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 Movie Review 2003・1月28日(TUE.)

西洋鏡
映画の夜明け

 20 世紀の初頭、清朝末期の北京。活動写真が中国でいかに上映されたかを、虚実とりまぜ描きます。中国に活動写真を持ち込んだのは、イギリス人青年レイモンド(ジャレッド・ハリス:リチャード・ハリスの息子)、彼に協力し、中国人で初めて映画を撮ることになるのはリウ(シア・ユイ:『太陽の少年』に主演)。活動写真の可能性を信じるレイモンドとリウの奮闘が始まる! ババーン!

 映画の黎明期を描くことによって、「映画は、20 世紀にどのようなインパクトを与えたのか?」「映画とはそもそも何か?」を鋭く問う内容になっております。当時北京の娯楽の王様は「京劇」であり、人々は「活動写真? んなもん京劇の方がオモロイに決まってる!」と、映画には目もくれません。しかし、ひとたび目にすれば「写真が動く」驚異に目が釘付けとなる。映し出されるのは、映画の創始者リュミエール兄弟『工場の出口』『列車の到着』などです。工場の出口から労働者がただ帰宅する、列車がただ到着する、写真がただ動く、それだけで映画というものは面白いものなのですね。ひるがえって現代、不要物(CG とか?)を持ち込んでつまらなくなってしまっている映画のなんと多いことでしょうか。

 と、いうか、初めて活動写真を目撃する北京の人々のまなざしは、「喜び」に満ちあふれております。なんと我々(誰?)は「映画を見る喜び」を忘れてしまっていることでしょうか。彼ら北京の人々は、何が映し出されるのかを知らされず、そもそも活動写真とは何かすら知りません。そう、映画とは、全くの白紙の状態で見れば面白いものなんですね。映画を見るのに、あらすじとか題材とか、出演者が誰で監督が誰で、という予備知識はまったく必要がない。予告編を見るなんてもっての他ですね。生まれて初めて映画を見る観客を再現する映像は刺激的であり、感動的です。

 自国の映画の開始点をキッチリ映画で描く中国映画は、これからますます面白く、豊かなものになっていくんであろう。活動写真につめかけた北京の人々は、「万里の長城」など、中国の風景を生まれて初めて見て、「なんと我々の国の美しいことか!」と感嘆します。映画の誕生とは、ナショナリズムが生まれる契機であることを鋭くとらえた名場面である。適当です。

 ともかく、ストーリーは微妙に普通ですが、映画の黎明期の雰囲気が面白く見られますのでオススメです。

☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA

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