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 Movie Review 2005年1月8日(Sat.)

カンフー・ハッスル

 ありえねー。ババーン! 『少林サッカー』で大ブレイクのチャウ・シンチー新作は、これまで小出しにされてきたカンフー愛が全編に炸裂するその名も『功夫』(原題)、気合い入りまくりの超絶傑作、蝶がひらひら舞って巨大な岩文字が現れるオープニングタイトルからして最高ですね。

 時は文革以前の中国、“斧頭会”なるギャング一味と、“豚小屋砦”という貧民アパート住民の、血で血を洗う抗争にチャウ・シンチー扮するチンピラがウロチョロするというお話。

 なんといっても最近ではとんとお目にかかれなくなった本格カンフーアクションが素晴らしく、いや最近もリアル志向の『マッハ!!!!!!!!』、あるいは耽美派『グリーン・ディステニー』『HERO』『LOVERS』などがあり、それぞれに素晴らしかったのですけど、この『カンフー・ハッスル』、超人的なアクション+ベタベタなギャグ、さらに少々の残酷さを加味してまさしく原題『功夫』の名にふさわしい、これこれ、これこそがカンフー映画ですよ、うむ。と一人ごちざるを得ない夢のような作品でございます。いかにもそれ風の音楽を聴いただけで胸がじーんと熱くなってしまった私なのでした。

 武術指導は『マトリックス』『グリーン・ディステニー』売れっ子ユエン・ウーピン、加えて『燃えよデブゴン』サモハン! 豚小屋砦の三人の達人アクションはサモハンが担当したそうで、めっぽう巧い小道具の使い方はさすがです。さらに100人の黒服ギャングと一人の達人の戦いは『マトリックス・リローデッド』あるいは『キル・ビル Vol.1』を想起させますが、同じユエン・ウーピンの振り付けでもここまで違うものか! と唖然とせざるをえない素晴らしさ、「ウォシャウスキーもタランティーノもカンフーの撮り方が全然なっちゃおらん! 俺が撮ったらこうだ!」…みたいなチャウ・シンチーの自信がうかがえる名シーンです。

 私の場合、CGが苦手で「ああこれはCGですな」とわかってしまうと興奮がしゅるしゅるしぼんでしまうこと多々あるのですが、この作品の場合は大丈夫、というか、たとえCGとわかっていても茫然と感動してしまう素晴らしさで、結局のところCGという新しいテクノロジーを、これまでは誰も使いこなせていなかっただけなのであり、チャウ・シンチーこそが、映画史上最初にCGを使いこなした監督である、と私は言いたい。

 主役のはずのチャウ・シンチーが最後の最後まで活躍しないのも面白く、狂気の達人ブルース・リャンにこてんぱんにのされ、ダイイング・メッセージの渦巻き模様がペロペロキャンデーにオーヴァーラップし、キャンデーが砕け散ったシーンでこのまま退場かー? と思わせながらババーン! と復活するのは、まさしく千両役者と申せます。

 また、いかに訓練を積んだとしてもチャウ・シンチーがカンフーアクションを演じるにはCGに頼らざるを得ず、CG度が高めのアクションでも観客が違和感を極力感じないように、物語の進行とともにCG度が徐々に増していくように設計されているのも心憎い感じです。

 さらに、斧頭会と豚小屋砦は報復戦争をくり広げますが、それをいかに終わらせるか? 憎悪の連鎖をいかに断ち切るか? それは“菩薩”の心である! という具合に、テロ報復戦争を終わらせる、という今日的な課題に解答を与えているのもやたらと感動的でございます。

 これまでのチャウ・シンチーは、パロディというかヒネった作風でしたが、ついに! 映画の王道で勝負に出て大傑作をものにしました。今や21世紀最重要の映画作家となった、と申しても過言ではないでしょう。バチグン中のバチグンのオススメ。

☆☆☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA
Original: 2005-Jan-8;