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2010年03月24日(Wed)

「渇き」 []

Text by Matsuyama

「ウィルス」、「出血」、「アフリカ」、そして原題の「コウモリ」をキーワードに検索すると「エボラ出血熱」がページを埋め尽くす。
エボラ、エイズ、サーズ、鳥&豚インフルエンザなど、70年代以降の新型ウィルスは人間によって開発されたものだとオレは思っている。
「ナイロビの蜂(2005年)」では、「命が安い(劇中の台詞で)」というアフリカ貧困層への新薬の治験(人体実験)が行なわれていた。
欧米から見れば、命の安さはアフリカ人もアジア人(含日本人)もさほど変わりはないのではないだろうか。
そういう意味で、ポン・ジュノ作品「グエムル〜漢江の怪物〜(2006年)」と「渇き」は共通のテーマを抱えていると思うのだ。ただし、あちらでのソン・ガンホは三枚目、こっちは二枚目(首から下)という大きな違いがあるが。

さて、ソン・ガンホ扮する神父サンヒョンだが、「祈ること」では重病患者を救うことができないということに憤りを感じ、アフリカ某所にある極秘研究所で生死を懸けた実験に身を投じる。そして奇跡の生還を遂げたサンヒョンは聖者として崇められたのだが…

サンヒョンは生還したと同時に聖者になったのではなく、たとえバンパイアになったとしても、神父のときよりもより人間らしくなったのだ。下半身は性欲に支配され、ストローを吸うような、またはペットボトルをわしづかみにするような“血”の飲み方は、飢えに堪えられない現代人のようでもある。

昏睡患者の輸血の管をはずして血液をいただいたサンヒョンは「(その患者の意識があれば)親切に血を分けてくれるはずだ」と言うが、それはわかるはずがないのだ。たとえ命が救われたとしても、人々は飽食のみにしか生きられない。生にしがみつく人間は欲深いのかもしれない。それ以前に、生きるために他人の血液をもらっているという時点で両者の立場は同じとも言える。

バンパイアは闇の世界から人間を支配する。去年に観た「30デイズ・ナイト」(「渇き」とラストがソックリ)でも30日間太陽が昇らないアメリカの実在の地域で、入れ食い状態のバンパイアたちは闇の世界を支配している。「バンパイア=闇の支配者」とは「裏の世界」のことであり、庶民の目に触れることがない支配者の比喩として見ることもできる。

支配者たちはある嘘を言う。それは「人類の未来は明るい」ということ。いくら壁を白く塗ってみても、支配者がつくる明るい未来はまやかしであって、本当の明るい未来とは「支配者が存在不可能な世界」なのである。

「30デイズ・ナイト」でも「渇き」でも、朝日は一層明るく描かれる。明るい未来は近いのかもしれない。

Comments

投稿者 こうのすけ : 2010年03月29日 20:07

ソン・ガンホさんの横顔が松山さんに似ていて、
思わず笑ってしまったことをとりあえずご報告させて頂きます。

終盤、障害者テント村で懐中電灯に照らされたときのソン・ガンホさん演技がサイコーでありました。

投稿者 マツヤマ : 2010年04月02日 10:20

こうのすけさん

いつもありがとうございます

横顔がソン・ガンホかぁ…
でもユン・ジェムン(知らなくていいけど)じゃなくて良かった。

でもソン・ガンホは最高ですね。
グッド・バッド・ウィアードのDVDボックス買っちゃいました!

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