではないですか? と声を大にしていいたいところだが、こういう普段見ている映画と異なる枠組みを持つと思われる「マサラ・ムーヴィー」のパンフなら、こういうのもありかな? という気もする。いや、遠慮してるんぢゃなくて。でもテキストはもっと充実させてくれ!

BABA Original: 1999-Jan-10;

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