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 Movie Review 2002・1月5日(SAT.)

ピストルオペラ

「STYLE TO KILL」「DEEP SEIJUN」など回顧上映が組まれ、若者の間にも絶大な人気を誇る…というか、パンフに寄稿している川勝正幸氏など「モダニズム」好き一派が持ち上げるので若者にも人気があると思われている(適当)鈴木清順監督 78 歳の、『夢二』以来 10 年ぶり待望の新作です。

『ツィゴイネルワイゼン』以降顕著な、清順タッチ、というか独特のカットつなぎ――対話シーンで、全然背景が違ったり、わけのわからない動きをしたり、視線があさっての方向だったり――がますます顕著になっており、…てか、全編ソレ。ストーリーを語るには「変」なんですけど、瞬間瞬間の映像としてはバチグンにカッコいい! オープニング当初は「これこれ、コレです。これが観たかった!」と大喜びしたのも 20 分くらい、やがてどうでも良くなって来るんですが。

 日活時代の清順監督作品は、ともかく客にそっぽを向かれてはイカンとストーリーテリング的にもキッチリいい仕事をされ、『けんかえれじい』などは波瀾万丈のお話しにふと立ち現れる詩的映像が素晴らしいのですね。ティームポーでピアノを弾いたりとか。しかし近頃お話は二の次、イカした映像の連続とはいえ、2 時間近い上映時間はちとつらい。90 分くらいなら我慢できるかも。ミュージッククリップに最適、な感じ。

 老いてますます盛んな清順監督、老人監督がしばしば陥る罠にはまっていないでしょうか。周りに「ちょっとソレは…」と意見するスタッフが誰もいないのでは? 好き放題に撮ってる感じが痛快ではありますし、圧倒的な色彩感覚、美意識が横溢して朝日シネマのスーパーミニマルスクリーンといえどそれはそれは気持ちいいのですが、例えば『殺しの烙印』の主人公その後と思われるキャラクターは宍戸錠が演じるべきであって、宍戸錠が出演できないと決まった時点で脚本は見直されなければならなかったのでは? 平幹二郎では面白くも何ともない、と思いませんか。思いませんか。そうですか。

 ま、そんなことはどうでもよく、和服にブーツ姿で拳銃を構える主人公「野良猫」江角マキコさんがバチグンにカッコいいので良しとするか。知らん。とりあえず、川勝正幸氏やミルクマン斉藤氏など「モダニズム」好き一派に共感を覚えるハイセンスな方々に、朝日シネマでの上映は終わっちゃいましたがオススメです。

BABA Original: 2002-Jan-05;

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