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 Movie Review 2002・7月15日(MON.)

陽はまた昇る

 日本ビクターでリストラ対象となっていた技術者たちは、「必ずや家庭用ヴィデオの時代は来る!」と信じ「VHS」開発にすべてを賭けます。通産省によって、先行した SONY 「ベータマックス」に規格が統一されかけますが、男たちの大逆転劇が始まります。エーーークスッ!!

 NHK 『プロジェクト X〜挑戦者たち〜』の素晴らしさは、「日本人はモノマネ、猿マネが上手、オリジナリティあふれる技術は生み出せない」との戦後アメリカによるプロパガンダを、完膚無きまでにうち破っていく革命性にあります。適当。いや、ともかく「ああ、日本ってなんて素晴らしい国なんだー! オロローン」と泣き濡れることしばしば、それが『プロジェクト X』。

 この映画はどうか?  映画では、「現代サラリーマンが感情移入できるよう」との余計なお世話で、時代設定があいまいにされております。これではダメだと思うのです。NHK 『プロジェクト X』の場合は、「敗戦の痛手から日本を立ち直らせたい」「日本人に自信を取り戻させたい」「子供たちに腹一杯ご飯を食べさせたい」などなどの、技術者たちの頑張りの原動力が必ず明らかにされます。時代と密接に関わっている。時代背景が重要なんですね。「物語は 1973 年に始まります」と、はっきり時代を刻印しないと頑張りの動機がわからなくなる。私たち現代人は歴史に学び「昔の日本人はこんなに頑張ったんだ、よし、オレも!」と猛然とやる気を出すわけです。それをですね、西田敏行などという普段はチャラチャラ釣りバカしているような男の動機不明の「夢」が「VHS」を生みだした、なーんて話にされては困るのです。

 おまけに、大逆転の決め手となるのは「松下幸之助への直訴」です。いや、これは事実だそうですけど、「偉くなっても松下幸之助は技術屋である」「技術屋だからこそ VHS の優越性を即座に見抜いた」…こういうところをキッチリ描かないとダメなのでは。緒方直人の人情エピソードを絡めたりして、結局この映画は『プロジェクト X』の革命性を受け継がず、ど根性/人情をもって尊しとする、ごく普通の日本映画になってしまったのだなあ。

 ま、そんなことはどうでもよくて、NHK 『プロジェクト X』を見ている方が有意義な時間を過ごせることは必至。でも月曜は男性も割引で見られるそうなのでオススメです。

☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Jul-15;

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