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2014年12月08日(Mon)

デビルズ・ノット 強制起訴シリーズ

起訴者: マツヤマ

強制起訴シリーズ48弾

8歳の男児3人が惨殺された事件で、死刑を含む有罪判決を受けたのが、冤罪被害が濃厚な「ウエスト・メンフィス3」と呼ばれる10代の少年3人だった。いまだ未解決の事件の同名原作をすべて実名で映画化したのは「エキゾチカ」「スウィート・ヒア・アフター」などで知られるカナダの奇才アトム・エゴヤン。ジョニー・デップ、ウィノナ・ライダー、ピーター・ジャクソンなど、大勢の著名人が3人の支援活動を繰り広げているが、はたしてこの映画も支援の一環なのだろうか?

元店主
では、第一声は出題者のマツヤマさんから、どーぞ!
マツヤマ
えっ、オレ? オ、オレは、ま、まあまあ、というか・・・、い、いや、まあまあよりも、もちょっと、良かったんじゃないかと・・・
元店主
なんですか、自信なさそうなその態度は?
マツヤマ
いや、まぁ、まあまあよかったよ。ただ、どうせまた2人は逆の評価なのかなぁ?とか思ってすでに退き気味なんだ。
ヤマネ
ピンポーン!アタリです。イマイチでしたー! 怖くもなかったし、刺激的でもない。ハッキリ言ってぜんぜん面白くなかったです!
マツヤマ
やっぱりね、ハイハイ、想定内想定内・・・
元店主
あ、私は初エゴヤンですが、わりと面白かったですよ。
マツヤマ
ハイハイ、想テぃ・・・、え、そうなの?
元店主
私はこの事件のTVドキュメンタリー番組「パラダイス・ロスト」3部作もピーター・ジャクソンが製作に参加した「ウエスト・オブ・メンフィス」も観てなくて、この事件については何も知りませんでしたから、いろんなことが興味深かったですよ。ただ、ドキュメンタリー番組はアメリカの国内むけで、あくまでアメリカ国内での事件でしかなかったものを、映画にすることによって、世界へ向けて、ある普遍的な事件として送り出したことには意義があると思います。
マツヤマ
オレもこの事件のこともぜんぜん知らなくて、単にエゴヤン好きだから選んでみただけなんだけどね。この作品もしっかりエゴヤンしてたわ。ケンタロウさん、これがイケるんなら他の作品も嫌いじゃないと思うよ。
ヤマネ
ボクも「スウィート・ヒア・アフター」だけは観たことがあって、っていってもずいぶん忘れちゃいましたが、街の人々の思惑が丁寧に描かれてて、素晴らしい映画だと思ったことは記憶してます。でも今回のは 映画としてコンセプトが分かり難くて、ドキュメンタリーでもフィクションでもない。このヌル〜い感じ、落ち着かないんですよですねぇ。
マツヤマ
んー、それは分かるんだけど、オレは結果的に退屈せずに観ることができたし、適度な満足感もある。エゴヤンって、カタルシスは与えないけど、最後までじっくりと観せる技術はあると思うな。中盤で容疑者の3人が裁判所から出て来るところで、ヘビメタが流れて、撮り方も急に軽くなって社会派エンタメ風になるところは、気分転換のエアフレッシュナー的な効果になってると思うんだよ。ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の「灼熱の魂」なんかも、息が詰まるような重~いテーマの映画なんだけど、やっぱり中盤に爽やか~なシーンが入る。そこでちょっと力が抜けて楽になるんだよな。
元店主
まぁそういう計算はあるでしょうね。エゴヤンに限らず2時間の作品を最後までちゃんと観せるためのリズムを重視することも監督の資質だと思うし。でも、ちょっと気になったのは、最初の方で字幕とは別に日本語の説明が入るところ。英語では入ってないから日本で独自に入れたんだろうけど、びっくりしました。日本では知られていない事件だから、というなら分かるけど、どちらかといえば、なくてもいいんじゃないかな・・・
マツヤマ
あれはオレも気になった。でも最初だけでホッとしたよ。
ヤマネ
そういう問題じゃなくてですね、この映画全体が中途半端な再現ビデオみたいだし、ヒットさせなきゃ意味がなさそうな企画なのに、ぜんぜんヒットさせるように撮られていないとしか思えません。誰か特定の人物の視点で描くわけでもなく、誰かに感情移入できないのも、魅力的な人物がまったくいないのも、そこがリアルということなのかもしれないけど、何もかもが記憶に薄い作品でした。
マツヤマ
オレはコリン・ファースがけっこう良かったと思うぞ。「アナザー・カントリー」では共産主義者で主人公の理解者の役とか「ブリジット・ジョーンズの日記」で弁護士とか、今回も死刑反対論者で弁護士に無償で協力する私立探偵とか、左に寄った役がよく似合うような気がするんだ。いや、オレはそっちじゃないけど、いや、あっちでもないんだけどね。
元店主
私はとくに誰かが気に入るとか気になる、ってことはなかったというか、元々あまり感情移入して観ない方なんで、そこは問題なく観れました。ヒットさせるように撮られていないというのは、映画として重要なエンターテインメント性に欠けているからダメ、ということだよね、ヤマネくんは。
ヤマネ
ハッキリ言ってしまえばそうですね。映画としての問題提起とか、心を揺さぶるような共感とか、あえて捨ててるのかもしれないけど、そういうのはボクには物足りないんですよ。
元店主
その抑えたタッチが私は良かったと思うよ。なるべく中立を保ちつつも、主張はしっかりと入れていて、よくバランスが取れてると思うんだけどねぇ。これ観てて「トガニ」とか思い出したんだけど、あっちはもう煽りまくってて、それがスゴくて、たしかにエンターテインメントとしてはその方が面白いんだけど、実際に進行中の事件を扱う上で、あの手法はどうなのかなぁ?と、どうしても引っ掛かってしまうんだよね。
マツヤマ
「トガニ」みたいに映画の影響で、世論が一方向にどっと動くのって怖いことでもあるよな。あれは裁判の演出がそうとう凝ってて、悪者がより悪く、弱者がより弱く描かれていて、だけどそれが実際にあった未決の段階で撮られたというのが問題なんだよ。でも今回のは違ってて、弁護士や証言者をアップで撮って音楽を重ねるとかほとんど無くて、むしろ引き気味。ただ、裁判全体はすごく面白くなかった?
元店主
「みなさん!宗教の名の下に何人の人が殺されてきたか思い出してください!信仰が人を殺すのです!彼らの悪魔への狂信が子供たちを殺したのです!」って検事が陪審員に向かって展開するところは嗤いました。あれメッチャ皮肉でしょ。キリスト教を妄信的に信じる人が、普通のメタル・ホラー好きの少年たちを殺そうとしているわけですからね。怖いなぁ・・・。アメリカの田舎に生まれなくて良かったとつくづく思うよ。
ヤマネ
多様性があるように見えるアメリカの中で、まるで70年代くらいで時間が止まったような保守的なイメージが強い田舎って、映画でちょくちょく見ますが、あの感じは少し可笑しくもかなり不気味で、なんだか苦しくなりますよね。
マツヤマ
アメリカの田舎は保守が多いことはいつも大統領選で如実に出るけど、あの裁判みたいに、悪者と決めつけて、煽動して、死刑に、ってのが最近のアメリカの途上国に対する人道的支援そのものだけどな。あの空気の中で「自分には何もわからない」という所で立ち止まった被害者の母親や、3人は無罪だと思いながらも「冤罪だー!」とか煽らないコリン・ファースの立ち位置が良かったと思うぞ。
ヤマネ
個人的には、お母さん役のリース・ウィザースプーンの太りっぷりが役作りなんでしょうけど正視に耐えられませんでした。昔好きだったのになぁ・・・。そもそも最初に森の中を映すシーンから乗れなかったんですよねー。ぜんぜん美しいとも思えなかったし・・・
マツヤマ
でもね森というのが重要な存在で、コリン・ファースが何度も森を見に行くだろ?あれは頑に考えを変えられない人たちに対して「木を見て森を見ず」という諺で皮肉を描いてるんだと思うぞ。
ヤマネ
へぇー、マツヤマさん、アメリカにも「木を見て森を見ず」って諺があるんですかねー?
マツヤマ
そりゃ似たような諺はあるだろ。あんなデカい国だから、別に森じゃなくても、大平原とか、麦畑とか、トウモロコシ畑とか、あっちのショッピングモールなんかもバカデカいらしいな。
元店主
いやいやマツヤマさん、森の話なんですけど・・・?
マツヤマ
うん、なるほど! ハイハイ! では、ヤマネくん、12月のお題は?
元店主
マツヤマさんが逃げたぞー、ヤマネくん追えーっ!
ヤマネ
はーい「チェイス!」です。

Comments

投稿者 オーソン : 2014年12月08日 19:05

僕も、まあまあ面白かったという感想です。抑制された演出で押し付けがなく、すごく理知的、と感じました。誠実さをすごく感じます。この事件を知らなかったので、勉強になりました。もし、この事件の事をよく知ってたら、退屈するのかもしれませんね。
『トガニ』の例、すごくよくわかります。昔、『ユナイテッド93』を観たとき、9・11テロの被害者(飛行機の乗客)を英雄として創作していることに違和感を感じたことを思い出しました。

投稿者 マツヤマ : 2014年12月09日 22:43

オーソン
抑制された演出、理知的、誠実さ~
そんな堅苦しい言葉ではなく、まあまあ面白かった部分を、もうちょっと具体的に聞きたい。
事件そのものなのか?映画としてなのか?
オレ自身は事件~裁判の一部始終を予め知っていたら退屈したと思う。

投稿者 オーソン : 2014年12月12日 23:08

マツヤマさん

例えば、母親が義理の父親に疑いの目を向けた時の父親の表情、容疑者として逮捕された主犯格の少年の態度、等の演出が、この人は犯人(無実)だとはっきり示していない作りになっていて、このもやもやした感じが楽しめました。あと、少年の死体を発見した時の警察官のちょっとパニックになっている感じ。このちょっとパニックっていうのが妙にリアルに感じられ、楽しかったです。
あと、上の文章には書いてないんですが、「田舎は怖い」映画は基本的に好みというのがあります。自分が田舎育ちなんで、田舎の排他性っていうものの怖さは肌身にしみるんですよ…。

投稿者 uno : 2014年12月14日 18:04

こんばんは。遅くなってすみません。

予告編を見たときは、めっちゃ怖い映画かなって思いましたが、そんなこともなく淡々と話が進んで行きましたね。
それでも疑わしい人を上手く切り替えていくから(といっても疑惑は晴れない)退屈はしませんでした。かといって面白くはなかった。

ところでコリン・ファースって事件発生時すでに町にいましたっけ?それとも事件を知ってから町に来ましたったけ?ボーッとしてたのか、どっちか分からなくなって、あんた何でこの町におるんや?怪しい…何でリズ・ウィザースプーンに近づこうとするんや?怪しい…そこがずっと気になってます。
なんか猛烈に勘違いしてるかも知れない…

黒魔術青年の友達に対し、警察が取引きで青年を嵌めようとするところ、そしてその友人が裏切らなかったところが良かった。あくまで淡々とグッと抑えた演出に冤罪の罪深さが伝わってきました。
エゴヤン、ヤルヤン!

映画全体を覆うヌメーっとした粘着感が気持ち悪かったです。

投稿者 マツヤマ : 2014年12月17日 10:21

警官が遺体を発見した場面はリアルだったね。職務よりも感情が先に出ている。オレもすごく悲しかった。
オレも田舎巡りの転勤族だったけど、移民だらけの北海道だからか、怖いほどの排他性というのは感じたことはない。ただ、今もっとも排他的な人物は安倍晋三だと思う。

ウノピへ
コリン・ファースはダイナーのテレビで事件を知ったと思う。リース・ウィザースプーンに近づいたのは?という疑問は特に感じなかったが、もしかしてウノピはコリン・ファースにも疑いの目を向けているとか?ないよね、まさか。

投稿者 uno : 2014年12月17日 23:42

マツヤマさん
こんばんは。
私もおぼろげながら、事件をダイナーのテレビで知ったっていう記憶があるんですよ。で、あのダイナーって事件の起きた町にあると私は認識していまして、コリン・ファースはウエイトレスとのやりとりから、町の住人ではないと思ったんです。
それで、なんでこの町におるんや。。。偶然?と。
途中まで若干疑いの目で見ていました。
普通に考えて冤罪疑惑の弁護(の手伝い)はせんよなあ、とは思いながら。
登場人物がことごとく疑わしいですし。

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