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 Movie Review 2003・9月18日(THU.)

ロボコン

「ロボコン」とは、「理数系の甲子園」こと、「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」のこと。落ちこぼれ・弱小第二ロボット部員 4 名の熱い戦いを描きます。監督・脚本は 16 ミリ短編『灼熱のドッジボール』で 92 年ぴあフィルムフェスティバル・グランプリを受賞した古厩智之。この監督さんの作品は初めて見ましたが、新人らしからぬ手堅い脚本・演出でございますね。

 まずロボコンという題材が面白く、試合の雰囲気を忠実に再現した数々の闘いに手に汗握らされたのでした。ルールは単純、実際のロボコンに出場したアイデアあふれるロボットが多数登場、激戦を繰り広げます。何でも監督は、スポーツコミックの金字塔『スラムダンク』や、ロバート・アルドリッチ傑作『カリフォルニア・ドールズ』のような映画を撮ろうとしたそうです。理数系・技術系の闘いですが、スポ根、というかロボ根なのであった。

 試合は、いわゆる「映画的」な演出が極力排され、ほとんど据えっぱなしのカメラでとらえられます。劇的なアップ、斬新な構図や編集は存在しない。ロボコンをそのまま再現すれば充分映画的である、というわけですね。凡庸な監督なら、スローモーションなんか使っちゃうところも正攻法でキッチリ押し切ります。

 主人公・第二ロボット部が試合を勝ち進んでいくのは判っていても、ハラハラドキドキしてしまいます。ドラマチックな演出はむしろ邪魔であり、じっくりとアクションを組み立ててハッキリと示してこそ映画のアクションが成立するのである。久しぶりに優れたアクション演出を見たぞ、うむ、と私は一人ごちたのでした。

 第二ロボット部員 4 人はそれぞれに落ちこぼれで、彼らがロボコンを通じ学び成長するプロセスも、お約束ですけど素晴らしいです。キャラがビンビン立って、映画の中で息づいております。アイデア・技術も大事であるが、メンバーが弱点を個性に昇華させ、チームワークがピタリとはまってこそロボコンに勝つことができる、それは同時に技術立国・日本が底力を発揮して不況を脱出するには何が必要かを訴えるのであった。適当です。

 ロボコン、はたまた高等専門学校の魅力を描き切った傑作で、『スラムダンク』を読めばバスケをやりたくなり、『カリフォルニア・ドールズ』を見れば女子プロレスをやりたくなる(できない)のと同じ、『ピンポン』を見ても別にピンポンをやりたくならないのと大違い、『ロボコン』を見れば、誰しも高専に入学してロボコンに出場したくなるのではないでしょうか。

 第二ロボット部員=長澤まさみ(『黄泉がえり』に出ていたそうです)、伊藤淳史(『独立少年合唱団』)、小栗旬(『あずみ』に出ていたそうです)、塚本高史(『青い春』に出ていたそうです)、顧問の先生・鈴木一真(『愚か者 傷だらけの天使』)など、俳優さんのアンサンブルも素晴らしく、また長澤まさみの父親役・うじきつよしがロードレーサー乗りで、試合会場に FELT で駆けつけ、バナナをパクつくシーンは見逃せません。ちなみに FELT http://www.riteway-jp.com/2003felt/とは、アルミパイプメーカー「イーストン」で現在ロードバイクに使われている様々なパイプを開発したジム・フェルトが理想の自転車を追い求めて立ち上げた、優れたコストパフォーマンスで定評があるブランドです。ってそんなことはどうでもいいのですが、古厩智之の次回作にも期待。バチグンのオススメです。ていうか、実際のロボコンを見たいと思いました。

☆☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-Sep-17;

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