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 Movie Review 2004・5月28日(Fri.)

世界の中心で、愛をさけぶ

 120 万部突破 奇跡の純愛小説、待望の映画化! ババーン! 結論から申しますと、ツッコミどころ満載、ブハッと吹き出しそうになるシーン多数に邪魔されながらも、ちょっぴり泣いちゃう佳編でございます。

 朔太郎(大沢たかお)の婚約者・芝咲コウが突如失踪、朔太郎は、偶然にも、たまたま見ていたテレヴィの台風中継ニュースで芝咲コウを発見! 彼女は四国だ!! 四国は朔太郎の故郷でもあります。朔太郎は彼女を探しに出たはずが、いつの間にか里帰りし、芝咲コウ捜索はそっちのけで高校時代の初恋を回想する……というお話です。

 朔太郎が故郷あちこちをうろつきながら回想する、海辺の街での、高校時代・朔太郎(森山未來)とアキ(長澤まさみ)の初恋物語が素晴らしく、私は思わず日本映画名作中の名作『野菊の如き君なりき』(1955:木下惠介監督)とか、吉永小百合+浜田光夫の『愛と死をみつめて』(1964:斎藤武市監督)を思い出しましたよ。

 設定は 1982 年、ウォークマンやラジオ深夜放送、佐野元春の曲など、80 年代的アイテムが登場しますが、朔太郎とアキのセックスレスなプラトニック・ラヴには、PC が効きまくった、60 年代以前の青春・純愛日本映画の雰囲気が漂います。

 さらに、ツッコミどころ満載なのもクラシックでロマンチックで良いです。関西人は誰でも“ロマンチックな自分”と“ツッコミの自分”という二面性を持ってますが、じーんと感動したシーンの後に、「んなアホな!」とツッコミたいシーンが続き、感動したり、ツッコんだり忙しく、なんと! 上映時間 2 時間 18 分もありますが、長さを感じなかった私なのでした。

 まず、観客私は、四国の田舎なのに、なぜ人々が標準語を話しているのか? と訝りました。しかし、これはすべて大沢たかおの回想なので、大沢たかおが故郷の言葉を忘れるほどに、都会の絵の具に染まっており、つい標準語で回想してしまっていると見ることができよう。というか、人間は記憶を簡単に捏造(でつぞう)するので、すべては大沢たかおの脳内物語、妄想の産物と見ることもできます。

 実際、現実からどんどん遊離し、予想通りの意表を突く展開を見せる物語は、オジサンの妄想に限りなく近づきます。しかし、そんな非ロマンティックな見方は、森山未來+長澤まさみのバチグンの好演がふっとばしてしまう! とにかく、森山未來+長澤まさみが素晴らしいです。

 森山未來少年は、ホントにどこにでもいそうな高校生で、恋愛に不遇な高校時代を過ごした男子ならば、たやすく感情移入できましょう。朔太郎をもし、イケメン高校生が演じたなら、ものすごくムカつく映画になるところを救った最大の功績者、それが森山未來である! ババーン!

 森山未來の表情からは、普通の高校生が、とんでもなくロマンチックな初恋をしてしまった恐れというかおののきというか、居心地の悪さが失われず、例えば、ウェディング・ドレスを着た長澤まさみの横に、タキシード姿で立ったとしても、「お前、殺す!」とは誰も思わないくらいです。…って、よくわかりません。

 余談ですが、成長してオジサンになった朔太郎を演じる大沢たかおは、森山未來が成長すればきっとこんな顔になるのであろう、って感じで、ドンピシャリはまっております。大沢たかおをキャスティングした人、偉い!

 さらに、傑作『ロボコン』でも好演、長澤まさみの魅力が、これでもか! これでもか! と炸裂します。『ロボコン』とうってかわり、スポーツ万能、成績優秀、スタイルグンバツ、クラスの人気者という難役を爽快に演じます。原節子、高峰秀子、吉永小百合を思わせる(例が古い?)正統派ヒロイン、久々の誕生でございますね。体操着姿、水着姿とサービスカットも豊富、さらに! 不謹慎ですが、丸坊主頭も超かわいい!

 ともかく、「どうやって飛行機のチケット用意したんや!」とか、「キミら、婚約しておきながら、昔の話はしたことないのか!?」とか、ツッコミどころ満載なれど、そんなことはどうでもよくなる長澤まさみの笑顔にやられてください。

 さすがにラスト、大沢たかおがポケットから小瓶を取り出した瞬間、椅子からズリ落ち、もうちょっと何とかならんや? と、ごちましたが、森山未來+長澤まさみの新ゴールデンカップルでストレートな青春・純愛映画をどしどし作っていただきたいな、『野菊の如き君なりき』のリメイクとかいかがでしょうか? と一人ごちたのでした。バチグンのオススメ。

☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2004-may-27