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 Movie Review 2002・10月5日(SAT.)

ジャスティス

 原題は“Hart's War”すなわち「ハートの戦争」。第二次大戦末期のヨーロッパ戦線、上院議員のボンボン息子ハート中尉はこれまで後方部隊でリアルな戦闘を知らずに来たものの、うっかりドイツ軍に捕まって捕虜収容所送りに。収容所は、捕虜の尊敬を集める歴戦の勇士ブルース・ウィリスに牛耳られております。「なんか、ブルース・ウィリスに嫌われてるかも?」と疑心暗鬼に陥ったヘナチョコ将校ハートは果たして生き残れるでしょうか? ババーン!

「殺人事件、脱走計画、動機、秘密、真実…そして選択。『心の闘い』を描く、サスペンス超大作!」という宣伝コピー、ブルース・ウィリス主演! …とくれば、とてつもない戦争アクションの傑作が期待できるというものですが、ブルース・ウィリスは脇役なんで、アクションはほとんどなくて結構地味。

 というか、もーっと地味に、その代わりもっと頭を使って作っていれば面白い映画になったと思うのですよ。「収容所もの」に「法廷もの」をミックス、「人種差別」を告発する社会派の面もある面白い話なのですが、「収容所もの」に不可欠の、脇役の「キャラ立ち」が弱い。キャストではブルース・ウィリス 1 人が突出してしまって、主演のコリン・ファレルですら影が薄い。

 例えば、黒人兵の一人をキューバ・グッティング Jr. が演じていたとすれば…それだけでバチグンに面白くなったと思いませんかー?

 結局、戦場における自己犠牲の精神はいかにして生まれるか? …みたいなところで話がまとまって、いや、それが本当のテーマなのかも知れませんが、もっと面白くなる題材なのに勿体ないな、と。

 脚本家は 2 人クレジットされており、地味だけど気骨のある傑作『父の祈りを』『ボクサー』のテリー・ジョージと、『ボルケーノ』のビリー・レイ。想像するに、テリー・ジョージが書き上げた気骨ある地味な脚本にブルース・ウィリスが興味を抱き、それならちょっとくらいはドッカンドッカン爆発シーンも追加して派手な映画にしなければ! と『ボルケーノ』のビリー・レイが雇われて書き直したのではないか? 憶測。どうでもいい場面の特撮にお金がかかっている感じの、中途半端な映画になっております。

 監督は大凡作『悪魔を憐れむ歌』『真実の行方』、平凡作『オーロラの彼方へ』、のグレゴリー・ホブリット。まあ、そんな感じです。『大脱走』『第十七捕虜収容所』が、なんでこんなにも面白いのか? をよく考えていただきたい、な、と。面白い話も撮り方によってはつまらなくなる見本としてオススメ。

☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Jan-05;

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