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 Movie Review 2002・12月13日(FRI.)

人妻

『タクシー・ドライバー』『ローリング・サンダー』『最後の誘惑』の脚本、『キャット・ピープル』『MISHIMA』の監督として知られるポール・シュレイダーの新作。『人妻』というタイトル、15 歳未満鑑賞禁止の「R-15」指定とくれば、エロ満載をご期待でしょう。ところがほとんどエロ無しです。勿論、私は鋭く見抜いており、ガッカリするようなことはございませんでした(本当)

 それはともかく原題は“Forever Mine”――「永遠の恋人」。冒頭に「芸術におけるロマンチックとは、美と不思議のこと」みたいな巻頭言が掲げられており、すなわち「ロマンチック」とは何かを問うているのであった。

 ニューヨークへ向かう飛行機の中。顔に傷のある男が過去を思い出す。かつてマイアミの高級ホテルのビーチ係をしていたジョセフ・ファインズ、ニューヨークからやって来た人妻グレッチェン・モルに一目惚れ、ノッピキならない関係となる。しかし旦那はレイ・リオッタで、案の定ジョセフ・ファインズは痛い目に会う。銃殺されながらも、どういうわけか一命を取り留めたジョセフ・ファインズは、スペイン人に化けて復讐のためニューヨークに向かうのであった。ババーン!

 ジョセフ・ファインズはロマンチックであったがために、死にそうな目に会う、という具合に、やっぱり「ロマンチック」と「阿呆」と同義語なのですね。レイ・リオッタは仕事にしか興味がなく、女房をほったらかして接待旅行に出かけるようなヤツですが、駆け落ちした妻と間男を追っかけます。見つかって銃を突きつけられたジョセフ・ファインズは言います。「あんた、仕事しか興味がないんやろ! こんなことしても何にもならんで!」。レイ・リオッタは言う。「俺だってロマンチックなのさ!」…うーむ、やっぱり「ロマンチック」と「阿呆」は同義語なのであった。

 映画は、1987 年から、ディスコテーク華やかなりし 70 年代を回顧し、再び 1987 年に戻るという構成です。70 年代〜 80 年代のアメリカは、レイ・リオッタのような仕事人間がのさばった時代なのでしょう。ジョセフ・ファインズが整形を施して、スペイン人に化けるのが象徴的です。金持ちになることを追い求める白人は、ロマンチックを忘れないヒスパニックに妻を寝取られてしまう。アメリカに必要なのはロマンチックである、とポール・シュレイダーは主張しているのであった。ってよくわかりません。

 そんなことはどうでもよくて、とっても安っぽい話かつお約束の展開なのですが、デビッド・リンチ作品でおなじみアンジェロ・バダラメンティのスーパーロマンチックな音楽が流れて、ポール・シュレイダーのクールな視点がジワジワッと感じられるのであった。ああきっと、ポール・シュレイダーは「日焼けサロン」を憎んでいるんやろなあ、とか。

 くれぐれもエロを期待せぬように。オススメ。

☆☆★★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Dec-13;

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