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 Movie Review 2004・10月27日(Wed.)

感染

公式サイト: http://www.j-horror.com/

 それは一人の救急患者から始まった。ババーン! 日本初ホラー映画専門レーベル「J-HORROR シアター」、6 人の監督によるホラー 6 本、よせばいいのに順次 2 本立てで公開していくとのこと、その一本目は落合正幸監督。

 落合正幸監督といえば、『催眠』は菅野美穂が素晴らしくて、楽しく鑑賞。『パラサイト・イブ』は映画史上屈指のくだらなさで笑い転げましたので、今回も爆笑させてくれるはず! とワクワクで鑑賞に臨みましたが、あんまり笑えずガッカリ、みたいな。

 あ、そうそう、ネタバレですが、心理科医の羽田美智子さん、突如、色覚異常にみまわれるシーンがあって、腰が引けまくってうろたえまくる姿には爆笑させていただきました。そんなにビックリしなくても……。ホッと胸をなでおろしたのでした。

 そんなことはどうでもいいのですが、映画の舞台は、経営破綻した病院、医療ミスを発端にしてあれこれ、というお話、もちろん架空の病院が舞台でしょうが、見終わったときに観客は何となーく「病院」「医者」に対して嫌悪の情を抱いてしまうのではないか知らん、と老婆心ながら心配してしまいます。

 もし、現役のお医者さん・看護師さんがこの映画を見られたら、監督・落合正幸氏、原案・君塚良一氏に対して、「医療の現場を知らなさ過ぎる!」と憤懣やるかたない怒りをどこにぶつけよう? …やはり患者か? いや、そうではなくて、医療現場への取材が少なすぎる印象で、例えば新人看護師・星野真里(好演)、注射がめちゃめちゃヘタな彼女に対し、婦長・南果歩がさもえらそうに「自分の腕で練習しなさい!」と言ったりしますが、それは普通に行われていることでしょう? ここまで注射がヘタなら看護師になれないでしょう? 仮になれたとしても即クビでしょう?

 おっと、質問責めにしている場合でなく、私も「医療の現場」はよく知らないのですけど、この映画、ただただダメ病院でダメ医者・ダメ看護師が右往左往、右を向いても左を見ても馬鹿と阿呆のからみあい、共感・感情移入できるキャラが一人として登場せず、落合正幸氏+君塚良一氏の「医者・看護師」に対する嫌悪感が述べられているに過ぎない、と思えてしまいます。医者・看護師を馬鹿にしているだけみたいな? 全員が全員、頭がおかしいというのはいかがなものか?

 現在、ブッシュの忠犬・小泉首相は、アメリカいいなりで「医療改革」を進めつつあり、そのためには国民の間に「このままでは医療はダメだ」みたいな不信感が広がれば都合がよいのでしょう。「分割して統治せよ」というわけです。この『感染』は、いたずらに医療不信をあおりたて、アメリカ+小泉流「医療改革」を進めるプロパガンダ映画となっております。か、どうかはご覧になったみなさんに判断していただくとして。

 別に国策映画であっても、面白いホラーなら私、構わないのですが、色々大きい音でビックリさせたりしてますけど、「ホラーな気分」がわき起こらないのには困りものです。

 なぜ、「ホラーな気分」にさせてくれないか? ネタバレですが、これ、「夢オチ」なんです。「またー? カンベンしてよー」って感じですよね。ふと気がつけば、右を向いても左を見ても「夢オチ」ばかり。しかも映画の最初の段階で「これは脳内の物語ですよー」と匂わせてしまっては、ホラーな気分は起こりようがございません。

「J-HORROR シアター」、初っぱながこれでは……続く作品が楽しみです! まったく恐くないので、ホラーが苦手な方にオススメです。

(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2004-Oct-26