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 Movie Review 2004年12月8日(Wed.)

レッド・ホワイト & ブルース

 クラプトン、ストーンズ、ビートルズ。ブリティッシュ・ロックを生んだブルース。ババーン! マーティン・スコセッシ監修で、7人の監督がブルースをめぐるテレヴィドキュメンタリーを製作したプロジェクト、日本では「The Blues Movie Project」として順次上映。

 ご参考までに、監督と題名をあげますと、

  • ヴィム・ヴェンダース監督『ソウル・オブ・マン』
  • マイク・フィギス監督『レッド・ホワイト & ブルース』
  • リチャード・ピアース監督『ロード・トゥ・メンフィス』
  • チャールズ・バーネット監督『デビルス・ファイヤー』
  • マーティン・スコセッシ監督『フィール・ライク・ゴーイング・ホーム』
  • マーク・レヴィン監督『ゴッドファーザー & サン』
  • クリント・イーストウッド監督『ピアノ・ブルース』

 さて私が最初に見たのは、マイク・フィッギス監督による『レッド・ホワイト & ブルース』。

 アメリカで生まれたブルース、白人にとっては一部のマニアしか聴かない音楽だったのですが、1950〜60年代に海を越えイギリスで、若者たちは夢中になってレコードを聴き、やがてコピー演奏を始めます。そうした音楽シーンを土壌にクリーム、ローリングストーンズ、ビートルズが生まれ、アメリカに上陸していく…。

 イギリスにおけるブルースの享受・発展の歴史を、ヴォーカル、ドラム、ギターなどのキーワードでくくって関係者の証言でつづり、その合間にブルース好きのミュージシャンたち=トム・ジョーンズ、ジェフ・ベック、ヴァン・モリソン、ルルらが、アビーロード・スタジオに集められてセッションを披露する…という内容です。

 私は音楽には(音楽にも?)とんとくわしくないので、ミュージシャンたちが言及する黒人ブルースマンの名前がさっぱり謎で、少々眠かったのですが、ストーンズ、ビートルズに言及されるくだりや、エリック・クラプトンが語る「俺はブルースを伝導しなければならなかったんだ!」みたいな妙な思いこみとか、あるいは挿入されるお宝映像も珍品な感じで目が覚めました。

 マディ・ウォーターズとストーンズのセッション映像ではミック・ジャガーの大はしゃぎぶりがやたら可愛かったり、ビートルズの『ヤー・ブルース』演奏風景は初めて見ましたが、けったいなヒゲ面ジョン・レノンはやっぱりカッコいいですね、と一人ごちたのでした。

 マイク・フィッギス監督といえば『リーヴィング・ラスヴェガス』が代表作、『10ミニッツ・オールダー イデアの森』にも参加してアヴァンギャルドな一面をのぞかせましたが、今回このドキュメンタリーはシンプルかつオーソドックス、ごくごく普通のテレヴィドキュメンタリー・スタイル、映像的な面白さを期待するとさっぱり面白くないかもしれません。

 プロジェクトの一環として出版された『ザ・ブルース THE BLUES』を読みますとマイク・フィッギス自身が、幼少の頃よりブルースに親しみ、長じてトランペットをたしなみ、ブルースの吹けるトランペッターとして重宝されたそうで、なんとロキシー・ミュージック以前のブライアン・フェリーと同じバンドでプレイしていたこともあるそうです。『リーヴィング・ラスヴェガス』の音楽も監督自身の担当、すぐれたミュージシャンでもあるのであった。

 ですので監督自身が、この作品で語られるブリティッシュ・ブルースシーンの一員なわけで、そういう点で誰がインタビューするよりも深い話をミュージシャンたちから聞き出せ、映像的に凝らなくても面白いドキュメンタリーが作れる自負があったと思われます。よくわかりません。

 実際のところブルースに特に思い入れ・興味のない私でもなかなか面白く見ることができ、彼らイギリス白人のブルースに対する熱い思いがびんびん伝わって俄然ブルースへの興味がわいてくるのであった。

 ドキュメンタリーの最後のまとめとして、ブリティッシュ・ロックの意義が語られます。

 白人ポップミュージックは、黒人音楽の剽窃に過ぎず、白人は音楽でも黒人を搾取しているのだ、とはよくいわれることですが、そういう面はありつつ、一方でブリティッシュ・ロックはアメリカのブルースマンたちに光をあて、貧窮から救出した面もある。

 アメリカのブルースマン、BBキングの言葉がやたら感動的です。

「ブルースは、アメリカ白人が見向きもしなかった音楽だ。ところがイギリスから若者がやってきたら、みんなが注目し始めた。もし、彼らがいなかったら、俺たちはずっと暗闇の中にいただろう。ありがとう」(適当にまとめました)

 イギリスの若者がブルースをリスペクトしなければ、黒人文化に注目が集まるのが遅れ、60年代公民権運動も随分と様相を違えたことでしょう。

 唐突ですが、生物学者リチャード・ドーキンスは「模倣によって伝播される文化の要素」を、「ミーム」と名付けました。ブルースが海をこえてイギリスの若者をとりこにする、強力な伝播力を持っていたのは、ブルースが強力な「ミーム」を備えていたから、と言い換えることができます。

 アメリカ白人は「差別」意識によって、ブルースをいったん拒絶しましたが、ブルースのミームはヨーロッパを迂回して形を変え、結局アメリカ白人にとりつき、世界中にその複製をまき散らしている……私は、文化伝搬の不思議さに心を打たれたのでした。

 そしてブルースのミームは、このドキュメンタリーの中にも確実に存在しており、これ一本を見てしまって、無性に他の作品も見たくなってしまった私なのでした。このドキュメンタリーを見れば、ブルースに対する興味がわきおこってしまうはず! …ってよくわかりませんがオススメです。

☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2004-Dec-6
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