京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > Reviews > 02 > 0604
Event Review 2002・6月4日(TUE.)その2

アリ

 モハメド・アリ、1964 年世界ヘビー級チャンピオンのタイトル獲得から、1974 年“キンシヤサの奇跡”と呼ばれるタイトル・マッチまでの 10 年間を映画化。

 監督マイケル・マンは、『ラスト・オブ・モヒカン』『ヒート』『インサイダー』など、もし淀川長治氏がご存命なら「一緒にお風呂入りましょ」というに違いない男たちの、ガチンコ対決を一貫して描き続けており、今回はモハメド・アリの「アメリカ合衆国との闘い」を描きます。

 さてウィル・スミスが猛トレーニングを積んで 20kg 増量、本職ボクサーとの本気ボクシング試合シーンは、カメラが殴り合いの間にも入り込み『レイジング・ブル』を上回る圧倒的な迫力! …と言いたいところですが、結構眠いんですね。

「自分」らしく生きんがためアリは徴兵を拒否し、国家と戦うわけですが、黒人同士の戦いであるボクシングの試合との関係がよくわからないんですね。「白人と黒人が争う国家において、黒人同士が血を流して殴り合うボクシングの意味」が明確ではない、と申しましょうか。

 また、ラッパーのウィル・スミスがアリに扮し、アリ=「ラップの元祖」であることが伝わってきますが、そもそもマイケル・マンはムーディーなジャズ野郎なためか、音楽の使い方がものすごく痛い。試合でアリ反撃に転じるやフュージョン風のウキウキ音楽を流すとか。

 モハメド・アリ本人は「オレの真実を映画に出来るのはマイケル・マンとウィル・スミスだけだ! メーン」というてるようですが、黒人の物語を映画化できるのは黒人監督だけなんじゃないか? マルコム X 役でマリオ・バン・ピープルズを出演させているのはよいですが、なんで監督させないの? と思うのは私だけではあるまいに。

 とはいえ、興奮はしないけれどもボクシングの試合のディテイルなど、アリ伝説の再現映像はグー。ウィル・スミスのアリはバチグンの違和感ですが、見ているうちに気にならなくなります。2 時間 37 分もあるので気合が要りますがオススメ。

☆☆★★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Jun-06;

レビュー目次