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 Movie Review 2003・6月24日(TUE.)

ソラリス

『エリン・ブロコビッチ』『トラフィック』など、「作家性」を保持しつつ大ヒットを飛ばせる希有な監督スティーヴン・ソダーバーグが、アンドレイ・タルコフスキーの『惑星ソラリス』(1972 年)をリメイク。『惑星ソラリス』といえば、『2001 年宇宙の旅』と並ぶ知的(=寝ちゃう人続出)SF 映画の金字塔であり、それをリメイクするとは何たる暴挙でありましょうか。製作は『タイタニック』で“世界の王”となったジェームズ・キャメロン。王様だから何をやっても許されるのですね。ババーン!

 なんでもソダーバーグが友人の勧めで『惑星ソラリス』のリメイクを思い立ち、映画化権を持っている人を捜してみたら、なんとジェームズ・キャメロンが持っていて、ソダーバーグ「ハイ、ジム。『ソラリス』リメイクしたいんだけど…」。キャメロン「オーケー、スティーヴン。よかったらボクが製作するよ。一緒にやってやろうじゃないか!」…という話かどうかは知りませんが、キャメロン製作+ソダーバーグ監督、タルコフスキーのリメイク、という夢の、というか、ワケのわかない企画でございます。

 で、タルコフスキーの『惑星ソラリス』は、私も 5 回くらい見ましたが、5 回目にして、やっと最後まで寝ずに見ることができたというくらい、ってそんなことはどうでもいいのですが、上映時間が 2 時間 45 分もあり、見るのがひと苦労な作品です。その点、今回のリメイクは 99 分なので、お忙しい方でもお手軽に見られるようになっております。と、いうか、『ナイトウォッチ』『オープン・ユア・アイズ』『リング』などと同様、海外の傑作・名作を英語でリメイクするという、ネタ切れハリウッドの最後のあがきでございましょう。ソダーバーグは『インソムニア』(ノルウェー映画のリメイク)を製作するという前科がございますしね。

 それはともかく、何しろジェームズ・キャメロンが製作にかかわっているわけですから、さぞハラハラドキドキ、ハリウッド流のスリルとサスペンスな展開を見せるであろうか? との期待をもって鑑賞に臨んだのですが…なんと! タッチは『惑星ソラリス』と『2001 年宇宙の旅』を足したような、ノンビリペースで進行するではありませんか。うーん、話の展開は了解済みなのに、このペースは辛い! また『惑星ソラリス』『2001 年』風に、説明的な描写が排されておりますので、タルコフスキー版を見たことがなく、原作も読んだことがない人にはよくわからない映画になっているのではないでしょうか? どうでしょうか。

 さすがに、ちょこちょこ改変が加えられており、過去の過ちを修復することは可能か? みたいなウジウジとしたテーマで、何というか、パーソナルな悩みがパーソナルな問題に留まっており、インディーズ風でございます。130 億円もかけて自主制作ノリの映画を作るとは豪気な話ですね。ってよくわかりませんが、タルコフスキー版を見ておらず、原作も読んでおらず、ソダーバーグのインディーズ作品が好きな方にオススメかも知れません。

 見どころがないわけでなく、ソダーバーグ自身が撮影と編集も担当し、音楽はソダーバーグ作品に欠かせないクリス・マルチネスで、映像+編集+音楽がスーパークール、『2001 年宇宙の旅』風でかなり気色よろしいです。ソラリス基地のクルーの一人、ジェレミー・デイヴィスの何だかよくわからないボディ・ランゲージは必見。とりあえず、タルコフスキーの『惑星ソラリス』がいかに偉大な作品か? を再確認できるのでオススメ。

☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-Jun-24;

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