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2013年08月04日(Sun)

「風立ちぬ」 強制起訴シリーズ

起訴者:ヤマネ

強制起訴シリーズ31弾

出た!いまや日本の国民的作家・宮崎駿の新作!
巷では大騒ぎだが、強制起訴メンバーの周りではそんな事は全くなく・・・。というのも、元店主&マツヤマの二人が大のジブリ嫌いなのである。たったひとり、孤独にジブリ映画を見続けるヤマネ。えーい!二人にも強制的にジブリを見せたれー!と、今月の課題はこの映画になったのであった。さて、映画の内容は・・・
「零戦の設計者堀越二郎とイタリアの先輩ジャンニ・カプローニとの同じ志を持つ者の時空を超えた友情」を描くとともに「いくたびもの挫折をこえて少年の日の夢にむかい力を尽すふたり」の姿を描くものである。プラス、堀辰雄の「風立ちぬ」強引ミックス!
みんな、どうだったのかなぁ?

ヤマネ
んー。設計はセンス! 創造的時間は10年!とか・・・。きっつー。・・・でも、お二人がなんと言おうと、どんなに貶そうと、いくらバカにしようと、ボクにとっては傑作ですからっ!
マツヤマ
んー、めちゃくちゃ、というほどじゃないけど、まあー、良かったよ。
ヤマネ
へ?そ、そうなんですか。・・・ジブリヘイターのケンタロウさんは?
元店主
これがねー。・・・・・・良かった。
ヤマネ
おお!意外ー!・・・ピシューン・・・な〜んだあ〜、二人とも、緊張させないで下さいよ! まったくもうー、そうでしょう、そうでしょう、なかなかに良かったでしょうよ、えー、まったく、どうだこら、ってんだ!へへん。・・・動く絵の力をズガーン!!!と感じませんでしたか?
元店主
そうだね。実は、冒頭の夢のシーンからグッと引き込まれた。とにかく飛行機の飛翔シーンが官能的というか、なんというか、気持ちいい!
ヤマネ
そうそう!夢の飛行はまさに夢のような気分。これからアニメが動き出すよーってなワクワク感に溢れてますよね!素晴らしいオープニング!
マツヤマ
そのシーン、オレは別に感動はなかったな。カプローニの飛行機がゆっくり飛ぶシーンの方が良かったし、それよりもむしろ停まっている飛行機の描き方にすごいこだわりを感じたなぁ。とくにドイツの飛行機の見せ方はカッコよかったし、素描感って言うのかな、そんなのがあって、日本やイタリアのとは違う描き方から敬意のようなものを感じたね。
ヤマネ
飛行機に対する拘りが半端じゃないですからね。宮崎駿が飛行機や兵器を描いてきた熱量と習熟には誰がどうやっても追いつけない域でしょう。しかも、内部の部品の一つ一つまで理解して描いているように感じるんですよねー。「飛べ、フェニックス」のプラモデル設計士みたいに、飛行機を設計出来てしまうんじゃないかと思うぐらい。

*注: 砂漠に不時着した飛行機を再び飛び立たせるために、乗りあわせていた飛行機プラモデルを作っている会社の社員だった一人の男が、その他全員に「飛行機の設計士」だと騙して修理を手伝わせる話

元店主
確かに絵も良かった。私は基本、ジブリの絵は好きじゃないんだけど、今回はなんか懐かしーい感じがして。子供のころに見ていた「アルプスの少女ハイジ」とか、「未来少年コナン」とか、そんな感じ。
マツヤマ
オレはジブリは「トトロ」「ポニョ」「カリオストロの城」くらいしかみてなくて、それも記憶不十分なんだけどな。
ヤマネ
少なく、しかも偏ってますね。
マツヤマ
「トトロ」「ポニョ」は子供と一緒に最近みたのであって、実際にはジブリを殆ど見て来なかったんだけど、「カリオストロ」に近い絵の雰囲気を感じたかな。
ヤマネ
「記憶不十分」って言ってますやんっ!大丈夫ですか。「カリオストロ」最高ですよね!
マツヤマ
ちなみに「カリオストロ」は「みんな心のキレイな人ね」的な終わり方が当時も気持ち悪いと思って観てたよ。
元店主
確かに、善人しか出て来なかった印象が。
ヤマネ
がく。もー、二人とも。その直前に大時計でカリオストロ伯爵殺されてますやん。言いたいことはわかりますけど・・・。ちなみにあのドイツの飛行機のシーンはギガントでしょ!あの威圧感。ボクは宮崎アニメの中で一番好きなのは「未来少年コナン」なので、ギガント登場イエーイ!と思って興奮しました。
マツヤマ
ギガントって、・・・ナウシカ?
ヤマネ
だから、「コナン」ですって!それにしても、宮崎アニメは風景と動きの表現が凄いと思いませんか。実写のカメラではとらえてしまう風景、背景をアニメでは意図的に消せますでしょう、それに、見せたいものを強調して見せる、っていう「ウソ」の部分、宮崎駿は「ゆらぎ」と呼んでたと思いますが、ウソを混ぜるバランスがめちゃくちゃに巧いと思うんです。
マツヤマ
それってどのアニメもそういうもんじゃないのか?
ヤマネ
人によって随分違うと思いますね。現実的にはありえない動きも、表現としてリアルに感じさせるためにはどんどん取り入れる。子供の時に大きいものを見上げた時の感覚って、普通にカメラでとらえても伝わらないでしょうけど、誇張して描いて、まわりの背景も好きなように操作してドーンと出してやれば、昔あった、この感じ!というのが出てくるんですよ。特に今回は自分が好きなものを描いて、自由に作ってる印象で、懐かしいし、うまくいってますよね。
元店主
私がジブリがダメと思う時に思い浮かべるのは、「千と千尋」なんだけど、あれと絵や表現がちょっと違うじゃない?とても同じものに思えないんだけど。
ヤマネ
はい。「千と千尋」はCGとかも使ってるし、ちょっと雰囲気は違いますよね。今回は全部手描き・・・というか、アナログ回帰なんですよ。音も人声だし。それが、懐かしい感じに繋がってるんじゃないですか。
元店主
なるほど。確かに、音も凄くよかった。・・・あと、「千と千尋」は話がヌルくてヌルくて、見て居て脱力するばっかりだったけど、今回のはむしろ“軽い”。この軽さは堀辰雄、とか、コクトーなんかに通じるもので、ヌルさの対極にあると思うんだ。ポン、ポン、ポンと、あまり説明もなく時間が飛んでいくのもよかったし、夢と現実の交差のさせ方もみごと。一歩間違えばヌルさに堕するけど、その一歩手前で踏みとどまって、見事な軽味が出ている。この違いは大きいと思うけどね。
ヤマネ
”軽い”というのは、この映画にぴったりの表現ですねー。
元店主
飛行機のシーンはもちろんだけど、人が入り乱れるモブシーン、それと煙草を吸うシーンが特に良かった。動く絵の快感を感じた。これはね、大人向けとか言われてるみたいだけど、子供こそ見た方が良いと思うよ。
マツヤマ
煙草は印象的だったな。宮崎が文章で書いていることも面白いよな。
「火を知らないでしょう。亭主が煙草を吸わなかったら、ライターもないしマッチもない。そういう人間がこの世界で生きていけると思いますか。無理ですよ」ってね。
火からは恐怖や危険を知ることも出来るけど、安らぎとか落ち着き、または興奮など、人間の様々な潜在意識を呼び覚ますことが出来るよね。ガスコンロかIHか、白熱球がいいか、LEDがいいか、とかね、色々考えてしまうよな。とにかくタバコを吸うシーンを丁寧に描いているのはそういう思いがあるのかな。ないか?!
ヤマネ
ははは。単にヘビースモーカーだからでしょう。でも、あまりに火に触れない生活になってきていますからね。チャッカマンですら怖がってる人もいるぐらいだし。ボクも本当はIHよりガスコンロの方が好きなので、家を建てる人には基本ガスをすすめますが。白熱球をLEDに全部変えるっていう商売優先の発想も寂しいですし。大体、LEDの寿命は長い、とか言って売り出してますけど、あんなん数年で有機ELの照明にとって代わられると思うんですよね。谷間の商品だから慌てて買う必要なし!
元店主
そうなの?
ヤマネ
多分。ま、そういう話も含めて宮崎駿は懐かしさへの人の欲求、その周辺の感じを描くのがうまいわけですね。昔気質の職人肌だから。こんな映画作れるの、この時代生きていた人だけでしょ。
マツヤマ
関東大震災のシーンはちゃんと怖く描いていたことにも感心したな。実際、凄く恐いし。それと、震災によって「機関車が爆発するぞー!」って言ってる人に対して「爆発なんてしない」と言うのちょっと面白かった。宮崎駿のことはほとんど知らなかったから、どちらかといえば「爆発するぞー」って言うタイプの人だと思い込んでいたからね。これは原発事故のことも多少絡んでいるんじゃないかと思うけど考え過ぎ?
ヤマネ
考え過ぎです!でも、マツヤマさん得意の深読みなんで、バンバンやって下さい。
マツヤマ
原発が原爆みたいに爆発すると思い込んでいた人はけっこう多かったと思うし、今もそういう人はいるんじゃないかな。でも構造がまるで違うんだよね。原爆みたいに爆発はしない、と。何でも信じてしまう人や、一部の左翼は、思想が暴走しがちだけど、そこは冷静になるべきだ、ということかな。技術者の発想、というか。
ヤマネ
ちなみに宮崎駿は実際は右も左も両極端を持ち合わせているような個人的印象ですけど、どうなんでしょう。最近も慰安婦発言でネットでは凄く叩かれてますが、この人作品だけでなく、発言も好き放題なんですよね。そういうとこも魅力かもしれないけど。
元店主
あと私が好きなシーンは、病院から抜け出てきた菜穂子と、二郎が結婚するシーン。あれはいい。感動的で、儀式というものの力を感じさせる。事実婚とかヌルいこと言ってる連中に見てほしい(笑)。
ヤマネ
ヌルいこと言ってる連中って(笑)。そういう人はこれ見ても何にも思わないと思うんですけど・・。昔は違うなーぐらいの感想しか。
元店主
まぁ、そうだろうね。実際、現代の結婚式がこんなに感動的か、と言われたら、やっぱ疑問だしね。・・・・それから、堀越二郎のキャラがよかった。随分と話題になってる声(庵野秀明)は・・・別に気にならなかったなぁ。下手だなぁ、棒読みだなぁ、と思う所はあったけど、逆に結構いいなぁ、と思う所も多々あったし。
マツヤマ
オレはダメだったな。棒読みなのはオレはぜんぜんOK。日常会話が棒読みなヤツってけっこういるから。でも声と顔がぜんぜん合ってない。堀越二郎を変人として描くなら多少は分かるけど、ほとんどそうは描いてないし。あのキャラクターが恋愛するのは、どうもしっくり来ないな。
ヤマネ
こればっかりはボクも声に馴染むのに1時間半ぐらいかかりました。
マツヤマ
ほとんど映画終わってしまうだろ!・・・宮崎駿は「アニメ声が嫌い」らしいけど、声優さんにもいろいろいるだろうし、嫌いだからといって、タレントのネームバリューにこだわるのはどうかと思う。今回はまったく出演者を調べずに行ったから良かったけど、なんとなく雰囲気を似せてる感じがするね、主人公以外は。とくにカプローニの佇まいと野村萬斎がうまく被るし。
ヤマネ
庵野を声優として使ったことには、ジブリと庵野を近づけておきたい鈴木敏夫の嫌らしい戦略があるような気がしてならないんですよねー。あー、やだやだ!
元店主
う〜ん、そこらはちょっとよく分かりませんねー。私的には、庵野の起用は純粋に作品的なものだと思うし、それなりに成功してると思います。なんでみんながそこまで嫌がるのか、そちらの方が不思議です。
マツヤマ
まぁ、それはいいや。で、西島が声やってた同僚の本庄って人が堀越(真ん中)の右隣だったとしたら納得だよね。この人いちばんジブリ顔! 130804.jpgでも、宮崎アニメの表情の作り方はやっぱり苦手。泣くシーンは下手くそだと思う。
ヤマネ
あー、確かに右隣の人、ジブリ顔だわ。
マツヤマ
あと、肝心の零戦を飛ばすシーンが無いことにはちょっと不満。宮崎駿の過去の発言集で、ジブリ作品に悪人を出さないことについて「本当に愚かで、描くにも値しない人間を、僕らは苦労して描く必要なんてないですよ〜 」と言っているけど、零戦が活躍するシーン、すなわち戦争がイコール描きたくない愚かなもの、なのか?悪人か善人か?愚かかそうでないかは主観の問題だと思うし、どれも似たようなものだとオレは思う。要するに「描きたいものだけ描く」という、ごくあたり前のことを言ってるだけだろう。
元店主
確かに技術的な事があまり描かれていなかったのが意外でしたね。零戦だってもっと描けばいいのに。零戦は、当時完全な後進国だった日本が、いきなり世界最高水準を上回る飛行機を作ってしまった、という奇跡の飛行機なんだけど、今の若い人に、説明なしに分かるかなぁ、その凄さが。堀越二郎の天才が、いまひとつ描かれてないのが残念。
ヤマネ
ボクは設計者という視点でみていましたが、十二分に天才的に描かれていたと思うんですけど・・・、一般人には伝わりにくいですかね、成果物を省略してしまうと。
元店主
堀越二郎は変人、マニアックで、今で言えばオタク的なのかもしれないけれど、道徳の背骨がしっかりしている。それは冒頭の弱いものイジメをする連中と闘う所とか、礼儀正しい所に描かれている。そこが圧倒的にいいんだよねー。今いないもん、こんな人。っていうか、ここに出て来る様な人たちって、居ないよね、今。ファンタジー入ってるけど・・・出て来る人たちがみんな気持ちいいよ。
ヤマネ
出てくる人がみんないい人なのは、マツヤマさんはNGで、ケンタロウさんは良かったんですね!実際はマツヤマさんはいい人だと思いますけど。
マツヤマ
何いってんだよ。
ヤマネ
我々三人の中では、顔的にもキャラ的にもジブリアニメに出てきそうなのはマツヤマさんですよ。
元店主
確かに。だってさっきの写真の一番左端にマツヤマさんぽい人いませんでした?
マツヤマ
全然違うだろ!そもそもこれはジブリと関係ある写真でもないしさ。
ヤマネ
髪型でごまかしてるだけなんじゃないですか。一度マツヤマさんやってみましょうよ、ジブリカット。
マツヤマ
カーーット!
元店主
はい。では8月の強制起訴作品ですが・・・、「ムービー43」です!
マツヤマ
なんだ、それ。誰の作品?
元店主
ファレリー兄弟・・・じゃなくて、兄貴の方の新作ですよ!超豪華なキャスト・・・の割に、全米では大コケ!との事で、、正に強制起訴に相応しいでしょう。
ヤマネ
わー、またしても大いなる賭けですねー、てな事で、また来月!

Comments

投稿者 ウメドン・ゴダール : 2013年08月09日 23:06

ではちょっとだけ。
観てきました!まあまあでした。
自分は設計者だから、ちょっとでも変なところがあったら批判してやろうと思って観たんやけど
サラっと流された感じ。
ゼロ戦の構造のこととか、ドイツやイタリアの戦闘機の違いとかもっともっと聞けるのかなって
期待してたし聞きたかったけどそれほどでもなくて残念。
鯖の骨の話とか、リベットの空気抵抗の話とか。もうちょい聞きたかった!
それとどういう失敗があって最終形態のゼロ戦に近づけていったのか?
そこ聞きたかってんけどな・・・自分の仕事にも参考にできるから。
あと、予告編見たときめっちゃ戦争の話(空襲とか空中戦)とか出てくるんかなあって思ってたけど
あんましでてこなかったし、え?最後これで終わんの?ってかんじで
なんか意外とあっさりしてるなっていうのが印象。

面白かったのは、製図する場面。
製図する場面で、チラっと映った青紙や雲定規とかドラフターやら・・・
(字消し盤は無かったな)
今、俺の会社では全く使わない。俺は大学で、ちょっと使った程度。
朝から晩まで3DCADと睨めっこしてる俺には、なんか新鮮だったし、カッコええなって思いました。
タバコを吸いながら図面をひいたり、図面に腕の汗が付いてべた付いたり、にじんだりするから長袖。
計算尺は常備。計算尺俺は使い方わからん・・・
チラッと映った堀越の計算メモ。
あの計算式でどうやって強度計算すんねん。あんまし関係ないんじゃないか?と
にツッコミたくなる式が映ったりしたけど・・・

昼休み現場に行って「設計課の人が来てくれるのは嬉しいですよ」
って堀越が言われていたのが印象的やった。昔の三菱はそうだったのかな?
ホントにそんなふうに思ってる現場の人いるんやろうか?って思いました。
今の俺んとこはそんなかんじじゃないしなあ・・・

投稿者 元店主 : 2013年08月10日 01:35

ウメドンへ

うーむ、こないだの「グランドマスター」のコメントとか、日頃のウメドンの様々な映画の感想から推測するに、ウメドンはフィクション=創作というものがイマイチ分かってないんじゃないかなぁ。
ウメドンのこのコメント、まるでドキュメンタリー映画の感想だよ。ドキュメンタリーとフィクションて違うんだけど、それ分かってる?
フィクションとはウソをついて騙すもんなんだよ。語り=騙り、とか言ってね。で、なんでウソをつくのかというと、それは真実を表現するため。フィクションは現実を表現するのでなく、真実を表現するものなの(一応ね)。
むろん、ドキュメンタリー映画も、真実を表現するためにはウソをつく=編集などでいじる、けれども、描かれるのはあくまで現実の世界。フィクションには、この現実の次元がほとんどないから。
ところが、ウメドンはどうもこの現実の次元で、この「風立ちぬ」というフィクション(しかもアニメ)作品を観ているように思えるんだよねぇ。

この映画で設計の話に注目するなら、やっぱりあの、ペンでシャーッと紙に書く所でしょう。設計図にしろ、計算式にしろ。ペンでものを書く、という事の快感がはっきりと描かれている。ものを作る、という事の原初的な快感がそこに表現されている。これは裏を返せば、なんでもコンピューターで、手仕事の快感・大切さを忘れがちな現在の状況を批判しているとも言える。
こういった所をみるべきでしょう。計算式がなんだとか、そんな事はどうでもいいの。

もしウメドンが零戦の技術的な事をもっと知りたいのなら、堀越二郎が自分で書いた本が今でも売ってるから、それを買って読みなさい。
仕事の役に立つかもよ。

投稿者 uno : 2013年08月11日 10:38

上映初日に見に行きました。前情報はゼロ。恥ずかしながら、零戦に関する映画という事さえ知りませんでした。

実は、この作品を見る前日、会社で資料の整理をしていたら、昭和5年やら10年の設計図(主に計算式と数値)が出て来て、その図や文字の美しさに見惚れていたところだったので、映画と設計図を見た体験とが強烈にリンクしました。
今だとパソコンで簡単に計算出来るものも、昔は覚悟をもって人の手で行われていたことを改めて感じます。
そして丁寧に書かれた文字には思想がある。

庵野秀明の声ですが、作品に合っていたと思います。私は好き。宮崎駿が庵野秀明の何処かに堀越二郎を見出したのではないのかな、なんて思いながら見ていました。
そういえば、庵野秀明が総監督のNHKアニメ「ふしぎの海のナディア」(原作は海底二万里)の主人公ジャンは飛行機の開発をしていたんですよ。

二郎と菜穂子の結婚式が良かったですね。特に黒川夫人の真剣な中にも茶目っ気のある振る舞いは好きな場面です。
床の菜穂子と手を繋いで、片手でタバコを吸いつつ、図面を描く二郎。この場面にもグッときました。

そしてエンディングの「ひこうき雲」うわー、それどないやねん!とか思いつつ、しっかり泣いた。

鼎談でも話されてますが、作品の印象は軽やか。登場人物の実直さが気持ち良かった。

いやあ、面白かった!

投稿者 マツヤマ : 2013年08月14日 21:27

ウメドンへ

「設計課の人が来てくれるのは嬉しいですよ」
っていうセリフに「ホントにそんなふうに思ってる現場の人いるんやろうか?」
って思うのは分かる気がするね。
昔は設計者も現場の人間もプロ意識があって、共に同じように完成を見届けたいという気持ちがあったんだろうけど、今はどちらも与えられたことをやるだけで、それ以上のことは考えない、必要以上のことはやりたくない、という風潮のように思える。設計者がやたらエリートぶっていたり、自信過剰で自分の設計に疑問を持つことがなかったり、作業者を見下していたり、ということはないかな? 作業者に対して、自分の設計をカタチにしてくれる人としての敬意を持って現場に行って接したら、いつかは「嬉しい」と思ってもらえるようになるかもしれないよね。


ウノピへ

庵野秀明の声は、オレにはどうもしっくりこなかったし、やっぱりキャラに合わない、作品の中ですごく浮いているように聞こえたねえ。オレと他の人が同じ声に聞こえていないかもしれないし、五感の問題は難しいと思うが。
それはそうと、今日のヤフーニュースで、多くの喫煙シーンが「子供に悪影響」だと「日本禁煙学会」とやらが苦言を呈しているとか。バカだねぇ。そういう良識人ぶったヒステリーが、いちばん子供に悪影響だっつうの。今どきタバコなんかより、スマホのラインとかゲームとかの方が子供にも大人にも悪影響だと思うよ。

投稿者 おいしん : 2013年08月15日 01:36

久しぶりにジブリ見ました。

いや〜、めっちゃ良かったですね!

年寄りが作った映画って感じで、世の儚さを哀れむ気持ちをすごく感じました。

仕事と妻の余命に追われる主人公、西洋との技術の差に焦る本庄。時間に限りがある設定は、美しい話を作るのに重要な要素でしょう。しかしあれほど今を大切に生きている主人公たちを描けるのは、作り手が色々な意味で喪失感を味わってきたからこそだろうなあと。

前半で「君はピラミッドのある世界と、ない世界とどちらがいいか?」との問いに「ピラミッドのある世界がいい」と語らせるのは、誰かの犠牲を伴っても、美しい物を築き上げたいとの気持ちを肯定していて、素直な気持ちで脚本書いてるなーと、共感しました。

そういう素直な気持ちをへ理屈こねて否定したり、ごまかしたりする奴が多いですからね。宮崎駿もそういうめんどくさい爺さんだと思っていたので、ちょっと意外。

とにかく美しい、気持ちいいシーンが多い映画でした。挙式のシーンは慎ましくも、神聖な感じがするし、タバコを吸うシーンもいい。特にホテルのベランダで堀越がマッチを刷る所作は良かった。
カプローニとの夢のシーンも、愉快な気持ちになる反面、浮き世は夢幻のごとくなりけりという感じを強調しているように感じて、切なくもなりました。

色んな経験をしてきた人の人生観が反映された作品って、自分の考えと合う合わない関係なく面白いなあと思うので、これからもこういう人間臭い映画をこれからも作ってくれるといいなあ。

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