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2005年10月05日(Wed)

サマータイムマシンブルース ☆☆

Text by BABA

 YHEEEEEEE! BACK TO THE 昨日!!! ババーン! 世界で私だけが傑作と思っている『知子の場合』の本広克行監督・プロデュースの最新作は、高知県の田舎町の大学、SF研究会に突如タイムマシンが出現! どひゃー! というお話。

 ネタバレですがタイムマシンを手に入れたSF研究会の学生諸君は、「リモコンがこわれたのでエアコンが使えない!!」とどうでもいいことで騒いでおり、「昨日に戻ってこわれる以前のリモコンを取ってくれば万事オッケー?」てな具合に昨日へタイムトラベルするという、すったもんだの超くだらないお話でございます。

 つまりはトンチのヒネリぐあい、演出の才気、俳優さんの演技が面白さにとって決定的な要因。本広監督のチャレンジ精神に大いに感服いたしました。

 タイムマシンが登場するまでの拷問のような退屈さにも耐えつつ、SF研究会部員のかけあいもテンポよく、「お前らSF研究会のくせに、タイム・パラドックスも知らんのか!? 小学生でも知っとるで!」と現代学生の教養の欠如に憂国の念をいだきつつ、何とか最後まで寝ずに見られましたが、「寝惚け学生のひまつぶしをえんえん見てしまいました!」感にとらわれた私なのであった。というわけで、夏休みでヒマをもてあましまくっている学生さんには楽しく見ていただける作品かと存じます。

 まず、おおむね観客・私の予想の範囲内で物事が進行してしまうのはいかがなものか? そもそも「リモコン」をめぐるお話ですが、あなたがたはなぜそんなに「リモコン」にこだわりますか? そんなにエアーコンディショナーがありがたいのですか? これがたとえば、「記録的な猛暑」という設定で、エアコンなしには生きていけない! みたいな話があればすんなり物語世界に遊ぶことができるのですが、そんなに涼みたいならとっととクーラーの効いた場所に移動しなはれ、部室に居続けなければならない理由はいっさい提示されず、世界はそれをご都合主義と呼ぶんだぜ、と一人ごちたのでした。

 その他にもひっかかる点が多数です。

 はげしくネタバレですが、約99年間、「土中に埋まっていたリモコン」が正常に動作するはずがなかろう? という疑問が真夏の入道雲のようにもくもくとわきおこりますが、あまりつっこまれないのがひっかかります。

 また街のさびれた名画座で謎の日本製SF映画が上映予定になっておりますが、そんな古そうな映画の上映に「前売券」が用意されているわけないでしょう? とか。

 さらに「過去を改変してタイム・パラドックスが発生したら、世界が消えてしまう! これは一大事だー!」と大騒ぎされますが、論理的に推論すれば、大騒ぎしているところの「現在」が存在しているのなら、過去は改変されなかったのは明らかなのでは? とか。

 本広監督は、『知子の場合』が素晴らしく面白く、テレヴィの『踊る大捜査線』『踊る大捜査線 THE MOVIE』もそこそこ面白かったんですけど、その後はニントモかんとも、でございます。ひっかかりを見て見ぬフリしてノリについて行ける方はぜひどうぞ。しかしそれはジョージ・オーウェルが『一九八四年』で描いたところの「二重思考(ダブルシンク)」ではないか? と私は思うのでした。

☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

Comments

投稿者 ryo : 2005年10月05日 12:28

確かにこの映画、SFとしてはぐっだぐだで、うーんと思ってしまいました。

ただ、あの学生達の、普段のぼんくらな言動が、自分の学生時代と重なり合って、非常に懐かしく感じてしまいました。

ああいたいた、こんなヤツみたいな。

投稿者 baba : 2005年10月05日 13:43

ryoさん、書き込みありがとうございます!

> あの学生達の、普段のぼんくらな言動が

ですね。そこんところは良いなぁと感じました。

夏休みに用もないのに学校へ行ってうだうだしたのは今となっては良き思い出です。

でも、学生時代の私の方がもーーーっとぼんくらでした!!

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