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 Movie Review 2004・1月30日(FRI.)

ハリウッド的殺人事件

 ハリウッドを舞台に、二人のはみ出し刑事が大暴れ! おなじみハリソン君と、その助手はジョシュ・ハートネット! その助手はジョシュ・ハートネット! その助手はジョシュ・ハートネット! …しつこくしてすいません。ババーン!

 それにつけても呆れ返らざるを得ないのは、公僕たるアメリカ刑事の公私混同ぶりです。ハリソン君は不動産業を副業とし、重大事件捜査中も携帯電話で商談に大忙し、かたや助手君は、ヨガのインストラクターが副業、映画俳優をめざし、コネを作るのに大忙し。…いやはや、アメリカでは公務員のアルバイトは禁じられておらぬのか? それとも、アメリカ刑事といえば汚職がつきもの、まっとうな仕事をアルバイトにしている彼らは、汚職に手を染めていないだけマシな刑事とでも言いたいのでしょうか。

 彼らが担当するのは、ヒップホップクラブで起きた、マシンガン乱射+ラッパー殺害事件の捜査です。黒人ラッパー殺しの犯人探しなんて本気でやっておられぬ、どちらかといえばアルバイトの方が大事、片手間に捜査している雰囲気ありあり、彼らの勤務態度はたいそう印象悪いです。

 ことに助手君、ヨガのインストラクター、生徒はすべて妙齢の女性、とっかえひっかえモテモテ、ある夜などは帰宅すると庭から物音が聞こえる、すわ物取りかと拳銃を構えれば、すっぽんぽん美女がジャグジーで入浴、助手君は服を着たままジャブンと飛び込み、美女と……。まったく印象悪いです。

 それはともかく「ハリウッド的」とは何をもって「ハリウッド的」と言うか? ハリウッドといえば「アメリカ映画製作の中心地」と日本では一般的に了解されておりますが、実際はそうでもないのが何となくわかる。この映画のハリウッドでは、ヒップホップ爆発的ブームで黒人が一気にのし上がってきた様子が見て取れます。一発当てた黒人が、元映画プロデューサー白人の豪邸を購入するなど、ハリウッド金持ちの入れ替えが進行中のようです。ハリソン君と助手君の上司も黒人だし。かつて『エアフォース・ワン』で合衆国大統領まで演じたハリソン君が、黒人上司に叱責されるのはなかなか痛快です。ともかく、ハリソン君と助手君の、職業倫理の欠如ぶりを見れば、白人がステータスを落としていくのもむべ成るかな、「ハリウッド的」とは、白人が自業自得でその地位を黒人に追われる現象を形容するものである、と私はひとりごちたのでした。

 そんなことはどうでもよくて、監督はロン・シェルトン、ケヴィン・コスナー主演『さよならゲーム』『ティン・カップ』の監督、どちらも「面白くなかろう」との予想に反して意外に面白かったのでガッカリした(よくわかりません)憶えがあり、今回も、ハリソン君ら「刑事」という職業を舐めきった態度にムカムカしつつ、後半、ハリウッド各所に通りがかりながら犯人を追いかけまくるアクションはまあまあしつこく、アレックス・ウルマンの音楽も快調、よろしいんじゃないかと。

 サントラにはスヌープ・ドッグ、アイス・キューブが参加、劇中登場する「H20Klick」は、マスター P がプロデュースのニューオーリンズを拠点に活動する「504 Boys」、ヒップホップレーベルの裏側なんかが垣間見られ、ヒップホップ好きなら見逃せない YO! って、よく知らないのでよくわかりません。

 ハリソン君の不動産業、助手君のヨガが、本業の事件解決に思わぬ形で役に立つ、みたいなトンチを効かせていただければ面白くなったのに、と思います。ハリソン君もすっかりお爺さん顔になり、助手君も動きが鈍くてモタモタしたアクション好きの方にはオススメです。

☆☆★★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA
Original: 2003-Jan-29;

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