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 Movie Review 2003・6月13日(FRI.)

ぷりてぃ・ウーマン

 静岡県の藤枝市、おばあちゃんの親睦会「ともしび会」のメンバーは日がな一日、何をするでもなくのんびりとおしゃべりをする毎日。ところが市の福祉課の催しで「何か演し物をやりませんか?」とオファーを受け、何もやらないのは業腹、何かやりたい、では、劇団を旗揚げしましょう、ということに。おばあちゃんの素人劇団「ともしび」は、上演に成功するのでしょうか? ババーン! …という、実在する、おばあちゃん劇団をモデルにした、てんやわんやのお話。

 おばあちゃんたちは、社会の一線を退いており、ただ死に逝く日を待つばかり、そういう社会の周辺に位置させられている者たちが、社会の目を自分たちに向けさせようと奮闘する物語は、イギリス映画『ブラス』『フル・モンティ』に通じるところがあります。

 しかし、劇団の中心になってがんばる淡路恵子のモチベーションは、孫娘(西田尚美)を励まし、自信を与えようというものです。孫娘は、東京で脚本家になるという夢が破れて帰郷中なのであった。『ブラス』『フル・モンティ』は、根本に政治批判がありましたが、この『ぷりてぃ・ウーマン』では、批判の矛先が政治に向けられることがなく、その点が物足りない、というか、老人問題で、政治に思いあたらないのは、余りにロマンチックではないないか? と一人ごちたのでした。

 しかしながら、普段、脇役に回ることが多いおばあちゃん俳優がガッチリ主役に据えられ、芝居の練習を始めた頃の、セリフも満足に言えない感じから、徐々に「素人であるけれども魅力的な芝居」に変貌を遂げていくプロセスを、丁寧に演じ分けるのはさすがベテランって感じですね。

 監督は、『居酒屋ゆうれい』の渡邊孝好で、まあ、そんな感じでございます。

「高齢化社会」と言われておりますが、老人を主役にした映画は、もっと作られていいのではないか? とか思いました。オススメ。

☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-Jun-13;

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