京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > Reviews > 03 > 0926
 Movie Review 2003・9月26日(FRI.)

閉ざされた森

 ハリケーン吹き荒れる中、レンジャー部隊 7 名が実弾訓練のためパナマ運河付近のジャングルに降下します。訓練を指揮するのは……鬼軍曹サミュエル・L ・ジャクソンである! ババーン! 数時間後、レンジャー部隊は消息を絶ち、捜索隊が出動、2 名の兵士を救出します。ジャングルで何が起こったのでしょうか? 真相を解明できるのはヤツしかいない! と呼びつけられたのは退役軍人ジョン・トラボルタ! ババババーン! …と、ワクワクの滑り出しですね。ミステリー仕立てのお話ですので、ぜひ予備知識なしでご覧ください。

 監督は『ダイ・ハード』『ダイ・ハード 3』のジョン・マクティアナン。豪快さんなアクションとトンチの効いたストーリーが持ち味の、お気に入りの監督さんでございます。が、近作『13 ウォリアーズ』『トーマス・クラウン・アフェアー』『ローラーボール』などは、意味なく豪快なアクションもありながら眠い映画だったのですけど、今回は、まずサミュエルの鬼軍曹ぶりが最高! って、訓練シーンが少ないのがもったいないのですけど、兵士に対する罵倒っぷりは、『フルメタル・ジャケット』ハートマン軍曹に負けず劣らず、ぜひサミュエル軍曹を主人公にした軍隊映画を作っていただきたいものでございます。「兵隊にとって最強の武器は何だ? そんなこともわからんのか? ああ? それは brain (頭脳)だ!」など名セリフ満載です。

 それはともかくマクティアナン、大の黒澤明好きのようで、『13 ウォリアーズ』では『七人の侍』にオマージュを捧げまくっておりましたが、今回は『羅生門』です。オープニングとエンディングにボレロが流れたり、レンジャー部隊遭難の真相が薮の中で、生き残り 2 人の証言がそれぞれ食い違って回想されたりします。

 そんな話はどうでもよくて、真相にたどりつくまで大どんでん返しがどんでんどんでんと続くのですが、まずレンジャー部隊 7 名のキャラがいまいち立ってなくて、人名とキャラがなかなか一致せず、ひっくり返るストーリーを追うのに精一杯、また伏線がセリフに仕込まれていたりと、ストーリーがセリフで語られ過ぎなのがうまくない感じです。とはいえ豪快な演出で一気に見せ切ってしまうのはさすがマクティアナン。もう一回、吹き替え版で見ればよくわかるかも知れませんが、それですとサミュエルの名調子が聞けないわけで痛し痒し。ていうか、英語のヒアリングが不充分な私がごちるのもなんですが、戸田奈津子氏による字幕がわかりにくくないですか? 例えば「グレネード grenade」を「白煙弾」と訳されておられますが、「白煙弾」って何? 確かに白い煙を上げて爆発してましたけど、普通に「手投げ弾」「手りゅう弾」でいいのでは?

 それはともかく、「マクティアナン監督が初めて挑んだサスペンス大作」ってふれこみですが、豪快演出はいつものマクティアナンで、ホッとひと安心したのでした。

 しかし、こう、どんでん返しが続くとリアリティがどんどんなくなっていって、「アメリカは本気で麻薬を撲滅しようとしていない、政府や軍隊が麻薬ビジネスに関わっているのでは?」という話をしたら、相手の顔色が変わったので、「いや、冗談冗談」と笑ってごまかしたみたいな印象、ってよくわかりませんが、ともかくサミュエル軍曹が最高ですのでオススメです。

☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-Sep-25;

レビュー目次