京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > Reviews > 03 > 0123
 Movie Review 2003・1月24日(FRI.)

アイリス

 イギリスでは有名らしい、女流小説家/哲学者アイリス・マードックとの日々を回想した、夫/文学研究家ジョン・ベイリーのノンフィクションを、舞台演出で有名らしいリチャード・エア監督が映画化。ボケ老人となった晩年を『007』の“M”ことジュディ・デンチ、若き日々を『日陰のふたり』のケイト・ウィンスレットが演じております。

 そんなことはどうでもよくて、ネタバレですが、ボケ老人アイリスのお気に入りテレヴィ番組は何でしょう? ババーン! 『テレタビーズ』だ! 文芸路線、格調高く「永遠の愛」を描き出す映画に突如闖入するテレタビーズに、私は椅子からずり落ちそうになったのでした。エッオー。

 あ、そんなことはどうでもいいですね。しかし、いかなボケ老人アイリスも『テレタビーズ』の脳天気ぶりに愛想を尽かして徘徊に出かけてしまいます。高齢化社会の昨今、ボケ老人に「幼児向け」番組をあてがうのではなく、真剣に「ボケ老人向け」テレヴィ番組を製作しなければならないのではないでしょうか?

 って、そんなことはどうでもいい。若きアイリスは「自由な女性」であり、性的にも発展家であるのに対し、夫ジョンは滑舌もはっきりしない奥手なオッサン。美人・聡明なアイリスがなぜにダサダサのジョンを受け入れパートナーに選んだのか? というのは永遠の謎ですけれども、ボケ老人となったアイリスを変わりなく大切に思い、甲斐甲斐しく世話をするジョンの姿に私は呆然と感動しつつ、「僕は、キミを、僕だけのものにしたかったのだけれど、僕だけのものになったと思ったらボケ老人やん!」とのリアルな心情吐露に深く頭を垂れるのみ。

 50 年の思い出の断片を散りばめて現在と過去を交互に描いて約 90 分、お手頃な上映時間であり、ジュディ・デンチのボケ老人ぶりが素晴らしく、ケイト・ウィンスレットが“女流小説家/哲学者”を演じるとはお笑い…かと思いましたが、これも見事にはまって好演、夫ジョンの若き日々と老年期をジム・ブロードベントとヒュー・ボナヴィルという 2 人の俳優が演じ分けているそうなんですけど、てっきり同じ俳優と思っちゃうくらい好演。

「愛って何?」という問いを、ロマンチックに陥らずに考察、アイリス・マードックの名を知らずとも面白くご覧いただけると思います。オススメ。

☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA

レビュー目次