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2005年09月06日(Tue)

容疑者 室井慎次

Text by BABA

 He's black? 彼はシロか、クロか? ババーン!! 答え:どっちでもいい。と身もフタもないことを書いてしまいましたが、ムロイさんが指揮をとった殺人事件で、取り調べ中に被疑者が逃走、クルマにはねられ死んでしまう重大不祥事発生。

 そいで、ムロイさんが被疑者の遺族とかから告訴されてしまう、というお話なのですけど、まーこれがどう考えてもですね、街中の交番で取り調べしたらあかんやろ! とか、なんでも30数時間ぶっ続けで取り調べしたそうですから、いつまでたってもわが国警察の自白強要体質は改まりませんな、こりゃ自民党を完膚無きまでにぶっ壊すしかない! 郵政民営化反対! と関係ないことを一人ごちつつ閑話休題。捜査の違法性は明らか、責任者ムロイさんは責任とるべし。

 しかるにネタバレですが、被疑者は無罪であったことが明らかになり、そうであればムロイさんの責任はさらに重大、それなのにムロイさん、法的には責任問われることなくおとがめなし、この『踊る大捜査線』シリーズは一貫して「現場」が大事! と主張しておりますけれど、現場の都合で法が歪められても仕方ないでしょ? ってことですか。

 私も映画においては、法を無視してでも正義をつらぬく現場の刑事を応援したいとは思いますが、前提として、可能な限り法の枠内での正義を追求して欲しいのであります。

 ギリギリと主人公が葛藤したのち、ええい、正義のためには法を破るにしかず! と『ダーティハリー』のように警察バッジを捨てる覚悟で悪と対峙するならよいですけど、この『容疑者 室井慎次』はいかがなものか? 私には、どいつもこいつも法律に無知なだけ、あるいは人権意識が希薄なためにうっかり法を破っているだけではないですか。…って私も法律はよくわからないのですけど、停職中の警察官が、重要参考人の取り調べを、衆人環視の中でやってはいけないことぐらいはわかる。…って、ここは笑うところ? モンティ・パイソン並に、ボケが激しくてうっかり笑いどころを笑い逃したのかも?

 閑話休題。『踊る大捜査線』世界においてはまともに法を語れる者はただの一人も登場せず、「法律なんて解釈の仕方でどうとでもなるでしょ?」みたいな言説が充分批判されないまままかり通る、まことに気色の悪いことになっております。

 今回の作品では、いつもピコピコ、ゲームをやってる、いとうせいこう風の新人類弁護士というか、ジェネレーションX弁護士が悪玉として登場します。考えてみれば『踊る大捜査線』シリーズはそういう、現実とヴァーチャルの区別をなくし、何事もゲーム感覚で対処し、現場の汗を小馬鹿にするオタク者が犯人になることが多いのですが、君塚良一監督こそが、現実とヴァーチャルの区別をなくしたオタク者なのでは? 前作『MAKOTO』も大概でしたが、こんなにウソ臭い話を大まじめに演出してしまえる感覚に脱帽、日本映画の未来にとってまことに貴重な逸材と申せましょう。

 田中麗奈は、やっぱり良い! ということでオススメです。

(☆= 20 点・★= 5 点)

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