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 Movie Review 2004年12月17日(Fri.)

ロード・トゥ・メンフィス

 メンフィスに捧げる、B.B.キングのブルース。ババーン! マーティン・スコセッシ監修『Blues Movie Project』、三本目に見たのは、よく知らないリチャード・ピアース監督(『ノー・マーシィ/非情の愛』など。あまり印象に残らず)による、三人のブルースマンを通じて描く「ビール・ストリート」の肖像。

 三人のブルースマンとは、今なお現役ツアーで忙しいボビー・ラッシュ、大方の人は忘れてしまったロスコー・ゴードン、そして「ブルース議長(The Chairman of Blues)」ことB.B.キング。

 それぞれの原点=メンフィスのビール・ストリートは、「ブルース発祥の地」で、かつては連日連夜、黒人たちでにぎわう「黒人天国」とも言われた歓楽街、ブルースのライブハウスがわんさか立ち並ぶ、いわばアメリカ黒人文化の中心地だった…。

 1968年、公民権運動の中心マーティン・ルーサー・キング牧師の暗殺に端を発して各地で黒人暴動が頻発。しかしメンフィス周辺では暴動が起こらなかった…なぜなら、ときの政府が軍隊を集中して暴動を牽制したから。で、そののちビールストリート歓楽街=黒人文化の中心地は政府・資本家によってつぶされてしまった…という歴史が語られます。ふーむ。勉強になりますね。メモメモ。

 メンフィスといえば、「ザ・キング」ことエルヴィス・プレスリーの出身地、エルヴィスは当時黒人ブルースに熱狂し、ビール・ストリートに入り浸っていたとか。黒人天国のライヴハウスに出向くとは…エルヴィスは相当命知らずのブルース狂なのであった。

 やがてエルヴィスはサム・フィリップスと出会います。サム・フィリップスもブルース狂白人でサン・レーベル主催者、もし白人がブルースやR & Bを唄いこなせば絶対大ヒットするはず! と確信していたらしい。

 で、サム・フィリップスはエルヴィスに『Heartbreak Hotel』を黒人風に唄わせて大ヒット、白人の間に一大ロックンロールブームを巻き起こしたのであった…と。ふむふむ。勉強になります。メモメモ。

 現在のサム・フィリップスが登場、アイク・ターナーと談笑するシーンが面白いです。

 アイク・ターナーといえば、ティナ・ターナー半生記『ティナ』(1993年アンジェラ・バセット主演)でローレンス・フィッシュバーンが演じたティナの元旦那、暴力亭主として描かれておりました。

 アイク・ターナーがサム・フィリップスに、軽く「エルヴィスは黒人の真似をしたのさ!」といえば、サム・フィリップスにわかに気色ばんで反論します。

「何ゆうてんねん! 当時エルヴィスも黒人と同じくらい貧乏やったんや! 黒人と同じ感覚を持ってたんや! 真似ちゃうわ!!」

 …と場がピリリと緊張、すわ、アイク・ターナーのパンチが炸裂するかーー?? と思いきや、アイク「まあまあまあまあ、いいじゃないか」と適当に誤魔化す始末。ふーむ、こうやって物事をうやむやにしてストレスをためるから、家庭内暴力に走るのかも? …って、思いっきり邪推ですね。アイクさん、すいません。

 と、色々勉強になって興味深かったのですが、ポップ音楽、黒人音楽に興味がない方にはさっぱり面白くないかもしれませんです。

 とはいえ挿入されるライヴシーン、わけても現役ばりばり年間300以上のステージを40年間(だったかな?)続けてきたボビー・ラッシュのライヴが強烈。私の場合、黒人シンガーのライブといえばプリンスとジェームズ・ブラウンくらいしか見たことないのですが、まったく引けを取らない強烈さでバチグンにカッコいいです。これは一見の価値あり。

 オススメです。

☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2004-Dec-15