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 Movie Review 2003・6月19日(THU.)

11'09''01/
セプテンバー 11

「9 月 11 日とその前後について、事件の日付 2001 年 11 月 9 日にちなんで 11 分 9 秒 1 フレームの映画を作る」という提案のもとに、世界各地、11 人の映画監督が集まった! ババーン! 日本からは、今村昌平監督が参加しております(当初、北野武監督に持ちかけられたが、断ったらしい)

 何といっても、ケン・ローチのアプローチが圧倒的であります。11 月 9 日といえば、アメリカ人にとっては、「同時多発テロ」ですが、チリ人にとっても忌まわしい日付であり、1973 年アメリカの後押しを受けたピノチェト軍部がクーデターを起こしたのが、奇しくも 9 月 11 日なのであった。イギリス在住亡命チリ人がニューヨーク市民に手紙を書く、という設定で、クーデターのアウトラインをたんたんと語り、当時の記録映像がモンタージュされます。

 同時多発テロ犠牲者の遺族に連帯しつつ、アメリカの謀略を糾弾し、同時多発テロはアメリカの非道が引き起こした「ブローバック」であり、アメリカこそが最大のテロ国家であることを明らかにします。アフガニスタンそしてイラク攻撃を支持する者に対する痛烈な批判の一撃であります。それをたった 11 分余で、ラジカルに描き出すケン・ローチ、さすがやな、呆然と私は一人ごちたのでした。

 では、アメリカの監督は「同時多発テロ」をいかに描いたか? というと、アメリカ代表監督はショーン・ペン! 妻に先立たれたジジイの一日を描きます。ジジイを演じるのは、アーネスト・ボーグナイン! 『北国の帝王』『ワイルド・バンチ』など、アメリカ西部劇の名バイプレーヤーでございますね。若い頃は乱暴しまくった(映画の中でですが)アーネスト・ボーグナインが、妻の思い出に囚われウジウジする姿が涙を誘います。そんな彼が、同時多発テロでガーンと現実を直視する、その瞬間の演出が鮮やかであり、ショーン・ペン、なかなかやるな、とも一人ごちた。

 この 2 本を見るだけでもオススメですが、その他アモス・ギタイなども見ごたえあり。これまで複数の監督による競作は色々ありましたが、政治的立場や視点の違いがここまでクッキリと浮かび上がるオムニバスがかつてあっただろうか? そんなことはどうでもよくてオススメ。

☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-Jun-19;

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