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2013年11月17日(Sun)

魔法少女 まどか★マギカ[新編]叛逆の物語【part 1 of 2】 強制起訴シリーズ

起訴者:元店主

強制起訴シリーズ35弾【part 1 of 2】

「魔法少女 まどか★マギカ」は2011年に放送された深夜アニメ。最初はひっそり始まったものの、放映がすすむにつれ大きな話題となり、最後には社会現象にまでなってしまった作品である。とはいえ、そんな社会現象と無縁な人たちもたくさん居る。我々“強制起訴メンバー”もそんな面々。「まどマギ」なんて聞いた事もない。今年はレオス・カラックスの13年振りの新作がやるぞー!とか、ホドロフスキーの23年振りの新作が撮られたらしい!とか、そんな話題で盛り上がっていたのですが・・・、そこに突如投下された「まどマギ」爆弾!そして全員爆死。こ、今年の最大の話題作は「まどマギ」の新作だったのかー!!!と、相成った次第である。
ところで、「まどマギ」は恐ろしく完成度の高い作品で、完結性も高く、これの続きはあり得ないだろう、と誰もが思った。などという事情は勘案される事もなく、やっぱここまで話題になった(お金を生む)作品を続けないというのは、現代社会では不可能に近い。という訳で、3年振りの完全新作な訳だけれど・・・。
大丈夫なのか、「まどマギ」。少女たちにまた会えるのは嬉しいけれど、資本の論理に押しつぶされていないか?果たして、前作を超えるなんて事ができるのか?そもそもあの続きで且つ魔法少女たち全員出すなんて無茶なのでは・・・やっぱ今年最大の話題作である。
ちなみに「まどマギ」シリーズは完全ネタバレ禁止、徹底した秘密主義を通している作品である。今回の新作もそう。故に、ここで大声で言っておきますが、この鼎談は「ネタバレしてます!」。だから、まだ観てない人は読まないで下さい。その前に、一刻も早く「まどマギ」を観て下さーい!

注意! ネタバレあり!

ヤマネ
傑作、だと思います。あの前作の終わり方から、よくここまでのものを作ったと、感心します。・・・でもねー、やっぱ前作と較べるとそれほどでもないしー、ちょっと強引すぎる所もあるしー、泣けないしー、なーんか詰め込みすぎで・・・結果、まぁまぁ、という感じでしょうか。
マツヤマ
なんだそれ!相変わらず、よくわからんなぁ。オレはこれを前作と較べるのは無意味だと思う。で、別物と考えて、かなり良かったと思うよ。
元店主
私は、すでに3回観た訳ですが・・・、観るたびに「これは傑作である!」という確信を深め、今では「これはまぎれもない大傑作!作品の善し悪しではなく、好き嫌いで言えば、前作より好きかもー」という所まで到達しました。
ヤマネ
ええー!それは意外ー。うーん、ボクはこれを観た時に、Zガンダムだな、と思ったんです。前作があまりに完璧に完結してるんで、まず前作の様々な前提を壊すしか続きはあり得ない、といった感じが。むろん、Zガンダムと違って、こっちは十分楽しめたんですけどね!
元店主
でも、案外これは前作から続いてると思うよ。今作は、ほむらちゃんが悪魔化する所が最大のどんでん返しだと思うけど・・・ほら、前作でまどかとほむらちゃんがワルプルギスの夜と闘って、負けて、死ぬ寸前の所あったじゃない。あそこで、ほむらちゃんは「このまま二人で魔女になって、こんな世の中ムチャクチャにするのもいいと思わない」って言うんだよね。ほむらちゃんは元々そういう子だったんだ。まどかさえ居れば、世の中なんてムチャクチャになってもいい、と。悪魔だよね。
マツヤマ
そん時、まどかは全く逆の反応をするんだよな。ほむらちゃんを助けて、この結末を変えてくれと頼む。で、自分は魔女にはなりたくないから殺してくれ、と。この時にすでに“まどかVSほむら”の図式はできていたという事か。それが今作で完成した、と。
元店主
そうですね。前作に埋もれていた可能性の糸をうまくたぐって今作を紡ぎ上げた、といった感じでしょうか。
ヤマネ
それは分かるんですけどー。でもやっぱ前作と今作では発しているメッセージが逆というか。前作では、いくら望んでも、手に入らないものは手に入らない、でも頑張る、みたいな“ほろ苦いバッドエンド”。今作は、欲しいものは何を犠牲にしても手に入れる!その事で世の中をねじ曲げても構わない、みたいな“後味の悪いハッピーエンド”って感じがするんです。ボクは前作のメッセージの方が好きなんですけどね。
元店主
なるほど。ほむらちゃん悪魔化問題だな。よし、それについて話そう。

元店主
私は前から、悪魔とは何の象徴なのか?という事に興味があったんです。まず、前提として、悪魔とは悪の象徴ではないんです。
マツヤマ
え?そうなの?だって、普通は悪魔は悪の象徴じゃないか?
元店主
ええ、確かにそういう用法が多いので誤解を呼ぶんですが・・・、でも突き詰めて考えると、悪魔の仕事って、地獄で罪人を苛むことじゃないですか。それって、悪じゃないでしょう。むしろ、神様の仕事のお手伝い、というか。・・・で、“チャーチ・オブ・サタン”ってあるでしょ?アントン・ラヴェイの。
マツヤマ
ああ、60年代の。チャールズ・マンソンとかと関係あるんだっけ?
元店主
厳密にはないんですよ。マンソンガールズのメンバーがそこでポランスキーと知り合った、とかその程度で。で、チャーチ・オブ・サタンでは、悪魔は“宗教的な抑圧に屈しない自由で自立した個人”の象徴なんです。別に悪事を薦めてる訳ではなくて、宗教的・道徳的・習慣的な抑圧に惑わされず、自由に自分の頭で考えて行動できる生き方を唱導してるんです。だから、悪魔って、単純に悪の象徴って事ではないんですよ。
ヤマネ
ほー、ではこの映画ではほむら悪魔は何の象徴なんですか?
元店主
それはもちろん、「愛よー」
ヤマネ
ええー!でも、聖書によると「神は愛である」ですよ!
元店主
うん。でもその場合の“愛”は“アガペー”でしょ?ほむらちゃんの言う“愛”は“エロス”の方だよ。生きる力の根源としての“エロス”。ニーチェのいう“力への意志”としての“エロス”。
マツヤマ
なるほど。オレ、実はほむらちゃんの「愛よ」発言には違和感があったんだ。だって、全然“愛”に溢れてる感じがしないし。むしろ、もっとドロドロした“欲望”って感じ。
元店主
そうなんです。そもそも日本語の「愛」って、仏教の言葉で煩悩のひとつ。むしろ現代のニュアンスでいえば「欲望・執着」でしょうね。だから初期の宣教師は「LOVE」を「御大切」と訳したという。・・・でもね、“アガペー”なんて、普通の人間には無理なんですよ。完全無私の慈悲の愛、な訳だから。よっぽどの聖人でもない限り、それは逆に人間性の抑圧に繋がる。だから敢て“エロス”としての愛を肯定した、叛逆天使としての悪魔、という系譜がある訳です。
ヤマネ
むむー、わかりますよ、わかるんですけど・・・
元店主
いやね、これに関しては、もっと考えてる事があるんだ。それは“魔法少女=魔女”システムの事なんだけど・・・。実はさ、このシステムって、魔法少女にアガペーを強要する事によって(そんな事は無理だから)絶望に追い込み、魔女へと破滅させるシステムだと思うんだよ。前作におけるさやかちゃんがそれを象徴してたけど、基本的に他の魔法少女たちも同じ過程を経て魔女化すると思うんだ。このからくりに、ほむらちゃんは自身が何度も何度も絶望を経験し、ありえない魔女にまで堕ちることで、無意識に気づいた。だから、敢て“アガペー”を拒否し、“エロス”を肯定する事によってこのシステムを打破しようとしたんではないか、と。つまり、まどかとは逆のやり方で、同じ闘いを闘ったんじゃないかな。
ヤマネ
私欲は様々な不和・争いの元になるものだけれど、人間の基本的な欲求のひとつ、つまりは人間性なんだから、抑圧する事なく尊重しよう、という訳ですね。わかります。現実的ですね。でも、究極的に人類の救済があるとしたら、いくら非現実的に思えようと、やはりアガペーしかないんじゃないですか。だって、現実世界って、やっぱ悲惨に満ちてますよ。
マツヤマ
欲望を基本的に肯定するシステムである資本主義にしたって、そう上手くいってるとは言いがたいよな、最近の世の中を見てると・・・。それが何かは分からないけど、確かに何か他の原理が要るとは思う。それってもしかして・・・、まどか?
元店主
悪魔は最終的には神に負けるんですよ。それは決まってるんです。でも、それでも果敢に何度も何度も闘いを挑む、という所に悪魔の魅力があるんじゃないですか。ミルトンの叛逆天使からロマン派のダンディーまで。正にそれこそ、暁美ほむら的でしょ?

ヤマネ
ところで、今作は前半がきつくなかったですか?サービスショット的なものが多くて。
マツヤマ
マミ先輩の胸、とかな。やたら机の下を映したショットも多いし、なんかパンチラみたいなのもあったし。なんじゃそりゃ、って違和感バリバリだったな。
元店主
まぁ、それはその通りなんですけど、3回ほど観たら慣れますよ。そしたら、結構楽しめる。それに、あれ、後で落すためだと分かってるし。
マツヤマ
それでもやっぱコッ恥ずかしいよ。みんなの変身シーンとか。
元店主
ああ、それも3回も観れば慣れます。そしたら、手塚治虫っぽくて、割といいですよ。
マツヤマ
それになんだよ、あの「ケーキ、ケーキ♪」って歌。
元店主
あれは・・・3回観ても慣れんかったか・・・。でも、あれナイトメアを治めるための魔法ですよ。儀式には決まった歌とフリがあるもんですから。で、最後にケーキがドバーッと伸び上がって、それの周りをベベが蛇みたいにグルグルと巻きながら同じく伸び上がっていって、最後に頂上から下に向かってガーッと食べる・・・というのは、密教の図象でしょう。倶利伽藍剣ですよ、あれ。
マツヤマ
ま、あれほど売れてしまうと、色んな所にサービスしなきゃならないだろうから、大変だよな。サービスショットも仕方ないか。そう思うと、よくできてるよな。
元店主
それに、私はホントよかったと思ったんです、今回、杏子ちゃんがさやかちゃんと仲良さそうに暮らしてて。いや、前作ではあまりに杏子ちゃんが可哀相じゃないですか。さやかちゃんのために死んだのに、結局最後までさやかちゃんは心を開いてくれなくて。だから、今回はほんとに、よかったね、杏子ちゃんって・・・(涙ぐむ)。
ヤマネ
・・・・・・ケンタロウさん、やばいですよ。2次元の世界に行っちゃったんですか?帰ってこれなくなりますよ。だいたい、“ほむら”の事を“ほむらちゃん”とか、ちゃんづけで呼ぶのとか、相当やばい感じ。
元店主
えー、そうかなー。ほむら、とか呼び捨てにするのもやばくない?オレの女、みたいで。まぁ、ほむらちゃんに関しては、“ほむほむ”と呼ばなければオッケーなんだよ。オタクな人々は“ほむほむ”と呼んでるみたいだからね。
マツヤマ
ほむほむ!・・・うわー、そらやばいわ。ところでオレはまどかがいいと思ってるんだけど、ケンタロウさんは、ほむらちゃんかと思いきや、杏子ちゃんだったの?
元店主
いえ、私は断然“ほむほむ推し”です。
マツヤマ&ヤマネ
ほむほむ言うてるやないか!
元店主
・・・・・・では、次回に続きます。
マツヤマ&ヤマネ
えー!続くのかよ!!!

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