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 Movie Review 2002・10月28日(MON.)

OUT

 日本映画史上に燦然と輝く、「ドメスティック・ヴァイオレンスもの」(?)の傑作『愛を乞う人』の平山秀幸監督の新作。原田美枝子、倍賞美津子、室井滋、西田尚美という、弁当工場で働く女性の、「キッツイ日常からの脱出」を描きます。

 さてさて、この 4 人、ひょんなことから殺人事件の共犯関係を結ぶのですが、「ついに犯罪がバレたか? どうする?」と、深刻なる会議をカラオケボックスで開きます。脳天気/室井滋と西田尚美は「何唄おうかなー?」とソングブックをパラパラとめくる。「あんたたち、今がどういう状況かわかってるの? 歌なんか唄ってる場合じゃないでしょう! ?」と、犯罪のリーダー的存在/原田美枝子は叱責します。すると、「まあ、たまにはいいじゃなーい。あんたも唄いなさいよ」。原田「何言ってるの? 唄うわけないでしょ!」「あんたも唄いなさいよ」「唄いません!!」…との押し問答の次のカットは、マイク片手に朗々と歌い上げる原田美枝子。…す、素晴らしい! この、「キッパリ拒絶した次のカットで、やっとるやんけ!」手法は、日本映画のマスト中のマスト=『丹下左膳餘話 百萬両の壺』(山中貞雄監督/ 1935)で使用されたものですね。平山秀幸監督の、黄金時代の日本映画を参考にする意気やよし。そういえば『愛を乞う人』も、50 年代日本映画の雰囲気が微妙に漂っていたものです。平山秀幸監督こそ、日本映画の黄金時代を真っ直ぐに継ぐものである、と私は独りごちたのでした。…って、前作『ターン』を見逃した私にごちる資格はない。

 ま、そんな映画オタクみたいなウンチクはどうでもよくて、前半、圧倒的なリアリティで描かれる犯罪の過程が素晴らしいです。犯罪という非日常に、ポコッと日常が顔を出すのが笑いを誘います。後半は話が拡散気味で、ラストカットの CG もちょっとどうか? と思いますけど、騙されたと思って見てください。「騙された! こんなもん見せやがって!」と怒り心頭に発するかもしれませんけど。いやいや。

 俳優の組み合わせも素晴らしいです。陰惨なところもあるけれどアハハと笑えてさわやかな気分になれる、かもしれない傑作。バチグンのオススメ。平山監督は、もうすぐ『笑う蛙』が公開予定、さらに窪塚洋介氏主演で『魔界転生』を再映画化するらしいですわ(大丈夫か?)。要チェックですね。

☆☆☆★★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Jan-28;

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