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2011年06月08日(Wed)

「アンノウン」 []

Text by Matsuyama

植物学者であるマーティン・ハリス博士はバイオテクノロジーの国際学会に出席するため、夫婦でアメリカからドイツへやって来たが、交通事故で4日間意識を失い、妻の待つホテルへ戻ると「アンタなんか知らんよ?」と言われる。さらには同じ名前で別人のダンナもいる。「ほな、オレは誰やねん?」。

予告を見て心が躍った。「フォーガットン」「フライトプラン」「ネクスト」etc、筆者の愛すべきトンデモ系サスペンスか?。あくまでも予告を見た時点でそう思っただけだが…。
確かに、外見的にはそういった雰囲気を身にまとっている。主演は「シンドラーのリスト」よりも「ダークマン」のB級路線が払拭できないリーアム・ニーソンだ。 偶然か、それとも筆者の勘違いかもしれないが、下から顔面を捉える照明の使い方は「ダークマン」を思い出した。

110608-01.png「ダークマン」若き日のリーアム。

110608-02.png「アンノウン」の1場面。背中のラインから醸し出されるB級臭。

110608-03.jpgこちらは「96時間」より。さらにB級な背中ライン。

さてこの作品、外見的にはB級ではあるが、では中身はどうかというと、A級とまではいえないものの、なかなかの快作ではなかったか。
「ツッコミどころ」とあえて思わせて、それがちゃんと計算された後の伏線になっているところにイチイチ感心させられた。
「オチが読めちゃうよ」と舐めてかかれば、いい感じで裏切ってくれるし、謎解きは「シャッター・アイランド」よりも解き甲斐があり、構造は「インセプション」よりも精確だ。

最近の「オチが読めちゃう」映画といえば「ツーリスト」。ただの数学教師(ジョニー・デップ)が誰かの身代わりになったという設定でも、その大物であるはず誰かに匹敵するキャストが見当たらないから、けっきょく予告編の段階でオチを見抜かれてしまう。それは「シークレット・ウィンドウ」でも同じで、ジョニー・デップ“レベル”ではこのようなサスペンスは向かないということだ。とはいっても「ツーリスト」はよく出来ていたと思う。「オチが読める」ことが失敗ではないのだ。

110608-04.jpgどう見たって一般人のたたずまいではない。

「ツーリスト」といえば、主人公を男女逆バージョンにすれば設定がよく似ているのが去年公開された「ナイト & デイ」で、「ツーリスト」にあって「ナイト & デイ」にないものといえば主演女優のお色気だ。

110608-05.png 「ツーリスト」主演のアンジー。

では、「ナイト & デイ」にあって「ツーリスト」ないものは何かというと、それは平和的アイテムだ。 最近の映画には重要なアイテムでもある。
「ツーリスト」では警察とギャングによる大物犯罪者の争奪戦に終止したが、「ナイト & デイ」では手のひらサイズの永久機関(ってありえないけど)「ゼファー(という名の永久バッテリー)」をCIAとマフィアが取り合っていた。
そして、その平和的アイテムが「アンノウン」にはある。それをめぐる強欲で残忍なアメリカ人と、紳士的で平和主義のイスラム国の王子という設定がとても痛快だった。

学会のために夫婦でアメリカからヨーロッパを訪れ、あるトラブルから夫は異国の地で路頭に迷い、もう一人の主人公である助っ人女性が登場という設定は「フランティック(1988年)」とよく似ていて、リーアムはハリソン・フォードのパチもんというふうにも見える(失礼)。

110608-06.jpg助っ人エマニエル・セニエはポランスキー監督の奥さん。

交通事故後のシャッフルは元に戻って、現地で出会った女性とチャンチャン、は「ラッキーナンバ−7(2006年)」とよく似ているが、スレヴィン(ジョシュ・ハートネット)とマーティン(リーアム)の違いは、確信犯かどうかというところ。

110608-07.jpg「ラッキーナンバ−7」のルーシー・リューと奥目のハッちゃん。

ということで、ここに挙げたいくつかのサスペンス作品に、ここ数年のナチス時代〜壁崩壊前後のドイツ作品をスパイスとして加えた、とても美味しい作品。といっても一流レストランのそれではなく…。

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