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 Movie Review 2002・10月9日(WED.)

完全犯罪
クラブ

 アメリカのハイスクール、2 人の高校生が「完全犯罪」を計画、別に誰が憎いわけでなし、ただ自分たちの頭の良さを確認するためだけに殺人を犯す。果たして刑事ソンドラ・ブロックは仕掛けられたミスディレクションをかいくぐって高校生逮捕にこぎつけられるのでしょうか? ババーン!

 と、いうことですが、まず、高校生の「完全犯罪」がショボいのですね。そもそも彼らの「完全犯罪」が成立してしまえば、2 人の計画の素晴らしさを知るのは、結局当人たちのみ。2 人して「うまくいったよねー」「いやー、お前の計画は本当に素晴らしいよ」「いやお前こそ」「エヘヘ」「ウフフ」と誉めあうのも阿呆な話です。やっぱりそれでは面白くないので、彼らはついつい「完全犯罪」の破綻を望んでしまうことになる。つまり、「計画の有効性を証明するためだけの殺人」とは、そもそも完全犯罪を破綻させる要因を含んでいる。

 本来、緻密に組み立てられた犯罪を、ソンドラ・ブロック扮する刑事があの手この手で暴く『刑事コロンボ』的な面白さが期待されるはずなのに、高校生 2 人がもともと阿呆では知的ゲームになりようがない。

 ところで遊び半分で殺人を犯す 2 人組というのは『模倣犯』の犯人像とも似ておりますが、元ネタは、1924 年に実際にシカゴで起こった“レオポルド & ローブ”事件だそうです。金持ち・ハンサムな大学生 2 人組が起こした誘拐・殺人事件で、ヒッチコックの『ロープ』の元ネタでもある。

 この、“レオポルド & ローブ”事件は、「美形」「ゲイセクシュアル」「ニーチェの超人思想」がキーワードですが、この『完全犯罪クラブ』で犯人を演じているのが、まずライアン・ゴズリング(『タイタンズを忘れない』)というよく知らない若者。劇中「うーん、ハンサムボーイ」と囁かれる金持ちのボンボンの設定ですが、ホワイト・トラッシュ感あふれております。もう一人はマイケル・ピット(『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』)、妙に小太りなのが気になります。うーむ。

 それはともかく、『模倣犯』同様、なんだか後味の悪い映画です。結局のところ、「超人思想」にかぶれた阿呆を懲らしめるにはソンドラ・ブロックでは役不足なんですね。こういう阿呆どもは、真の超人アーノルド・シュワルツネガー、またはスティーブン・セガールに、「お前ら、ちょっとそこへ座れ」と、コテンパンに説教していただかないと、カタルシスは得られないのである。…どうでしょうか。

 ソンドラ・ブロックの熱狂的ファンの方限定でオススメ。『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』でマイケル・ピットに目をつけた方も楽しめるかもしれません。知らん。

☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Jan-09;

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