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2006年10月18日(Wed)

キンキー・ブーツ ☆☆☆★★★

Text by BABA

 近畿一(いち)のブーツを作るのは誰だ!? ブーツ・バトル近畿大会の全貌を描く、……という、真っ赤なウソはおいといて、幸せへと導くブーツ、お作りします。ババン!

(以下は、田口トモロヲの声色でお読み下さい)

 イギリス、ノーサンプトン、プライス工場。120年の歴史を持つ靴工場だった。

 4代目は若き社長、チャーリー・プライスだった。

 イギリスを「ポンド高」が襲った。安もんの粗悪品が、市場に出回った。

 昔ながらの「一生もん」の靴を作るプライス工場は、大量の在庫を抱えた。倒産寸前だった。

 チャーリー社長は、職人15人を解雇した。

 「こんな思いは二度とごめんだ」。苦い決断だった。

 工場の売却話がもちあがっていた。

 そんなチャーリーの前に、一人の「男」が現れた。ソーホーのドラァグ・クイーン、ローラだった。

 ローラの、女物ブーツのヒールが折れた。ローラは巨漢の元ボクサーだった。

 それを見てチャーリーは、ひらめいた。

 「ドラァグ・クイーン用の頑丈な靴を作れば、すきま産業で生き残ることができる!」。

 ブーツづくりは難航した。

 夜を徹しての作業となった。

 これは、ノーサンプトンの靴工場が生き残りをかけて挑んだ、血と涙の物語である。プロジェクトX!!

 …みたいな?

 実話にもとづくお話ですが、そこはアングロサクソンの国の映画ですので(ですのか?)、もの凄い脚色がなされてますのでご注意下さい。

 実際のところは、老舗の靴メイカー、英国ブルックス社の若き社長が、ドラァグクイーンなブーツ製造に乗り出した…くらいが事実。映画の重要なキャラクターのローラは実在しない、とのこと。

 そうそう、ブルックス社といえば、自転車の皮サドルも有名ですね。そんなことはどうでもよくて、ブルックス社のドラァグな製品ラインは「ディヴァイン」という、いかにもなブランド名で展開されております。サイトを見てみればブーツのみならず「大人のオモチャ」風のグッズの数々。

 映画のように「不況に困り果ててニッチ(すきま)市場に乗り出した」というより、単に社長がそういうの好きなだけとちゃうん? と私は一人ごちました。

 懸命なる読者諸氏もご存知のように、「大人のオモチャ」は客の弱みにつけこむ粗悪品——パッケージを開けたら「こんなもん使いもんになるかい!」みたいな? ——が多い中にあって、老舗ブルックスが作る製品であれば、品質の良さは折り紙付き、そりゃ繁盛するに決まっている! って、そんな業界のことはよく知りませんが、サイトを眺めている内に、ついムラムラとポチってしまいそうになった私なのでした。ウソです。ウソですよ。

 と、いうわけでこの『キンキー・ブーツ』は、「ディヴァイン」の販促映画としてバチグンの効果を上げたことは想像にかたくない。『UDON』を見たら讃岐うどんを食べたくなるのと同じ。

 そんなことはどうでもいい。なんといっても、不況にあえぐ工場の一発逆転劇、『プロジェクトX』的骨格は、『フラガール』と共通するもの、そこんところが負け組=私の琴線に触れます。

 堅実・昔気質な工場と、世間のはみ出し者=ドラァグクイーンとの共闘関係が成立してしまうところに、グローバリズム、あるいは新自由主義といかに戦うべきか? 教訓的な戦術を見出した思いです。虐げられし者、社会のはみ出し者は団結すべし! …って、ドラァグクイーンの方々は自分を「はみ出し者」とは決して思わず、「自分が世界の中心」との認識なのかもしれませんが。

 ドラァグクイーンが工場でキンキー(変態)ブーツのデザインをする。粗暴な労働者は、彼女(?)に最低限の敬意を払わず差別的言動をくりかえす。が、プロジェクトが進行し、共闘する者の友情が生まれる。

 また、「残業なんて嫌!」と権利をふりかざす賃労働者も、社長の情熱に応えて進んで徹夜で作業する。お約束の展開なれど、人間はプロジェクトの中でこそ輝くのだ、との真実が描かれています。

 ってよくわかりませんが、何事かを成さんとするプロジェクトを描く映画群。それに私は「プロジェクト・ムーヴィー」という新ジャンル名を与えよう。『フラガール』『南の島に雪が降る』…などなど。『七人の侍』は「プロジェクト・ムーヴィー」の古典と言えるであろう。

 …と、さっぱり要領の得ない話が続いておりますが、ともあれドラァグクイーン=ローラのキャラクター、吐かれるセリフの数々が素晴らしいし、演じるキウェテル・エジョホー最高です。ってか、オモロ過ぎる!

 負け組、はみ出し者にスポットを当てるイギリス映画は最高です。バチグンのオススメ。

公式サイト
http://www.movies.co.jp/kinkyboots/

Comments

投稿者 Ryo : 2006年10月19日 12:59

ローラ役の俳優、インサイダーの刑事役の人ですよね。
まさかあんなに芸達者だったとは・・・

作るものが変わってもそこは職人。素材や工法についてアイディアを出すシーンは面白くもあり、また感動するシーンでもありました。

これも「漢」って感じのキャラクタが多く、非常に格好良かったです。

投稿者 baba : 2006年10月23日 20:55

>Ryoさん

いつもコメントありがとうございます! 嬉しいです。
エジョホーさんは、オドレイ・トゥトゥと共演した『堕天使のパスポート』ってのもグンバツによかった! のですが、まさかドラァグな素質があったとは…。

靴作りの工程やノウハウを割と丁寧に描いていたのもよかったですね。イギリス職人気質みたいなものも良い感じ。

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