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 Movie Review 2004・7月30日(Fri.)

マッハ !!!!!!!!

公式サイト: http://www.mach-movie.jp/

 世界初! ムエタイ・アクション超大作!! ババーン!!!!!!!!

 いやまあとにかく最高でして、ジャッキー・チェン最近作やリー・リンチェイ主演アメリカ映画など見て、嗚呼もはや「面白い映画」はアメリカに殺されてしまったのですね、もう一生面白い映画は見られないかも知れませんね、と諦念に包まれ、ついつい CG 使いまくった『アズカバンの囚人』や『スパイダーマン 2』をほめてしまった私なのですが(まあ面白かったんですが)、『マッハ !!!!!!!!』を見て「これこれ、こういうのこそが面白い映画だったのだった!」と、ぽろりと目からウロコが落ちました。

 この私の心もちは、例えていうなら『美味しんぼ』、「この鶏肉、臭いよ」とワガママ言うてたお婆さんが数十年ぶりに人工飼料使わず育てられた地鶏を食べ、「うほっ! 全然臭くないよ!」と驚喜したのと同じ、『マッハ !!!!!!!!』のアクションには、「CG」「MTV 風演出」など添加物一切無し、これこそ「至高の映画、究極の映画である!」と視界が急に広がり、アドレナリンが吹き出まくる精神の高揚を味わったのであった。

 というか、「マッハ !!!!!!!!」は「CG 使いません!」「ワイヤーアクション使いません!」「スタントマン使いません!」と宣伝しておりますが、そもそも映画とはそういうものなのであって、本来ならば、食品衛生法が添加物使用、遺伝子組み換え食品の表示を義務づけているのにならって、たとえばジャッキー・チェン主演『メダリオン』などはポスターに「CG 、早回し、ワイヤー、スタントマン使用」との表示を義務づけるべきではないか?

「CG は使いません!」という宣伝が成立してしまうところに、現在の映画状況の本末転倒ぶり、いかに添加物が映画にばんばん使われているかが如実にあらわれておる。ひとたび添加物一切無し『マッハ !!!!!!!!』を食して、私は、これまでどれだけ「臭い映画」を食べさせられていたかに卒然と気づいてしまったのだった。

 こんなに魂を高揚させてくれた映画体験は、小学生の時に『燃えよドラゴン』を見て以来です。20 世紀が生んだ最高の映画が『燃えよドラゴン』ならば、21 世紀の最高の映画は『マッハ !!!!!!!!』である! と私は高らかに宣言したい。

 …って思わず過剰にほめてしまいましたが、ともかく主演トニー・ジャーの身体能力は圧倒的で、市街地での追っかけシーン(ジャッキー・チェン的ですね)で見せる、「自動車飛び越えの術」「徒党に囲まれても一瞬で脱出の術」など、めまいを覚えるほどカッコいいです。

 また、そういうアクションを、動きが見えやすいよう全身でとらえるカメラワークがまた素晴らしく効果的で、キメのアクションがスローモーションでリプレイされるのも嬉しい悲鳴です。

 さらに、ブルース・リーを超えているかも? と思わせる、キックやパンチを本当に当てまくるフルコンタクト全開ぶりで、クライマックス一大アクションは痛くて痛くてたまらない感じ、メチャクチャ痛そうでも戦い続けるトニー・ジャーの姿に、私は茫然と感動の涙を流したのでした。

 加えて、田舎出身の純朴な青年が、他国の宗教をふみにじるグローバリスト西洋人をコテンパンにやっつけるという、祖国愛あふれるストーリーも素晴らしいです。格闘アクションは、アンチ・グローバリズムと結びついてこそ威力を発揮する。

 と、いうのも安易にピストル、マシンガンなど兵器に頼るのがグローバリズム、身体を武器にする格闘系スターは、そもそもアンチ・グローバリズム的でなければならないのですね。『タキシード』『メダリオン』でジャッキー・チェンが、CG という科学技術に頼って強くなったのもグローバリズムに屈したのと同じ、そもそもアンチ・グローバリズムであるべき格闘系スターが、グローバリストが支配するアメリカ映画に進出して面白い映画ができるわけがないのです。

 というか、グローバリストは、映画のアンチ・グローバリズムを打ち砕くため、カンフーをアメリカ映画に取りこんで懐柔してきたのだなぁ、と今にして思う。実際、近頃香港で面白いカンフー映画が作られることがほとんどなくなってしまい、アメリカ映画の世界支配は盤石に見える、そんなグローバリストの夢を破るのがこの『マッハ !!!!!!!!』、ここでは、「面白い映画を作ること」「CG を拒否すること」「反グローバリズムであること」が高度に結びついているのであった。カーチェイスの主役も、タイの国民的乗り物=トゥクトゥクだったりして、作り手のアンチ・グローバリズム気質が徹底しておりますね。

 ともかく、私にとっての「至高の映画」とは、チャップリン、バスター・キートン、板東妻三郎、ブルース・リー、ジャッキー・チェン、リー・リンチェイたち主演俳優が見せる、開いた口がふさがらないほどの奇跡的な動きを、正確に記録した映画のことでございますが、この『マッハ !!!!!!!!』も、「至高の映画」「奇跡の映画」であり、ここからトニー・ジャー伝説が始まるのである。うむ。と私は一人ごち、象使いに扮する次回作『トム・ヤン・クン』を見るまでは死ねないなー、と心に誓ったのでした。で、よけいなお世話かも知れませんが、「CG は使いません!」に加えて、「タイにこだわります!」「アメリカ映画には絶対出ません!」と公約していただきたいな、と。

 一瞬、アクション以外のシーンで CG が使われていたような気がしますが気にしません。とか、村娘からもらった指輪はほったらかしかい!? とか、少々気の迷いはありつつバチグンのオススメ。

☆☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2004-jul-29