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 Movie Review 2004・3月31日(Wed.)

レジェンド・オブ メキシコ
デスペラード

 世界でいちばん熱い競炎! 『エル・マリアッチ』『デスペラード』に次ぐ「マリアッチ」シリーズ第三弾! 監督はもちろんロバート・ロドリゲスである! ババーン!

 投薬実験モルモットのバイトで稼いで『エル・マリアッチ』を製作、あれよあれよとハリウッド村の話題になって一般公開されるまでを綴った『ハリウッド頂上作戦 23 歳の映画監督が 7,000 ドルの映画でメジャー進出!』 を読みますと、R ・ロドリゲス演出の特徴は、“ケチで、せっかち”ということでありましょう。

 たとえば、役者がセリフをとちってリテイクするなぞもってのほかで、とちったところでカットを変えればいい。セリフをおぼえていない役者はカンニングペーパーを読ませる、目線はサングラスでごまかせばいい。絵コンテを描くのも面倒で、そもそも絵コンテとはスタッフに演出意図を伝えるもの、何でも自分でやるなら必要なし! もろもろ全部一人でやって、時間も費用も大幅節約! 前掲著では、編集をハリウッドメジャーのプロにまかせたら、フィルムを台無しにされるは、いつまでたっても仕上がらないわでまったくいいことなし、というエピソードも紹介されており、ロドリゲスもまたラース・フォン・トリアー、スティーヴン・ソダーバーグ同様、無駄の多いアメリカ的映画製作法に異議を申し立てる者なのであった。

 ちなみに『ハリウッド頂上作戦』ですが、メジャーの注目を集めて一気にリムジンでお出迎え、豪華ホテルのスイートに泊まったり、それでもホテル代が勿体なくて知り合いの家に泊まってホテル代を節約する……みたいな痛快エピソード満載ですので、特に映画作家志望の方にオススメです。本編の編集にかかる前に、まず予告編を作るのだ! など、役立つ情報満載ではなかろうか。

 閑話休題。今回『レジェンド・オブ メキシコ』でもロドリゲスは獅子奮迅のはたらき、担当したのは、監督・脚本・製作・撮影監督・美術監督・編集・視覚効果スーパーバイザー・再録音ミキサー・作曲……って、ほとんど自主映画ノリで、やっぱりロドリゲスは凄い! もはや、ドケチと言ってよい。

 それはともかく例えば IMdb のトリヴィアを見ましても、教会でのガンファイトのシーンは、教会を傷つけないようゴム製の銃を使って撮られ、飛び交う銃弾・着弾・血しぶきは、後から画像処理で加えられたそうで、安く、早く作るためにロドリゲスがいかにトンチを駆使しているか? がうかがえるエピソードであります。

 さて今回は、バンデラス(通称:バンちゃん)は勿論、ジョニー・デップ、ダニー・トレホ、ウィレム・デフォー、ミッキー・ローク、チーチ・マリン、さらに『ニューシネマ・パラダイス』のトト青年ことマルコ・レオナルディ、フリオの息子エンリケ・イグレシアスなど、濃ゆい男優が入り乱れ、ちょうどメキシコは“死者の日”お祭り騒ぎにクーデター市街戦が勃発、大幅にスケールアップ! ……7,000 ドルで撮った『マリアッチ』世界がここまで膨れあがるとは。この『レジェンド・オブ メキシコ』それ自体がレジェンドなのであった。

 しかし、壮大なスケール+入り乱れるキャラの割に上映時間はたったの 101 分、ケチでせっかちロドリゲスは、観客が退屈することを許さず、見せ場をノンストップで連続させ一息で語りつくし、これが『スパイ・キッズ』シリーズみたいな 90 分以内で完結してピッタリの小さな話ならよいのですけど、壮大なスケールの 100 分となると息がもたず、おいしいキャラが存分に生かされたとは言えずウィレム・デフォーなんか勿体ない感じ……というか、包帯ぐるぐる巻きの中の人はきっと違う人に違いない、って、壮大なお話をギリギリのところで作ってる感じ、自主映画・ホームヴィデオのテイストがプーンと漂ってやっぱりロドリゲスは凄い! と一人ごちたのでした。

 いちばんおいしいのはジョニー・デップで、マカロニ・ウェスタン風味あふれるガンファイトに私は茫然と感動、ぜひこのキャラ主人公で一本撮って欲しいところでございます。しかしバンちゃんも、とってつけたように卒然とメキシコ愛に目覚めるのが素晴らしく、ラスト、メキシコ国旗にチュッ! とキスするシーンは猛烈にカッコよく、よし! マネしちゃえ! と私が日の丸にキスしたとしても決してさまになるわけがなく、やっぱりバンちゃん最高! ギターケースに乗って階段を滑り降りるシーンも大好きです。

 しかししかししかし! やっぱり物足りないわけです私は。セルジオ・レオーネ“ドル三部作”にオマージュを捧げるのなら、やはりラストはバンちゃんとジョニー・デップの決闘でなければならないのではないか? …って、それは『レジェンド・オブ メキシコ PART 2』のお楽しみ? 楽しみにしておいてよいのでしょうか? …って誰に聞いているのかわかりませんが、カッコいいオッサン・お兄ちゃんが続々登場、見せ場見せ場の連続で「ほんとせっかちなんだから」と苦言の一つも呈したいけれども、それがロドリゲスの作家性なら仕方ないか。ともかくツッコミを入れる間もない後半ノンストップぶりが素晴らしいオススメです。ダニー・トレホが、もの凄い顔でニカッと笑うのを見るだけで幸せな気分になれるのは私だけ?

☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2004-Mar-29;
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