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 Movie Review 2003・11月4日(TUE.)

恋は邪魔者

 傑作『チアーズ!』ペイトン・リード監督最新作は、レニー・ゼルウィガー+ユアン・マクレガーのロマンチック・コメディである! ババーン! って、メチャクチャ面白そうなのですけど、こっそりここだけの話、何が面白いのかさっぱりわからなかったのは、1962 年のニューヨークを舞台にしており、ケネディ大統領暗殺前年、アメリカは夢と希望あふれ、物質文明が謳歌された最後の年、以降、公民権運動やら、ベトナム戦争やら、色々あって 9 月 11 日同時多発テロ、やがてアフガン、イラク侵攻、近頃アメリカ帝国は世界の鼻つまみ者、そんな国が 1962 年当時、いかに夢と希望にあふれていたかを描いて「我々はどこで間違ったのであろうか?」と反省するお話ならさぞ面白かったと一人ごちるのですけど、例えば現代で白人アメリカンがイチャイチャするラブコメを作るとは、「はは、いい気なものだね、呑気だね」と誹りを受けること必至、それなら世界貿易センターすら存在しなかった 1962 年に舞台を設定すれば良いのだ、と思ったのかどうなのか、何でも脚本担当イブ・アラート & デニス・ドレイクは、60 年代ロック・ハドソン & ドリス・デイのセックス・コメディにオマージュを捧げようとしたとかしないとか、しかし私はロック・ハドソン & ドリス・デイのコメディは未見、いわばダグラス・サークにオマージュを捧げた『エデンより彼方へ』みたいな感じ? それはともかく『エデンより彼方へ』も『恋は邪魔者』も、ミッド・センチュリー・モダン好きなら狂喜乱舞すること必至、インテリア、ファッション、風俗がマニアックに再現されており、ふむふむなるほど、例えば、日本で、昭和 30 年代ラブコメを徹底的に忠実に再現した映画があったらさぞ面白いことでしょうね、そういう感じ?

 というか、これが例えばベン・アフレック+サンドラ・ブロック主演で作られるなら、何の文句はないのですけど、レニー・ゼルウィガー+ユアン・マクレガーは違うんじゃない? かたやベストセラー作家、かたや敏腕ジャーナリストという設定ですが、どちらも貧乏人の役こそが似合う俳優さんなのに、ってレニーは『シカゴ』、ユアンは『ムーラン・ルージュ』、彼・彼女はすっかりミュージカル的唄って踊る演技に開眼されたようで、この『恋は邪魔者』でも喜々としてダンス、歌を披露されており、しかしそういうミュージカル的虚構を演じるには軽薄さに乏しく寒い印象でございます。

 脚本担当イブ・アラート & デニス・ドレイクは次回同じく美松映劇で公開される『キューティー・ブロンド ハッピーマックス』の原案も担当されているらしく、この秋、美松はイブ・アラート & デニス・ドレイク大特集! ってことはどうでもよくて、『キューティー・ブロンド ハッピーマックス』は大丈夫か??

 1962 年、幻想のニューヨークを舞台にどうでもいいお話が展開、頭がクラクラしますが、ラストでプチ驚くどんでん返しがあって少し救われた、って感じでございます。ミッド・センチュリー・モダン好きの方にオススメ。

☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-nov-4;

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