京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > Reviews > 04 > 1102
 Movie Review 2004・11月2日(Tue.)

ツイステッド

公式サイト: http://twisted-movie.com/

 寝た男たちが 次々と殺されていく――犯人は“私”? ……そう聞かれたら、違うに決まってるじゃん! ジャジャジャのジャーン!(少しひねってみました)

 それはともかく『ユージュアル・サスペクツ』『シックス・センス』あたりからアメリカ映画は「ヒネり病」にかかっており、とにもかくにも「意外な結末」が大はやり、ヒネらずにおられぬ様子、なんべんもどんでん返しが繰り返される『閉ざされた森』、あるいは犯人と被害者と探偵が実は……という『“○イ○ン○ィ○ィ”』など、ヒネるにも程がある! との私のツッコミがアメリカに届いたのかどうなのか、この「ヒネられた」という題名を持つ作品は、一応「ヒネり」があるもののそれは実にまっとうな「ヒネり」、ヒネるならこれくらいにとどめておいてほしい感じの佳作。

 しかし実際のところ、最近のヒネった結末を見慣れた勘の鋭い方には、この『ツイステッド』のヒネりはヒネり足らず、伏線がていねいすぎて誰が犯人かバレバレ、「火曜サスペンス劇場」「土曜ワイド劇場」よりもつまんないかも知れません。

 しかし、たとい犯人がわかっていたとしても、「むむむ、ひょっとしたらコイツが犯人か?」「いや、やっぱりコイツですな!」と宙ぶらりん感が持続し、予想通りの展開を見せつつストーリーに引きずり込まれる感覚がなかなかに素晴らしいのでありました。

『ツイステッド』、「ヒネり」という題名なのに、アメリカ映画を面白くするのは「ヒネり」ではなく、「キャラクター」だ! と言わんばかりに、しつこくしつこく主人公のキャラをゴリゴリ削り出していきます。

 映画をヒネって何が壊れるかというと、キャラクターが壊れてしまうのだ、と私は卒然と思いあたりました。『ユージュアル・サスペクツ』にしても『閉ざされた森』にしても、ヒネり過ぎで、「では、この登場人物(たち)は、一体何がしたかったのかしら?」と釈然とせず、行動原理がわけわからず、キャラは物語をヒネるためだけに存在していたかのように思えてきます。ヒネるなら、ポキンと折れないくらいにキャラを強固に立てねばならないのですね。

 この『ツイステッド』は、「ヒネり病」が蔓延するアメリカにあって、「正しいヒネり」を示した作品と言えましょう。か、どうかはご覧になったみなさんに判断していただくとして。

 そんなことはどうでもよくて、お話はというと、殺人課刑事アシュレイ・ジャッドが謎の連続殺人を追うお話、アメリカ伝統の刑事もので、ドン・シーゲル監督作品を彷彿としたりしました。殺人課の課長さん(中国系のラッセル・ウォン)とか、かなりいい感じでございます。

 さらに、アメリカ刑事ものというと、『ダーティ・ハリー』にしても『ブリット』(ピーター・イエーツ監督)にしても、「街の雰囲気」が重要、この『ツイステッド』も冒頭の霧がかかった金門橋、死体が打ち上げられる野球場近くの海岸、アシカがいっぱいいる港、など、いまだ見たことがないサンフランシスコが描かれていて素晴らしいです。

 監督は『SF ボディ・スナッチャー』『ワンダラーズ』『存在の耐えられない軽さ』『ライト・スタッフ』『クイルズ』など、アメリカ映画らしいわかりやすさを保ちつつ異色作を仕上げる希有な才能、フィリップ・カウフマン。『ライト・スタッフ』は割と誰が見ても名作と思いますが、その他は、面白いのか面白くないのかよくわからない感じで、特に『ライジング・サン』などズレまくってヘンテコな映画でしたなぁ。この『ツイステッド』も、ふと、ズレまくり、はずしまくりの大失敗作のように感じ、「意外な結末」「アッと驚くどんでん返し」を期待すると超ガッカリでしょうが、そんなもん鼻から期待していない方にオススメです。

 余談ですが、パンフレットや公式サイトでは、

『スター・ウォーズ I & II』『キル・ビル Vol. 2』のサミュエル L・ジャクソン

 となっております。…世間での認知度の高い作品を並べたのでしょうが、「『キル・ビル Vol. 2』のサミュエル L・ジャクソン」はあんまりじゃないでしょうか。ってヒネってるのか?

☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2004-Nov-30