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2005年11月24日(Thu)

エリザベスタウン ☆☆☆★★★

Text by BABA

 すべてを失った僕を、待っている場所があった——。ババーン!! 待望(私だけ?)、キャメロン・クロウ監督の新作。

 キャメロン・クロウ監督と申しますと、半自伝的映画『あの頃、ペニー・レインと』で描かれたように、元「ローリングストーン」誌の若きライター、その後、年齢詐称してハイスクールに潜入、小説『初体験リッジモンド・ハイ』を書き、その映画化作品の脚本を担当。『セイ・エニシング』で映画監督デヴュー、奥さんは80年代にヒットを飛ばした美人姉妹ロックバンド“ハート”のナンシー・ウィルソンだったりして、その作品にはロックに対する愛が満ちあふれるのが特質のひとつ。

 次に、キャメロン・クロウはビリー・ワイルダーの大ファン、ワイルダーに『ザ・エージェント』への出演依頼をして断られたり、『ワイルダーならどうする?』という、ロング・インタビュー本を著したり、そして映画はワイルダー的な、気の利いたセリフ満載、トンチも横溢。

 さらに、元ライターでありますからか、面白い文章が書ける! 映画も、たいてい主人公のモノローグで語られ、そこにロックンロールが流される「キャメロン・クロウ・タッチ」というものが出来上がっており、今回の『エリザベスタウン』も、そんなキャメロン・クロウの「文体」が炸裂、色々ひっかかるところはありつつ、好き者には堪えられないのでありました。

 どこにひっかかるかというと、オーランド・ブルーム扮する主人公ドリュー、ナイキ風の巨大スニーカー会社のエリート・デザイナー、ところが満を持して開発した新製品が大コケ、返品の山、社長(兼FAG会長・アレック・ボールドウィン)は、「チミチミ、チミは10億ドルの損失を会社に与えたのだよ!」と、損害の責任はすべてドリューにあり、みたいなことを言いますが、私は「そんなヤツぁ、おらへんでー」と、大木こだまの声色で言いたい。

 それはともかくドリューは、自殺を試みたりしている間に、父死す、との報を受け急遽、故郷ケンタッキーは“エリザベスタウン”へ向かう機上の人となります。

 そこでフライト・アテンダントのクレア(キルスティン・ダンスト)と知り合うのですけれど、このクレアがまた、どえらいスクリューボールなキャラクター、それはよいとして、ドリューはエリザベスタウンで葬儀やら何やら親戚一同バタバタ、そのうちクレアと再会、「受話器持つ手がシビれたね」的な良い仲になるのですけど、ドリューはここに留まるわけにはいかないと、エリザベスタウンを出立します。

 その際、クレアはドリューにお手製のドライヴマップブックと、自家編集の音楽CD-Rを渡します。CD-Rはドライヴ中に聞くべし、どのタイミングで聞くかは本に指示してあり、立ち寄る場所にピッタリの選曲という凝りまくりの本なんですけど、ここで私はひっかかり。クレアは、いつ、そんな本を作るヒマがあったのか!? それともズッと用意していたとか? 再び大木こだまの声色で「そんなヤツぁ、おらんやろ?」と、腹の中で私語した。

 そんなひっかかりには目をつぶって、ちゅうかですね、この終盤の、アメリカ南部を発見する旅が素晴らしく気色よいです。

 ドリューは、マーティン・ルーサー・キング牧師が暗殺されたモーテルのバルコニーを訪れ、キング牧師が死の前夜に泊まった部屋が、そのまんま保存されているのを目撃する。そこで流れてくるのが、U2『プライド(イン・ザ・ネーム・オブ・ラヴ)』。

「一人の男が、愛の名においてやってきた。一人の男はやってきて、死んでった…愛の名、以外に何が必要だろうか!?」という、キング牧師をモチーフにした曲、元来、私もU2好きですから茫然と感動したのですが、その他、ハートランドをドライブしながら聴くブルースもかっちょよく、やはり、キャメロン・クロウもゴダールの影響下にあって、カッコいい映像とカッコいい音楽をカッコよく編集すれば、観客・私を喜ばせることができると知る者なのであった。

 でだ。ちょっと知ってる曲から、全然知らない曲まで、あちらこちらに色んな曲が流され、それぞれの歌詞はそのシーンにピッタリ! と言いたいところ、字幕担当は戸田奈津子氏! ババーン! もちろん! 歌詞をいちいち字幕にするなんて字幕の女王がするはずもなく、英語を聞き取れない私は、なんとも歯がゆいのでありました。今までのキャメロン・クロウ作品は、割と、丁寧に曲の歌詞が訳されていたような気がしますが…、気のせい?

 この終盤ドライブシーン、キャメロン・クロウにとっても、かつてないほど映像と曲が密接に共鳴し合う、ゴダール作品のように丹念に丁寧に構成されたものですので、歌詞の意味を知らずに見るのは勿体ない感じです。ですので、その他、エルトン・ジョン『父の銃』やらが収録されたサントラCDをまず買って、それぞれの歌詞の意味を脳髄にたたきこんで映画をご鑑賞いただくと、ひときわお楽しみいただけるかと存じます。

 それはともかく、ドリューの母親を演じるのはスーザン・サランドン、彼女こそがこの映画の最大の見どころ、夫の葬式後におこなわれる「ミッチを偲ぶ会」で、未亡人としてスピーチを披露するのですが……これが素晴らしいスピーチ! しかもスピーチを完全収録! はっきり行って、バランスを欠くことはなはだしいと思うのですけど、こればっかりはカットできない! という感じで大いに笑い、大いに泣いたのでした。

 さて。ドリューの失職と、クレアのキャラ設定に若干の引っかかりを覚えましたが、それはやはり、この物語が何かの寓話だからなのでしょう。

 考えてみるに、主人公ドリューとは、ウハウハボロ儲けしまくる「現在のアメリカ」、盛者必衰のことわり、いつかは破滅を迎えざるを得ない。そのとき、アメリカは「本当の、偉大なアメリカ」へと回帰するのであろう。

 そしてクレアとは「本当の、偉大なアメリカ」。いつでも、破滅した者を迎える用意があり、破滅者に「偉大なアメリカ」の歴史、ゆかりの地を訪ねるガイドツアーを用意する。ロックを生んだブルース、愛の名のみにおいて闘ったキング牧師、ETC…。破滅したアメリカ人が、「偉大なアメリカ」の歴史を学んだとき、彼は「偉大なアメリカ」の一部となるのだ…、なーんてなことを考えました。

 ともかく、キャメロン・クロウの語り口に酔う123分。典型的ラヴロマンスを期待するとガッカリでしょうがバチグンのオススメです。

☆☆☆★★★(☆= 20 点・★= 5 点)

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Comments

投稿者 はぐみ : 2005年11月28日 03:00

こんばんは。
いつかも書き込みしました。
しかし、エリザベスタウンは、まちがいなく私の中では
おもしろいのですが、オーリーだとかおにぎりみたいな
キルステン・ダンストのせいで、みんな勘違いしているような
気がしてなりません。
まぁ、そんなにあつくなる映画じゃないじゃん?っていわれれば
それでしまいですが。
さて、BABAさんははりーぽったーの新作はいかがでした?

投稿者 baba : 2005年11月30日 15:09

>はぐみ さん
『エリザベスタウン』、まちがいなく私の中でも面白かったです!
おにぎりみたいなキルスティン・ダンストですが、今回は『スパイダーマン2』よりだいぶんかわいかったんではないかな? と思うのでした。

でも、最後のドライブは熱くなりますよね!

そして、はりーぽッ太の新作は最高でした! ウソ。まだ見てませーん。

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