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 Movie Review 2002・6月20日(THU.)

模倣犯

 宮部みゆきの同名ミステリーの映画化。『の・ようなもの』『家族ゲーム』『ときめきに死す』…と、かつてはキラ星のごとき傑作を連発した森田監督ですが、近頃は、『ハル』『39 /刑法第 39 条』『黒い家』…など、なんちゅうか話題先行といいますか、題材は面白いんだけれど、映画の方はちょっと、ねえ? …という感じ。今回もベストセラーの映画化、「劇場型犯罪」が題材、SMAP 中居くん主演、藤井隆も出演、と話題騒然。映画も所詮は商売ですからね、儲けてもらう方がいいんですがね、さて。

 ここで描かれる犯罪の犯人は、なんちゅうか、思い出すだけで虫唾が走る、気色の悪いヤツらです。犯人は言います。「人類は、犯罪や戦争のたびに進化してきたんだぜ。僕達は、いまだ人類が知らない新しい犯罪をクリエイトするのさ。」(大意)……もう、アホかと、バカかと。

 かたや、被害者遺族の山崎努は昔気質の豆腐屋さんのオッチャンで、孫に「おじいちゃん、毎日同じことの繰り返しで飽きない?」と聞かれて曰く「ふふふーん。丹念に仕事してれば、同じことの繰り返しじゃないんだよ。毎日毎日、違うことなんだよ。」…す、素晴らしい職人気質!

 この職人被害者遺族と、ネットバカ犯人との対立が、物語の軸となるべきであり、ネットバカは職人気質に圧倒的に敗北せねばならぬ。ところが、結局なんだかよくわからない終わり方、ここで爆笑させてどうする? って感じ、うーん、後味悪過ぎ!

 アメリカ映画ならば、無理矢理クライマックスは中居くんと山崎努の殴り合いアクションになるはず。で、『GO』でも見事なパンチを披露した山崎努は中居くんをタコ殴りに殴る! …こうでないとスッキリしません。断じて。いやはや『模倣犯』のような、何だかよくわからないラストを見ると、「アメリカ映画的クライマックス盛り上げ術」もそれはそれで良くできているのだな、と思いました。

 問題は、森田監督の倫理観にあります。倫理なき犯罪を描くとは、すなわち倫理を逆にあぶり出すことです。ここでは現代の倫理なき状況が描かれてますが、それはただの問いかけ、倫理が揺らいでいる状況を語るだけでは映画にはならぬ、愚直でも強靱なる倫理を呈示すべきではないでしょうか。適当。

 まあ、そんなことはどうでもよくて…と、いつもなら無理にでもオススメポイントをあげるところですが、見つかりません。オススメしません。うーんと、藤井隆がプロ野球選手のモノマネをするシーンが素晴らしく痛かったので★ひとつオマケ。

(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Jun-20;

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